「老後破産」という言葉を一度や二度聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。しかしながら「老後破産」という言葉について他人事になってはいませんか?老後破産は誰にでも起こりうる可能性があることから、原因を把握し、しっかりと対策を講じる必要があります。そこで今回は老後破産について詳しく解説をしていきたいと思います。
老後破産とは
改めて、老後破産という言葉について理解したいと思います。老後破産とは、現役時代に十分な貯蓄が作れずに定年後に収入が大きく減り日々暮らしていく生活費すらままならない高齢者のことを指しています。日本の高齢者人口3,200万の内、300万人程度が老後破産状態であると言われています。老後破産は、若い時から低所得層であり生活に困窮していた方だけでなく、大企業にお勤めだった方も意図せぬ出来事により老後破産に陥る恐れがあります。そのため、決して他人事ではないということをご承知頂ければと思います。
老後破産の現実
老後破産の意味は理解できたと思いますが、なぜここまで話題となっているのか。これは老後破産の実態をNHKスペシャルの特集『老人漂流社会〝老後破産〟の現実』として放映したことをきっかけとなります。その後、YOMIURI ONLINEにも「老後破産」の現実として特集が組まれるなど話題となりました。その他、NHKスペシャルの取材を元にした老後破産:長寿という悪夢 というタイトルで書籍化もされています。
老後破産の事例として1つご紹介したいと思いますが、70歳で95歳の親の介護していると言う方も中にはおります。加えて自身の配偶者も認知症になってしまい自分の親と配偶者、両方を70歳で介護すると考えると施設やヘルパーに頼るしか介護ができないでしょう。その結果、介護費が増加し貯蓄を使い果たしてしまう。という事例があります。この他にも様々な事例がありますが、金銭的に困窮している時は同様に、子供世帯も支出が増える時期のため迷惑をかけたくなくない。相談しづらいという理由から1人で悩まれる高齢者が非常に多いようです。
老後破産は自己責任
一方で老後破産は自己責任ではないか?考えが甘い。と厳しい指摘もあります。これはケースバイケースとしか言えませんが、NIKKEI STYLEの「思わぬ大金で狂った家計 老後破産へまっしぐら 」という記事で紹介されている事例は、41歳のときにご主人を亡くされ保険金3200万円の支給があった奥様が49歳にて資金が足りなくなる。という事例が紹介されています。
奥様はご主人を亡くされてから48歳までの7年間仕事をしておらず保険金で生活していたようです。子供が2人いるようですが、毎月の生活費は33万円。どう考えても年金が支給される65歳まで貯蓄が足りる訳がありません。老後になってもいませんが破産状態な訳ですが、なぜ仕事をしないのか?なぜ倹約しないのか?など疑問に感じる事例です。働けない理由などがもしかするとあるのかもしれませんが、このような事例を見ると厳しい言い方ですが自己責任としか言えないのでないでしょうか。
生活保護を受けないのか?
自己責任か否か議論は別れると思います。どちらにせよ、生活困窮者に向けて生活保護が提供されるのが日本です。厚生労働省の発表では高齢者の生活保護需給率は50.8%になると発表がされていますが、それでも生活保護を需給せずに耐え凌ぐ高齢者がいます。「お上の世話だけは受けたくない」というプライドが邪魔する方もいれば、「自宅を保有していることから生活保護が受けられない」という方もいます。
自宅を保有している場合、福祉事務所から「先に住宅を売却をしてください。」と言われるケースがあるようです。ただ、高齢者の住まいともなれば自宅は老朽化が進み誰も買い手が見つからない。しかし資産なので売却しないと生活保護が受けられない。という方もいるようです。国の政策ではこのような方々でも生活保護を受けることができるように動いているようですのでが現場では異なる回答をされるケースがあるようです。
老後破産の原因
上記にように老後の予想できない問題によって老後破産が引き起こされてしまいますが、老後破産の原因について深掘りをしたいと思います。基本的に老後破産の原因は収入よりも支出が上回ることによって貯蓄を使い果たしてしまうことからどのような時に支出が発生するのかよく理解しましょう。
特別支出
特別支出とは、車の修繕費や旅行費、固定資産税などの税金、家のリフォーム代、家電の買い替え代などです。支払う回数は少ないものの、一回の支出額が大きいことが特徴です。特に住宅のリフォームは一度の支出額が非常に大きくなりますので、予め300万円程度を見積もっておくと良いでしょう。
定年後も子供の教育費が発生する
晩婚化が進む昨今ですが、定年後も子供が高校生・大学生という家庭は非常にリスクが高いでしょう。日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果」を見ると高校入学から大学卒業までにかかる費用は975万円と言われています。また、これだけの支出が伴う教育費ですので、既に子供が独り立ちをしていたとしてもなかなか貯金が貯められていないというケースもあるでしょう。
住宅ローンの返済が定年後も続いている
晩婚化は住宅ローンでも影響があります。仮に30歳で結婚、33歳で夢のマイホームを35年ローンで購入したとしましょう。この場合、住宅ローンの完済年齢は68歳です。65歳で引退した場合、年金支給があったとしても毎月の住宅ローンの返済は重くのし掛かるでしょう。とは言え、住宅ローンの返済期間を30年、25年と短期で設定することや、繰上げ返済を行うというのも、若い夫婦にとってなかなか余裕が作れないのが現状かもしれません。
継続的に発生する医療費
高齢になれば予期せぬ怪我や病気はつきものです。この費用についても事前に老後の計画に加えましょう。高齢者医療費制度を活用すれば1回あたりの支出はそこまで大きくなりづらいものですが、回数を重ねてしまえばこれも大きな支出となってしまうため注意が必要です。
老人ホーム・介護施設への入居費
自分自身の入居だけでなく、パートナーが認知症や要介護になった場合など老人ホームなどを検討する必要が出てきます。老人ホームの場合は入居金が非常に高額であり、毎月の支出も発生することから、老後資金で一番お金がかかる部分と言われています。
生命保険に関する全国実態調査を参照すると平均介護期間は4年11ヶ月、介護費用は毎月7.9万円発生しますので最低でも介護費用は1人あたり466万円を見積もりましょう。夫婦の場合は932万円になります。加えて介護施設などに入居する場合は介護保険の適用がされませんので介護費用はさらに増加するでしょう。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
自立しない子供がいる
いつまでの自立しない子供がいる世帯は、自分たちの生活費加えて子供の生活費も負担することになりますのでその分、老後の支出が増えてしまいます。1人あたりの生活費がおよそ12万円程度と想定すると夫婦+子供で毎月36万円近くの支出が発生します。この生活費を老後資金から捻出しようとすると老後破産の可能性が極端に高まります。
年の差婚夫婦
年の差婚は世帯主が年上の場合配偶者よりも先に定年退職しますので注意が必要です。主たる収入源が無くなってしまうことで配偶者だけの所得だけでは不足してしまう可能性があります。また、定年後も住宅ローンの支払いや子供の教育費も発生することから年の差婚夫婦は老後破産のリスクが高まります。
早すぎる定年退職と自営業
老後破産の原因として、貯金が十分に貯まっていない状態での早期定年退職は非常に危険でしょう。年金支給年齢が65歳からとなった今、それ以前に定年退職をしてしまうと老後資金の必要額が大幅に増えてしまいます。また、自営業の方も要注意です。自営業の方は一般のサラリーマンが貰える厚生年金の支給対象ではなくなりますので、国民年金の5万程度しか年金が支給されない可能性があります。老後の収入の要となる年金支給額少ないとなるとそれだけで老後破産の可能性が増大します。
老後資金はいくら必要なのか?これは夫婦二人世帯、独身世帯でそれぞれ異なります。そのため、こちらの情報を参考にまずは、老後資金がいくら不足しているのかを明確にしましょう。
老後破産の対策
これまで老後破産の原因を見てきましたが、誰もが該当する可能性があることがお分かり頂けたと思います。それでは、「老後破産」に陥らないための対策についてご紹介いたします。
老後の生活について計画を立てる
やはり、何にどのくらいのお金が発生するのか?これを把握する必要があります。老後資金の全て|老後破産を回避するために身に付けたいお金の知識にて老後資金の計画を立てるために必要な情報を網羅していますのでご参照ください。
また、老後のライフプランで気をつけたいのは、ストイックになりすぎないことです。学生時代や社会人時代など高い目標を掲げ努力することを教えられてきた世代は老後の計画においても非常に高い目標を設計するケースがあります。
老後の生活の場合、目標が未達成になると、「老後破産」の可能性が高まりますので「旅行に行きたい。月1回は外食したい」などある程度の贅沢は許してあげるようにしましょう。
老後の計画を遂行するためにいくら不足するのか?これをきちんと把握することが大切です。年金支給額だけで生活を設計すると様々なところで無理が生じてしまい老後の計画が崩れる可能性がありますので資産運用など組み合わせるようにしましょう。
定年後も仕事を続ける
先ほどお伝えした通り、年金受給額の不足分をできる限り収入で賄えることが理想です。【人生100年時代】長生きリスクを打破するための老後の働き方でもお伝えしていますが老後の働き方で重要なことは“持続性”になります。自分のペースで無理なく一定の収入を得る。これをできる限り長く続けることが重要なので、現役時代のような無理な労働はせずにワークライフバランスを重視する働き方を心がけましょう。
無理なく長く働くことを念頭に雇用形態はアルバイトなどでも問題ないでしょう。奥様がいる場合は、二人で短い時間でも働くことで家計は十分楽になりますので老後の仕事は非常に重要です。
資産運用を行う
老後資金を貯金だけで全額用意するのは非常に難しいと言えるでしょう。日本人で多くの方が運用している資産と言えば保険が一般的でしょう。保険に加えて金融商品なども積極的に資産運用を行うのがおすすめです。ただ、あまり資産運用に慣れていない方はロボアドバイザーなどを活用する方法もありますので最新のテクノロジーを活用し老後破産を回避するようにしましょう。
リバースモーゲージで残りの不足金額を賄う
老後の生活における収入と支出は無理をしないことが重要ということは散々お伝えしてきましたが、それでも“不足する金額はどうするのか?”これについては、リバースモーゲージという選択があるでしょう。リバースモーゲージについては「リバースモーゲージとは|1から理解し使いこなすための全知識」にて詳しく解説をしていますが、ある程度まとまった金額を老後資金として得られ、資金使途も柔軟であることがポイントです。そのため、老後の不測の事態に備えて準備をしておくことが良いでしょう。
リバースモーゲージは提供している金融機関によって制度が大きく異なります。そのため、リバースモーゲージの制度をざっくりと確認するならば、こちらのQ&Aがおすすめです。
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老後の計画を決めることで老後破産は防げる
「老後破産」は誰もが隣り合わせでありながらも、しっかりと老後の計画を立てることで未然に防げるケースが多い。ということをご理解頂けたと思います。それでも老後資金に困窮している場合は、生活保護を受給する手段も残されています。ただ、持ち家があると、生活保護の対象外となるケースがあります。詳しくは「持ち家があるなら生活保護よりも先にリバースモーゲージが紹介される理由とは!?」にてリバースモーゲージと生活保護の関係を解説していますのでご確認頂ければと思います。