贈与税は高い!そう思ってはいないでしょうか?
実は賢く贈与を進めることで相続税を支払うよりも断然お得になるのです。そうです、相続税対策は被相続人が亡くなった時に慌てて準備するのではなく生前から着実に対策をすることが重要なのです。
そこで今回は贈与税の税率をお伝えすると共に相続税を支払うよりもお得になるか事例を活用し計算を行いたいと思います。
そもそも贈与税とは?
贈与税とは生前時に個人から個人へ現金や不動産などの財産を贈与する際に発生する税金のことを指しております。個人間の贈与が一般的ではありますが、贈与者や受贈者が法人の場合もあります。法人の場合は所得税や法人税が発生します。
贈与税の生い立ちは、相続税の支払いを逃れるために相続税が発生しない金額まで贈与させてしまい相続税の課税から逃れることを防止するために誕生した税金となります。
そして、贈与税には「特例贈与」と「一般贈与」に分かれており、それぞれで税率が異なりますので順に解説をしたいと思います。
贈与税は110万円まで非課税
贈与税は基礎控除と呼ばれ毎年110万円までは非課税となります。
そのため、110万円以下で毎年子供や孫に贈与を続ければ贈与税は発生しないことになりますが、長年続けていると初めから高額な財産を贈与させる計画があったと疑われ課税されるケースがあります。
上記を防ぐには110万円など毎年一定額を振り込むのではなく、贈与額を変えることや贈与する年としない年を作るなどの対策を講じることで課税リスクを減少させることができます。
贈与を行う際は贈与契約書を都度作成するようにし、受贈者は贈与されている事実を把握し、いつでも贈与したお金を使えるようにしておきましょう。
怠ってしまうと相続時に課税されるリスクがありますので、詳しくは「相続税の税務調査の対象者・割合・時期・質問例・時効を徹底解説」をご参照ください。
特例贈与の税率
それでは贈与税の税率を確認したいと思いますが、まずは「特例贈与」の税率をお伝えします。
特例贈与とは、親族内の受贈者が20歳以上(1月1日時点)である場合に贈与税が優遇される制度になりますので、一般贈与よりも税率がお得になります。
基礎控除後の贈与額 | 贈与税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
610万円を贈与する場合で特例贈与の計算をしてみましょう。
- 610万ー110万円(基礎控除)=500万円(贈与税の課税額)
- 500万円 × 20% – 30万円=70万円(贈与税額)
上記の通り610万円を贈与する場合は70万円が贈与税となります。
一般贈与の税率
続いては「一般贈与」の税率を確認したいと思いますが、特例贈与は20歳以上の親族で贈与する場合に優遇が受けられる制度とお伝えしましたが、「一般贈与」はそれ以外の全てとなります。
基礎控除後の贈与額 | 贈与税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
特例贈与と同様に610万円を贈与した場合の一般贈与の金額を計算してみましょう。
- 610万ー110万円(基礎控除)=500万円(贈与税の課税額)
- 500万円 × 30% – 65万円=85万円(贈与税額)
一般贈与で610万円を贈与する場合は85万円の贈与税額が発生することが分かります。
贈与税と相続税はどちらがお得?
贈与税の税率を理解したところで贈与税を支払った方が良いのか、相続税を支払った方が良いのか比較をしたいと思います。まずは、相続税の税率のおさらいをしておきましょう。
- 相続財産 – 基礎控除(3000万円 + 600万円 ×法定相続人の数 )=課税対象となる財産
この基礎控除を引いた金額が相続税の課税財産になりますが、相続税は財産が増えるほど税率が上がる累進課税となりますので税率も確認したいと思います。
相続税率の一覧
相続財産 | 相続税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | なし |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
では実際に具体例を用いて相続税と贈与税のどちらがお得になるのか計算をしてみましょう。財産1億円を保有する人で計算します。計算を簡素化させるために法定相続人は1名とします。
- 1億円 – 3600万円(基礎控除)=6400万円(課税対象の財産)
- 6400万円 × 30% – 700万円=1220万円(相続税額)
贈与を何もしなければ1220万円の相続税を支払うことになりますが、事前に贈与した場合はどの程度お得になるのか計算していきます。
計算例1.財産1億円の人が100万円贈与した場合
では財産1億円を保有する人が100万円の贈与を行うといくらお得になるのか計算してみましょう。
- 1億円(財産) – 100万円(贈与額)=9900万円
- 9900万円 – 3600万円(基礎控除)=6300万円(課税対象となる財産)
- 6300万円 × 30% – 700万円=1190万円
- 1220万円(贈与しない場合の相続税) – 1190万円=30万円
- 100万円(贈与額) × 110万円(基礎控除)=0円(贈与税は発生しない)
100万円を贈与すると30万円分相続税がお得になることが分かります。
計算例2.財産1億円の人が200万円贈与した場合
では財産1億円を保有する人が200万円の贈与を行うといくらお得になるのか計算してみましょう。
- 1億円(財産) – (200万円(贈与額)=9800万円
- 9800万円 – 3600万円(基礎控除)=6200万円(課税対象となる財産)
- 6200万円 × 30% – 700万円=1160万円
- 1220万円(贈与しない場合の相続税) – 1160万円=60万円(相続税額)
- 200万円(贈与額) – 110万円(基礎控除)=90万円(贈与税は発生しない)
200万円を贈与すると60万円分相続税がお得になることが分かります。
計算例3.財産1億円の人が300万円贈与した場合
では財産1億円を保有する人が300万円の贈与を行うといくらお得になるのか計算してみましょう。
- 1億円(財産) – (300万円(贈与額)=9700万円
- 9700万円 – 3600万円(基礎控除)=6100万円(課税対象となる財産)
- 6100万円 × 30% – 700万円=1130万円
- 1220万円(贈与しない場合の相続税) -1130万円=90万円
- 300万円 – 110万円(基礎控除)=190万円
- 190万円 × 10%(贈与税率)=19万円
- 90万円 – 19万円=71万円
300万円を贈与すると71万円分相続税がお得になることが分かります。
上記のように110万円の非課税枠範囲だけで贈与するよりも少額でも贈与税を支払った方が結果的にお得になることが分かります。
贈与税が発生しない場合
以下に該当するケースは贈与税が発生しませんので覚えておきましょう。
- 年間110万円以下の贈与(複数人から受贈された場合は合計で算出する)
- 被扶養者から扶養者へ生活費や教育費のための贈与
- 冠婚葬祭や見舞金
- 婚姻20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与(2000万円以下で1度だけ有効)
- 離婚時の財産分与(財産が多額にある場合は贈与税が発生する場合あり)
贈与税が非課税になる場合
時限的ではありますが、贈与税が非課税になる場合もありますのでそちらも合わせてお伝えさせていただきます。
- 結婚・子育ての資金の一括贈与(平成31年3月31日まで結婚資金300万円、子育て資金1000万円が非課税)
- 住宅購入資金等の贈与(平成31年6月30日まで住宅購入資金300万円〜3000万円まで非課税)
- 教育資金の一括贈与(平成31年3月31日まで教育資金1500万円まで非課税)
まとめ
贈与税の税率について解説を行いました。110万円までは非課税になることから多くの方が110万円以下でコツコツと贈与していると思いますが、110万円以上でも結果的にお得になることがお分かり頂けたと思います。
贈与する場合は贈与申告書や贈与契約書を作成する必要になることやいくら贈与させるのが良いか計画を立てる必要があるでしょう。この計画にミスがあると無駄に税金を納めることになりますので、相続に強い税理士に依頼することが得策と言えます。
そのため、「相続税の相談や申告に強い税理士の選び方と目安費用を解説」を参照いただき贈与や相続に強い弁護士を探すと共に「税理士ドットコム」にて税理士をまとめて問い合わせすると簡単に税理士を比較することが可能になります。