老後資金において大きな比重を占めるものが介護費用です。どのような介護施設を利用するかによって介護費用は大きく異なります。2段階の要支援、5段階の要介護認定の段階によって受けられる介護サービスの内容は異なります。また、介護サービスは一時金として払う必要のあるものから月ごとに必要となる費用まで様々なケースがあります。介護における、様々な費用について比較分析します。
介護施設と訪問介護のサービス費用比較
まず、介護施設の費用水準と内訳を見ていきましょう。それぞれの介護施設は名称がとても似ているため、各施設の特徴とおおむね必要となる費用水準をお伝えしていきます。
介護施設
介護施設を利用する際は、入居時に一時金を支払います。入居後は月額利用料を支払います。入居金・月額利用料は20㎡を目安とした場合の首都圏の相場価格です。
介護施設の種類 | 対象者 | 入居金の目安 | 月額費用の目安 |
介護付有料老人ホーム | 要介護認定者 | 0円から1億円まで幅広い | 10万円から50万円程度 |
住宅型有料老人ホーム | 要介護認定なし・要支援者対象 | 0円から1億円まで幅広い | |
健康型有料老人ホーム | 要介護認定なし・要支援者対象 | 0円から数千万円 |
(1)介護付有料老人ホームとは
民間企業が運営しています。介護の必要な方が対象。さまざまな理由で自宅では介護を出来ない方が入居します。掃除や洗濯、排泄などの介護サービスは基本的に24時間で受けることができます。細かいサービスの特徴は施設によってさまざまです。
(2)住宅型有料老人ホームとは
民間企業が経営しています。介護付の必要性はなくとも、生活にちょっとした不安がある方に適しています。介護認定を受けている方も入居しています。賃貸住宅とはほとんど変わらないながらも、緊急時の連絡網が整備されているなど老人ホームとしての設備も有しています。
(3)健康型有料老人ホームとは
主に民間企業が経営しています。介護サポートよりは、家事手伝いなどの日常生活を豊かに過ごす方法に重点が置かれています。介護認定なし、もしくは要支援状態の高齢者を受け入れていますが、介護度が上がると退去される場合もあります。
介護施設は、部屋の広さや設備によって費用が大きく異なります。入居一時金は一般的に介護付き老人ホームが住宅型有料老人ホームより高めですが、充実した設備の住宅型有料老人ホームは、ベーシック型の介護付有料老人ホームより値段が高くなることもあります。また、都心部は地方部に比べ一時金、月額利用料ともに高額となる傾向があります。総じて介護施設のなかで比較しても、費用はとても高いです。
サービス付高齢者住宅やグループホームの費用相場
種類 | 対象者 | 入居金の目安 | 月額利用料の目安 |
サービス付高齢者住宅 | 要介護認定なし・要支援者対象 | 敷金として家賃2-3カ月分 | 5万円~30万円 |
グループホーム | 要支援2~要介護5 | 10万円~100万円 | 10万円~20万円 |
(4)サービス付き高齢者住宅とは
バリアフリー(段差のない特別仕様)に対応した賃貸住宅です。介護認定をされていない高齢者や、軽度の要介護状態の高齢者を受け入れています。施設にはさまざまな相談に対応する生活相談員が常駐しています。賃貸住宅よりは高いですが、日常生活に不安がある高齢者にはとても人気のある住宅です。
(5)グループホームとは
認知症の高齢者が少人数で共同生活を送ります。リハビリ、身体の機能訓練、レクリエーションなどを行います。老人ホームよりは費用も抑えられています。
種類 | 対象者 | 入居金の目安 | 月額利用料の目安 |
特別養護老人ホーム(特養) | 原則要介護3以上 | 0円 | 5万円~15万円 |
介護保険老人施設(老健) | 要介護1-5 | 0円 | 5万円~20万円 |
介護療養型医療施設(療養病床施設) | 要介護1-5 | 0円 | 5万円~20万円 |
経費老人ホーム | 要介護認定なし・要支援者対象 | 0円〜数百万 | 5万円~20万円 |
(6)特別養護老人ホーム(特養)とは
社会福祉法人や自治体が運営。老化によって介護を必要とする65歳以上の方や、特定疾病により介護を必要とする40歳~65歳の方、かつ要介護3以上の方を対象としています。入居の順番は施設にて開催される入居判定会議で判断され、緊急性の高い入居希望者が優先されます。入居者が介護度によりますが、費用は抑制されています。
(7)介護保険老人施設(老健)とは
医療法人や社会福祉法人が運営する公的な施設です。看護や介護の回復期リハビリを受けることができます。介護施設のなかではリーズナブルで負担感の少ない施設です。
(8)介護療養型医療施設(療養病床施設)とは
比較的重度の要介護者に対し、充実した医療とリハビリを提供する施設です。相部屋などでは有料老人ホームに比べて費用も高くはありません。
(9)経費老人ホーム(ケアハウス)とは
低費用で入居できる老人ホームです。支援度の低い入居者を受け入れています。見守りと食事の提供を受けるA型、見守りのみのB型、食事や家事の補助が受けられるC型(ケアハウス)があります。C型は助成制度が利用できるため、低所得者が利用しやすい施設です。
介護施設において入居一時金と月額賃料は介護保険の対象にはなりません。ただ、これらケアハウスの入居一時金と月額利用料は自治体による助成の対象となることが多いため、ケアハウスの利用は費用面で大きなメリットがあります。

在宅介護の費用相場
訪問介護は、自宅にてどのようなサービスを受けるかという点と、地域、介護(支援)度によって異なります。介護保険の対象者においては、自己負担額はこれらの水準の1割です。以下の相場は要介護認定の方です。なお、介護保険の適用範囲となる部分については1割の自己負担です。
- 身体介護
20分~30分前後 | 2,500円前後(自己負担250円) |
30分~1時間 | 4,000円前後(自己負担400円) |
1時間~1時間30分 | 6,000円前後(自己負担600円) |
- 生活補助
30分前後 | 2,000円前後(自己負担200円) |
45分前後 | 2,500円前後(自己負担250円) |
- 訪問入浴
入浴 | 12,000円前後(自己負担1,200円) |
部分入浴 | 9,000円前後(自己負担900円) |
- 居宅介護支援サービス
要介護1、2 | 10,000円前後(自己負担1,000円) |
要介護3、4、5 | 13,000円前後(自己負担1,300円) |
介護施設と訪問介護の費用比較
要介護1の方が必要となる1カ月あたりの介護費用の目安です。介護施設の利用と在宅介護を比較すると、およそ2倍の差があることがわかります。
介護施設 | 150,000円 |
在宅介護 | 69,000円 |
介護に活用できる保険の紹介
公的介護保険で1割の自己負担になるといっても、もともとの介護費が高額だと大きな負担になってしまいます。また在宅介護は入浴、生活補助といった「2種類以上の介護を受ける」こともあるため、自己負担額も増大します。
その場合に頼りになるのが民間の介護保険です。公的介護保険に上乗せをする形で保証し, 自己負担額を抑制する効果があります。また、公的介護制度において40歳~65歳は末期ガンや関節リウマチなどの「特定疾病」に該当しなければ対象となります。
その点、民間の介護保険は20代からでも保障を受けることができます。生活習慣の悪化など「老後には介護費用がかかりそう」という方は、早めに民間の介護保険に加入しておくのも賢い方法かもしれません。
ただ、若年の際は介護保険に頼りすぎず、優先すべき健康維持や食生活などで生活習慣を整えることをお勧めします。民間の保険制度が整っているからと、順番を間違えないようにしたいですね。
介護保険の「適用範囲」によって負担感は大きく異なる
介護の費用を検討するにあたって、重要な考え方となるのが介護保険の「適用範囲」です。介護施設・訪問介護問わず、ひとつのサービスのなかでも「必要最低限のサービス」のみが介護保険の対象として、自己負担1割の対象となることが定められています。 対象については行政や介護の専門家のほか、介護施設であれば算定の担当者がいることも多いため、気軽に相談するようにしましょう。
まとめ
介護費用の目安と介護施設、在宅介護の違いをお伝えしました。実際に介護サービスを利用する際には、経済的な状況とその介護サービスにかかる費用を比較対象しながら、利用していくことが大切です。また介護サービスの発展によって、以前は高額の費用がかかっていた種類のサービスも、設備や競合の参入などで著しく利用料が下がっているケースも散見されます。最新状況を把握して、賢く利用していくようにしたいですね。