介護保険を住宅改修に活用|適用される対象者・条件・申請手順・限度額を解説







住宅改修を行うと、介護保険による補助が受けられるのは広く知られていると思います。しかし、その具体的内容は意外と知られていません。例えば親の介護が必要になったとき、子供ならば急いで家のバリアフリー化をしたいと思いうでしょう。そのとき、ゆっくり情報収集する余裕はあるでしょうか?平素から適用範囲や支援の限度額などを知っておきたいですね。

基礎知識と対象者

誰でも住宅改修費が支給されるわけではありません。対象者や要件など、まずは基本的なところを押さえておきましょう。

対象者や対象家屋は

要支援1・2、要介護1~5と認定され、自宅で生活している人となります。当然、改修費の対象となるのはその人の自宅です。近所にある子供夫婦の家など、たとえ頻繁に行き来があっても自宅以外は対象外になります。ここでいう「自宅」は健康保険証の住所で判断します。
要介護認定申請中の場合は、事前に申請をしておき、介護の認定結果が出たのち支給、という流れです。同じように、本人が施設入居中・入院中の場合も、退所(退院)後に支給されます。

申請の手順

申請のおおまなかな手続きのながれは以下のようになります。

 
1. 改修前に、ケアマネージャーに相談
要支援の人は、担当の地域包括支援センターに相談。施工業者も交えて改修工事のプラン作成。

2. 事前申請
申請書、住宅改修が必要な理由(ケアマネージャー等が作成)、見積書、住宅の写真や図面等を自治体に提出。

3. 確認
自治体が事前申請を確認します、不備がなければ改修工事にとりかかります。

4. 住宅改修着工
改修工事は事前申し込みの通り行います。もし変更の必要が生じた場合はその旨自治体に連絡します。

5. 事後申請・決定
改修工事が終了後、領収書や請求書の明細、工事後の写真などを提出します。その後審査の結果、住宅改修費が支給されます。

いきなり工事に行ったり、申請とは違う工事を行ったりすると支給を受けられなくなる恐れがあります。病状が悪化すると、転倒や事故が心配になり工事を焦ることもあるでしょうが、まずはケアマネージャー、もしくは地域包括支援センターへの相談が先ですね。その他、イレギュラーなケースもまずは相談してみましょう。

ケアマネージャー等へ相談が必要な理由

介護保険の住宅改修では、最初に行うのがケアマネージャーへの相談です。一見遠回りなようにも見えますが、これはとても重要なことです。

というのも、素人が改修工事のプランを練ってしまうと、つい過剰な改修になってしまったり、本当に必要な部分の加入できていなかったりするからです。過剰な設備は問題ないような気もしますが、手すりやスロープが多すぎるとかえって要支援者・要介護者の病状を悪化させることもあります。

出来るところは自分の手足を使う、というのも立派なリハビリです。「出来ないところはサポートを」というのが介護保険における住宅改修の基本なのですね。
必要な部分だけ、過不足なく改修を行うことは家計面のメリットもあります。ケアマネージャーの力を借りて介護とお財布にやさしい住宅改修を行いたいです。

住宅改修の限度額

改修費の9割が支給される住宅改修の支給ですが、支給限度額もあります。限度額は20万円ですが、介護保険は1割が自己負担というシステムのため、20万円の9割である「18万円」が上限となります。20万円を何回かに分けて利用することも可能です。なお、自己負担額が2割の人は上限が「16万円」に変わるので注意しましょう。

費用の支払い方法は、(補助金以外の)自己負担分のみ支払えばいい業者が多いです。しかし一旦は全額支払い、後にかかった費用の9割(一定所得者以上は8割)が払い戻されるというケースもあります。おそらく多くの家庭では、前者の支払い方法を希望することと思います。事前に支払い方法を確認しておきましょう。

「3段階リセット」について

原則1人1回のみ受けられる制度ですが、2つ例外があります。

 

  • 住宅を転居した場合
  • 「介護の必要の程度」の段階が3段階以上重くなった(3段階リセット)場合

上記のケースに当てはまると、再び20万円の支給が利用可能になります。住宅を転居した場合は、新たに改修工事が必要になるので再支給が受けられます。3段階リセットは、要介護者の状態が悪化すると、追加で改修が必要になることから設けられている例外です。

ただし、3段階上がったかどうかを判断する起点は「最初に住宅改修を行った時」となります。 初めて要介護認定を受けた時点ではないので注意しましょう。また、このリセットが受けられるのも1回きりとなります。3段階リセットはそうそうあることではありませんし、介護の「進行を防ぐ」という目的からいえば、適用がないほうがいいかもしれませんね。

適用となる工事は

次いで、対象となる工事の例をご紹介します。

 
1. 手すりの取付け
玄関の段差、トイレ、階段、浴室などに手すりの取り付けを行います。
※対象外:固定されていない家具への手すりの取付け、工事を伴わない手すりの設置など

2. 段差の解消
通常の住宅は部屋と部屋の間や玄関先に段差があります。玄関前のスロープを設置する、敷居の撤去、浴室の床をかさ上げ、部屋や廊下など段差をなくすなど
※対象外:昇降機、リフト、段差解消機を設置する工事など

3. すべり止め(材料の変更含む)
畳から木製フローリング床材等へ変更、浴室やトイレの床材を滑りにくい材質へ変更

4. 引き戸等への扉の取替え
開き戸を引き戸、折戸やアコーディオンカーテン等に取替えます。
扉自体を撤去したり、ドアノブを回しやすいタイプに変更したり、など

5. 洋式便器等への便器の取替え
和式便器から洋式便器への取替え。工事に伴う壁の補強や、給排水設備工事も支給対象です。

個々の詳細要件は、ケアマネージャーに相談しながら決めましょう。なお、工事が大掛かりになると工事費が20万円を大幅に超えることもあります。例えば、玄関のスロープを作ったり、トイレの大きさを拡大するような改修は高額になってしまいます。資金面に注意しましょう。

資金に余裕があるならば「住宅ストック循環支援事業」のエコリフォーム(限度額が30万円に上がる)を利用して、大きなリフォームを行うのもいいかもしれません。この制度は、上限額が大きい分、要件も厳しいです。

介護による改修が目的ではなく、住宅性能そのものを向上させるリフォームが目的だからです。この機会に、住宅の住みやすさを良くしたい、メンテナンスを行いたいという時には利用を検討してみましょう。

それでも資金が不足する場合は

介護が発生すると、何かと資金が必要になります。仮に介護を行うのが子供である場合、兄弟間で相談して親の資産管理を行い、事前に資金繰りについて話し合いたいです。介護は終わりが見えないため、基本的にはある資金の範囲内でやりくりをしたいからです。

しかし、想定以上にお金がかかり、改修工事やその他の費用が不足することもあるでしょう。そういったときは、リバースモーゲージという手段もあります。

これは自宅を担保に借入を行う制度ですが、生存中は利息のみの支払いで済むタイプのローンです。所有者が亡くなったときは自宅を売却し、売却益を返済に充てます。介護する側(子供)にとっては、将来相続する家がなくなりますが、資金を得ることで子供の負担軽減にもつながります。

介護の負担を軽減することで介護離職などを防止すれば、たとえ相続財産は減っても家計メリットは大きいです。親の家を担保に入れるのは心理的ハードルが高いかもしれませんが、資金が不足すると介護そのものが立ち行かなくなる可能性もあります。選択肢の一つとして、前向きに検討してみましょう。

まとめ

自宅で介護するならば、安全面の配慮が必要です。補助金を利用して介護される側にやさしく、介護する側も楽にできる。そんな自宅を作りたいです。ただし、介護は住宅改修をすれば済む、というものではありません。もしも親の介護が発生したら、資金面・親族の協力体制をどうするのか、事前に話し合っておくと安心です。









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ABOUTこの記事をかいた人

横山 晴美

AFP/住宅ローンアドバイザー。 企業に属さない独立FP。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホームの購入相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案する。安心して住宅を購入できるだけでなく、家計の課題も解決できるとの声を頂いている。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。