生前贈与の非課税枠|教育資金・結婚資金・暦年課税を解説







相続でお金を遺すよりも、生きているうちに子供や孫の役に立てたいという方も多いでしょう。贈与税が心配かもしれませんが、近年は生前贈与にも複数の制度があります。それぞれ特徴が違いますので、各制度の概要と注意点をご紹介します。

生前贈与のメリット

生きているうちに財産を贈与するとどのような効果が得られるのでしょうか?大きいのは受贈者の喜ぶ顔が直接見られることではないでしょうか。更に、お金がどのように役に立つかも見られるので満足感も大きいです。また、近年では相続争いを懸念する声も高まっています。被相続人ではなく子供である相続人の方から相続対策を催促する例も多く、相続財産を過度に残さない、という点からも生前贈与は注目されています。

相続でよく問題になるのは?

相続でもめる例は、相続財産の分配が難しいケースで、土地はまさにそのケースです。複数の子供に対して主な財産が被相続人の土地だけである、という場合が代表例でしょう。仮に子供が3人いたとして、誰も住まないならば売却……となればいいのですが、生まれ育った家が人手に渡るのを良しと思わない子供もいるかもしれません。一方、誰か1人が土地を相続し住むことになるとしたら、財産が手に入らない他の子供が不満を持つこともあるでしょう。このように、あえて遺さないという財産の使い方も近年注目を集めているのです。

教育資金の一括贈与

孫への贈与として一般的なのは、教育費でしょう。教育費に関しては平成25年4月1日から平成31年3月31日までの時限措置ではありますが、最大で1,500万円まで非課税なる制度があります。

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

非課税の特例を受けるためには、金融機関等と一定の契約をすることが必要です。具体的には以下の3つのうちどれかの方法を選びます。

非課税制度の具体的な方法

  1. 祖父母と信託会社との教育資金管理契約に基づき「信託受益権」を付与する
    祖父母が信託銀行などにお金を預け、受益者である孫は教育資金の使用に限り払い出しを行えます。
  2. 書面による贈与によって取得した金銭を銀行等に預入れる
  3. 書面による贈与によって取得した金銭等で証券会社等の「教育資金口座の開設」をする(有価証券を購入)

これらの方法ならば、金融機関等が「教育資金非課税申告書」を提出します。それにより、贈与税が非課税となります。
ここでいう教育資金とは、入学金や授業料といった学校にかかる費用のほか、一定の習い事や交通費、留学費用なども対象となります。

結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税

こちらも平成27年4月1日から平成31年3月31日までの時限措置ですが、1,000万円までの額が非課税になります。金融機関等の営業所等を経由しなければならないなどの要件があり、この要件は既述した「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」と同じです。「結婚・子育て資金」ということもあり子供に使いたいという場合もあるでしょう。もちろん子供にも適用可能ですが、受贈者が50歳を過ぎると使えなくなりますので注意しましょう。

手軽で簡単、暦年課税

通常の贈与であっても、年間110万円までは非課税となります。このような贈与を「暦年課税」と呼びます。上限は受贈者1人につき110万円ですので、孫が複数いる場合は各110万円が上限になります。贈与のやり方が自由で、特別な申告が必要ないという手軽さは大きな魅力です。

暦年課税の落とし穴

ただ、手軽さゆえに注意点もあります。それは、贈与とは、お互いの意思確認が必要であるという点です。よくあるのが、祖父母が孫のために、孫名義の通帳を作って毎年110万円の範囲内で預貯金をしていったとします。

しかしこれは祖父母の一方的な貯蓄であり、孫に贈与をうけている意識はありません。このような預貯金は「名義貸し」と呼ばれ、祖父母本人の財産とみなされてしまいます。この状態で相続が発生すると、孫がそのお金を受け取る際には相続税がかかってしまいます。

これを防ぐためには、孫に贈与の意思を伝え、かつ孫がそのお金を管理できるようにすることが重要です。通帳と印鑑を孫に渡すといいでしょう。更に贈与の契約書を作っておくと安心です。

贈与の贈与税は

なお、110万円を超える暦年課税の税率は以下のようになります。

【特例贈与財産用】(特例税率)

課税価格税 率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

※課税価格とは、基礎控除後の金額をいいます

※直系尊属(祖父母や父母など)から、20歳以上の子・孫などへ贈与を行ったときの速算表です。

それ以外のケースでは若干税額がアップします もし贈与額が110万円を超えるとしても、200万円以下ならば税額は10%です。少額の贈与ならば十分に使えるのではないでしょうか。先にお伝えした信託は、申し込み時、引き落とし時に手間がかかります。それよりもシンプルに現金を渡したいという場合は暦年課税も検討してみる価値はあります。

ジュニアNISA

運用に抵抗がなければ、ジュニアNISAという手もあります。専用の口座を開設し運用を行うと、株式・投資信託などの譲渡益・配当等が非課税になります。非課税上限は年間80万円までで、非課税枠は買付代金ベースになります。 非課税期間は投資した年から最長5年間で、口座開設が可能な期間は平成35年12月末までです。

預金や国債、社債、公社債投資信託などは対象外ですが、上場REIT(不動産投資信託)や外国上場株式等は対象です。ただし、口座を開設した金融機関等によって取扱商品数、手数料が異なるため、どこに口座を開設するかは十分に考慮したいです。

運用は「親権者等」が代理で行う

運用は孫や子供が行うのではなく、親や祖父母が代理で行います。18歳まで(注1)は引き出しできませんが、20歳になった後は本人が運用を引き継げます。当初から孫や子供名義で口座を開設するため、移行の際に贈与税や相続税の問題が発生することはありません。 (注1)3月31日時点で18歳である年の1月1日以降、払出しが可能

贈与で配慮すべきこと

生前贈与の制度は複数あり、祖父母の選択肢は多いです。しかし、贈与は受け取る人がいて初めて完成する行為です。受贈者やその家族の気持ちも忖度する必要があるでしょう。前提として、子や孫に生前贈与すると、その分、相続財産が減る、という点を理解してもらわなければなりません。 また、孫が複数いるときは孫同士のバランスにも注意したいものです。せっかくの生前贈与がトラブルの元になっては残念です。「平等」が原則ですが、家庭環境や年齢で差をつけるときは不公平感が生じないよう配分の少ない孫へのケアを忘れずにしたいものです。

生前贈与を喜ぶケース

受贈者によっては生前贈与によって祖父母事態の生活が困窮することを心配するかもしれません。「まずは自分たちで使い、残ったら相続すればいい」という考え方です。こういった場合の解決策としては、健康状態や財産の残高を見ながら小出しに贈与する、リバースモーゲージなどで財源を確保して行う、などの方法があります。

リバースモーゲージを選択すると、相続人に土地家屋が遺ることはありませんが、冒頭でお伝えしたように「自宅」という相続財産は争いのもとになることがあります。また、現在は相続による空き家問題も頻出しています。すでに自宅を取得している相続人にとっては、空き家を相続するのは相続税の負担が大きいです。

それでもその後、売却することができれば売却益を手に入れることもできますが、立地によっては売却も難しいかもしれません。もしそのまま保有し続け、維持管理費も強いられるとしたらどうでしょう。このような懸念から「土地を遺さないで欲しい」という相続人の需要もあるようです。生前贈与を考えている場合は、相続のことも含めて家族で話し合ってみましょう。

リバースモーゲージとは?よく分かる15項目のQ&Aを解説

2017.06.04

まとめ

相続でお金を遺すよりも、生前使いたいことにお金を使うほうが有意義だと感じる人は多いでしょう。幸い今はさまざま税制優遇があります。ただ、制度もうまく活用するだけでなく、家族間の意思疎通も重要です。家族間の話し合いを行い、それぞれが納得する形で贈与を行いましょう。









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ABOUTこの記事をかいた人

横山 晴美

AFP/住宅ローンアドバイザー。 企業に属さない独立FP。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホームの購入相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案する。安心して住宅を購入できるだけでなく、家計の課題も解決できるとの声を頂いている。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。