消費税10%が2019年10月に延期された理由と老後生活への影響







2019年10月に10%への増税が決まっている消費税。2017年4月に決まっていた増税スケジュールは、安倍総理大臣の決断によって再延期となりました。消費者のなかには延期に次ぐ延期で、「一体、いつから何パーセントになるのか」という声も聞こえています。そもそも、なぜ消費税は5%から8%に、そして10%に増税されることが決められたのでしょうか。老後生活にも関係の深い消費税の増税劇について、あらためて分析してみましょう。

当初の消費税増税計画

2017年4月に決まっていた増税スケジュールですが、一度延期をしています。当初の予定は5%の時に8%を経由して、2015年10月に10%に増税をする予定でした。前年にまず2017年4月への1度目の延期が発表されます。再度の延期はないと政府はたびたび言及していたのにも関わらず、2016年に再度の延期が発表されました。2017年5月現在、2019年10月の増税が現行のスケジュールとなっています。

消費税10%を延期した理由

2016年の再延期にて、安倍総理が理由とした第一の理由は「チャイナリスクの顕在化」です。前年の2015年前半から「中国で自動車やスマートフォンの販売が激減している」という報道がなされ、製造元として日本の中小企業への深刻な影響が懸念されました。

当時は中国の観光客が日本を訪れ、多くの買い物をする光景も報じられており、中国の景気減速は日本の小売業への影響も懸念されました。あわせて中国の代表的な指標である上海株の暴落や天津で甚大な爆発事故があったこともあり、事態が決して一過性のものではないと見た政府は、スケジュール通りの消費税の増税により中小企業の経営悪化や最悪の場合は倒産が続くことを懸念して、再延期を表明しました。

また、安倍政権が元来力を入れていた「アベノミクスによる経済発展」を優先させるべきという判断も再延期の要因のひとつとして語られました。この時に首相が発した「新しい判断」という言葉がメディアを賑わせたことも記憶に新しいところ。

新しい判断とは?
それまでの(消費税増税過程の)動きに捉われることなく、その時の情勢を踏まえた政治判断を意味しています。

そもそも消費税10%への増税はなぜ必要なのか

再延期を繰り返してまで政府が消費税10%の増税に取り組むのはなぜでしょうか。それは消費税の「用途」にあります。財務省の発表によると、消費税の増税はすべて「社会保障費」として充当すると言及されています。8%時の税収分内訳が記載されていますが、これは10%上昇時にも同様の構図になるといわれています。

8%増税時では国家予算のうち、消費税の国の取得分(地方消費税を除いた分)は17.2兆円。そのうち地方交付税として地方に再分配する3.8兆円を除いた13.4兆円が社会保障費に充当されます。

社会保障費は年金、医療、介護、子育て支援の4種目で28.2兆円。消費税単独ではまったく足りませんが、それでも必要予算の半分をカバーできる収入が消費税には期待することができます。年金や医療、介護といった項目は、今後の日本が更に高齢化社会を迎えるにあたり、より手厚い保障が必要となる分野です。また年金や国力の維持のためには少子化の解決が欠かせません。

実際に今回の再延期に対して、声高に反対を叫んでいる人たちもいます。根拠は毎年右肩上がりで増え続ける社会保障費を消費税なくして維持できるのかという懸念です。消費税を増税することでの市場への悪影響を回避するのか、社会保障費への充当分を確保するのか、政府は難しい判断を求められているといえるでしょう。

消費税10%の増税が老後の生活にもたらす影響

ここからは消費税の増税が老後生活にもたらす影響について考えます。まず、消費税が増税すると、老後生活に必要なものはどれくらいの負担増になるのでしょうか。いくつか例示してみましょう。

購入内訳価格例8%時価格10%時価格負担増額
日々の食費2,000円2,160円2,200円+40円
国内旅行10万円108,000円110,000円+2,000円
自動車80万円864,000円880,000円+16,000円  
介護施設入居費300万円3,240,0003,300,000+60,000

仮に80万円の自動車を購入すると2019年の9月と10月で1万6千円の違い。これは大きいですね。 大きな買い物をしない限り影響は少ない、と捉えがちですが、仮に、日々40円の負担増だとすると1カ月(31日)で1240円、年間14,880円もの負担増になります。

加えて社会保障費に充当されるため、年金額が上がることを期待するかもしれませんが、残念ながらその予定はありません。 そもそも公的年金の支給額は、物価(モノの値段)をもとに決定しています。

消費税は物価額の上限には直敵的な関係はないため、すぐに年金額が上がるといったことはないでしょう。その代わり、年金支給のための保険料納付期間については対策を講じています。 なぜ、消費税を社会保障費に充てるのでしょうか。

様々な見解がありますが、ひとつは消費税が世代も性別も、所得も関係なく課税されるため、公平であり、「社会保障費に相応しい」という見方です。所得税や相続税は資産のある方の負担が大きい仕組みになっており、自動車税や固定資産税はそもそも資産を所有している人にしか課税されません。

一方の社会保障費も国民全体の課題。「みんなで負担しましょう」ということで消費税の増税が決断されたのではないでしょうか。 それでも、安定した所得を年金に頼っている老後世代にとって、増税は大きな負担です。そこで国は「保険料納付期間の短縮化」を打ち出しました。

公的年金受取のための保険料納付期間は短縮化が決定

消費税10%が老後生活に与える影響を少しでも和らげるため、国がとった対策が「公的年金を受け取ることのできる人を拡大すること」でした。公的年金における1階部分である老齢基礎年金は、これまで25年保険料を納付しなければ受け取ることができなかったのですが、2017年から10年以上の方が受け取れるように改正されました。

年金納付における最低機期間の短縮化です。 当初、この短縮化は「消費税が10%に増加したとき」に合わせて増加するとされていたのですが、2017年に増税を待たず短縮化することになりました。 この年金との関係は2017年現在です。

今後、2019年の増税が今度こそ施行されるとなったとき、特例法による年金の増額やほかの老後資金を充当する施策が発表される可能性は十分にあります。たとえば介護費用の削減や医療費の削減のほか、老後世代に対して一律数万円と言った現金や商品券の給付も考えられるでしょう(この方法はバラマキと非難されることもまたお約束ですが)。

まとめ

いずれにしろ、社会保障の増大は喫緊の課題です。とはいっても消費税を上げることによって、生活に困っている家計が更に首を絞められるのは可能な限り避けなければなりません。

また、60歳を超えても中小企業の経営者や役員として頑張って働かれている方もいますが、経営者にとっても消費税の増税は大きな問題です。事業における取引のほとんどに消費税が課税されるため、会社の財務を圧迫してしまいます。 消費税の増税は喫緊の課題ながらも、生活への影響も著しいために様々な世代を見ながら進めなくてはいけない税金でもあります。

一方で2020年に東京オリンピックが控えていることもあり、政府にとっては景気の上昇のためにどうするか、という難しい判断でもあります。2019年の再増税がどうなっていくのか、注目していきましょう。









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ABOUTこの記事をかいた人

工藤 崇

株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいとお考えの個人、 FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居企業。執筆実績多数。東京都千代田区大手町。