【老後の相談室Vol.6】介護費用の目安はいくら必要か?堅実な夫婦の疑問を解説







今日の相談者は堅実に暮らしてきた50代の夫婦です。貯蓄も退職金も少ないなりに精一杯に準備し、持ち家もあるので、老後はあるものを大事に使って生活していければと考えているようです。しかしこれはあくまで健康であれば……の話。万が一介護状態になってしまったとき、介護費用はどの程度かかるのかを知りたくて相談に来られました。

相談者プロフィール
世帯構成:夫・妻:59歳
老後資金:退職金1,000万円・貯蓄1,000万円
老後の資産:年金・持ち家

少子高齢社会の進む中、このような相談は今後ますます増えてくるでしょう。しかし介護費用は、症状や状態で費用が大きく異なるのが現状です。中央値や平均という数字があまりあてにならない世界ということです。介護費用の備えはどの程度必要なのか、全体像をデータから読み解いていきたいと思います。

介護費用の全体像は?

介護費用が「いくら」と言い切れない原因のひとつとして、在宅介護と入居介護で費用が大きく異なる点が挙げられます。在宅介護であれば、通所や自宅で様々なサービスを受けることになりますがそれらは原則1割負担です。

しかし入居介護の場合はそうは行きません。公的な介護施設である特別養護老人ホーム以外では、介護保険適用のサービスのほかに入居費用がかかります。これは通常の賃料にとどまらない支出です。

というのも、民間老人ホームでは施設ごとのサービスが受けられるからです。例えば日々の食費や、入浴補助などのサービスがありますが、これは介護保険適用外です。部屋代に加えてこれらの費用を施設に支払うことになるのです。とはいえ、24時間診てもらえるのは大きな魅力です。費用は高額になりますがそれだけの価値があるのが有料老人ホームでしょう。

ただし、費用的にすべての人が入居を検討できるわけではありません。今回の相談者の場合も、入所介護は資金面でやや不安があるため在宅介護の費用を主に見ていくことにします。

介護保険制度の複雑化も大きな問題

介護費用の全体像が見えない理由がもう1点あります。介護保険法の改正や制度変更が非常に多いのです。比較的新しい法律なため、実施しながら改善をくり返しているという側面もあるでしょうが、財政の悪化や高齢化に影響を受けている面も否めません。ここで重要なのは、今後も介護保険法は状況や社会情勢に合わせてその姿を変えていくであろう点です。私たちにとって厳しい方向性に向かうことが多いと考えられるため、積極的に情報収集しておきたいです。

在宅介護費用の目安は?

有料老人ホームに比べると費用が抑えられる在宅介護ですが、決して安いわけではありません。状態ごとに支給限度額が異なるため、限度額までサービスを利用したときのサービス頻度と合わせて考えていくことにしました。

在宅介護の費用目安一覧

介護レベル支給限度額/月サービス例
要支援150,030円週2~3回程度の通所・訪問サービスに、月2回程度の短期入所
要支援2104,730円週3~4回の訪問・通所サービス、月2回程度の短期入所
要介護1166,920円週6回の訪問・通所サービス、3カ月に1回程度の短期入所
要介護2196,160円1日1の訪問・通所サービス、3カ月に1週間程度の短期入所
要介護3269,310円週6回の訪問・通所サービス
夜間の重解型訪問介護・2カ月に1週間程度の短期入所、車いすや介護用ベッドの貸出など
要介護4308,060円1日2~3回の訪問・通所サービス
夜間の重解型訪問介護・2カ月に1週間程度の短期入所、車いすや介護用ベッドの貸出など
要介護5360,650円1日3~4回程度の訪問・通所サービス
夜間の重解型訪問介護・1カ月に1週間程度の短期入所、車いすや介護用ベッドの貸出など

支給限度額は1割負担の場合であり、2割負担の場合はもう少し自己負担額が増えます。現状では「世帯所得346万円(2人以上の世帯)」までは1割負担です。

しかし2018年8月からは高所得者の負担を3割まで引き上げられる予定です。詳細要件は未定ですが、今後も介護費用そのものは微増傾向が続くとは覚悟しておきましょう。なお、支給限度額を超過する人の割合は要支援であれば最高0.2%。要介護でも最高2.9%となっており、おおむね限度額以内で済ませることができると考えてよさそうです。

受給者一人当たりの平均介護費用

実際に、どのくらいの介護費用を負担しているのかのデータもご紹介します。厚生労働省「公的介護保険の現状と役割(平成27年度版)」によると、実際に支出した介護費用は、以下のようになります。

 介護レベル要支援1要支援2
平均費用(円)19,69535,879

 

 介護レベル要介護1要介護2
平均費用(円)70,77198,464

 

 介護レベル要介護3要介護4要介護5
平均費用(円)148,145180,352223,054

症状が進むにつれて費用が高額化していきますが、軽度であれば負担はそう多くありません。早期に異変を発見し、症状を進ませないよう注意すれば、介護費用が脅威になることも少ないはずです。その意味では、介護費用を必要以上に恐れることはないと考えます。

介護保険制度を目一杯活用しよう

普段は支給限度額内のサービスを利用し、介護者の疲労が強い時は短期入居を多めに利用するなど、介護疲れに陥らないよううまく制度を活用していけば負担も少ないのではないでしょうか。相談者のような夫婦で介護を行う場合は、介護者の健康にも十分気を配っていきたいです。

初心者がいきなり各種サービスをうまく利用することは難しいでしょう。ケアマネージャーと相談しながら家計・介護者・被介護者にとって一番いい形を作り上げていきたいです。

介護の最大リスクは「長期化」

各種データを見ていくと「では総額でいくらあれば安心か」という問いが浮かぶのではないでしょうか。しかし、ここでも平均額は見えてきません。介護の程度と発生期間が人によって異なるからです。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(平成27年度)」によると、介護期間の平均は4年11カ月となっています。

主観的にはともかく、客観的に見ればそんなに長いわけではありません。しかしその一方で10年以上という人も15.9%にのぼります。この「10年以上」の内訳も、ずっと寝たきりの状態で10年間、というケースもあれば、軽度の状態で比較的元気に暮らしていたが、突然悪化して数か月後に亡くなったということもあるでしょう。 かかる費用にもばらつきがあります。

支払った金額がない、という人もいれば、月に15万円以上かかったというひとも16.4%存在します。一般に、在宅介護費用は月10万円が目安と言われていますが、あくまで参考として考えましょう。いくら用意する、という考え方よりケアマネージャーに相談し、その時点の手元資金に見合ったプランを練ってもらうほうが現実的という意見もあります。

介護費用として数百万円を確保しておき、実際に介護状態になったらその時の制度や状態に合わせて柔軟に対応する……現状では、そうせざるをえないのかもしれません。 なお、ケアマネージャーへの相談は無料。望めば担当のケアマネを替えてもらうことも可能です。相性もあるでしょうから、合わないときは無理せず替えてもらいましょう。

介護保険の対象に注意

ここまで、介護制度の仕組みを知り、介護費用を必要以上に心配する必要はないことをお伝えしてきました。しかし注意したいのが、居住環境です。多くの人は自宅での介護を望みますが、介護やバリアフリー改修工事は内容によってはかなり高額になってしまいます。居住環境を整えるのはいいことですが、介護の不安があるならば、「必要最低限」という点を意識して行っていくといいでしょう。

まとめ

繰り返しになりますが、介護費用の「平均」“ほど”あてにならないものはありません。利用者の状態はもちろん、制度自体も時代とともに変わります。制度の「今」と、介護現場の「今」の双方を知っておくことが重要だと考えます。その時々で、どのような状態ならばどのくらいかかるのかを推し量れるようになっておくことが大切ですね。









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ABOUTこの記事をかいた人

横山 晴美

AFP/住宅ローンアドバイザー。 企業に属さない独立FP。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホームの購入相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案する。安心して住宅を購入できるだけでなく、家計の課題も解決できるとの声を頂いている。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。