遺言書の書き方を間違ってしまうと法的な拘束力が無くなり相続人同時の争いに発展する恐れがあることから、正しい書き方を身につける必要があると言えるでしょう。
また、遺言書には複数の種類があり証人が必要となる遺言書であればミスも限りなく減らすことができるでしょうが、「自筆証書遺言」と呼ばれる被相続人自身が自筆による遺言は証人が不要となり手軽な分、ミスも多くなります。
そこで今回は、「自筆証書遺言」の書き方とケーススタディ別の例文をお伝えしたいと思います。
自筆証書遺言の例文・記入例
早速、一般的な自筆証書遺言の例文をお見せしたいと思いますが、基本的には所定の様式が定められている訳ではありませんので「無効にならならい書き方」で作成さえすれば問題ありません。
遺 言 書
遺言者中村太郎は、この遺言書によって、妻よし子、長男よし男、に対して次の通りに遺言する。
1. 現金5,000万円を妻よし子に相続させる
2. 現金1,000万円と◯◯◯車(ナンバー:◯◯◯◯◯◯)を長男よし男に相続させる
3. もしここに記載のない財産が発覚した場合、その全ては妻よし子が相続するものとする
遺言者中村太郎は、遺言書の執行者として、下記の者を指定する
住 所 東京都渋谷区渋谷◯ – ◯ – ◯
職 業 弁護士(※弁護士以外でも可能だが、成人していることが条件)
遺言執行者 内藤たかし
記
平成◯◯年◯◯月◯◯日
住 所 東京都渋谷区◯ – ◯ – ◯
遺言者 中村 太郎 印
上記の例文のように「誰にどの財産をいくら渡すのか?」をしっかりと明記することが重要になります。こちらを基本の例文として頂き、必要に応じて加筆いただければと思いますが、気をつけなければならない点についても触れていきたいと思います。
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言の書き方は様式自体は自由ですが5つの注意点を守る必要があります。これを怠ってしまうと遺言書が無効となりますので十分に注意しましょう。
書き方1.遺産がどのくらいあるのか整理し把握する
まずは、遺言書を書く前の段階ですが、ご自身がどんな財産をいくら保有しているのか明確にするようにしましょう。
先程の例文では「もしここに記載のない財産が発覚した場合、その全ては妻よし子が相続するものとする 」と記載しておりますが、基本的にはこのような財産が発覚しないほうがトラブルを減らすことが出来るので望ましいと言えます。
相続財産に含まれるものは数多ありますが、現金、不動産、有価証券、車、保険など一通り整理しておきましょう。
書き方2.相続財産は漏れなく明確に遺言書に記載する
相続財産の整理が完了したら、相続財産を遺言書に記入することになりますが、この際にどの財産のことを指しているのか明確に記載する必要があります。
例えば、「BMWの車」と「BMWの車(ナンバー◯◯◯◯◯◯)」では後者の方がより正確な情報と言えます。
そのため、分かりやすく誰が見ても理解できる記載を心がけるようにしてください。
書き方3.相続人を明確にする
相続財産同様に相続人も明確にするようにしてください。相続順位が上位である配偶者から子供の順に記載し、相続人の財産配分を明記しましょう。
財産が現金5000万円、200坪の土地を保有している場合であり配偶者と子供2人の場合
- 配偶者:現金3000万円
- 子供1:現金1500万円
- 子供2:現金500万円、200坪の土地
上記のように誰に何の財産をどのくらい渡すのかしっかりと明記するようにしましょう。
書き方4.自筆証書遺言は必ず手書きでなければならない
自筆証書遺言書は、必ず手書きで作成するようにしてください。手書きでない、音声、映像、パソコンで作成した遺言は全て無効になりますので注意してください。
加えて、代筆も認められておりませんので本人が必ず執筆するようにしてください。
また、遺言書の偽造などを避けるために鉛筆など消せるもので作成するのではなくボールペンなど消せないもので執筆するようにしましょう。
書き方5.遺言書の作成日付を忘れずに記載し署名捺印する
遺言書を作成したらその日の日付も必ず記載するようにしましょう。「平成◯◯年◯月◯日」でも「20◯◯年◯月◯日」どちらでも問題はありません。複数の遺言書がある場合は、日付がもっとも新しい遺言書が適用されます。
また、署名捺印も必ず必要になります。
捺印の箇所は、遺言書の文末と封筒に捺印するようにしましょう。

遺言書の書き方をケーススタディ別に紹介
続いては、遺言書の書き方をケーススタディ別に紹介したいと思います。
株式を相続させる場合の例文
第1条 遺言者は、遺言者名義の下記の株式(株券)全部を、妻◯◯(◯年◯月◯日生)に相続させる
1 ◯◯株式会社
2 株式会社◯◯
預金を相続させる場合の例文
第1条 遺言者は、遺言者が遣い残した遺言者名義の下記預金債権を、妻◯◯(◯年◯月◯日生)に相続させる。
記
1 株式会社◯◯銀行◯◯支店 総合口座通帳 普通預金 口座番号 ◯◯◯◯◯◯◯
生命保険の受取人を変更する場合の例文
第◯条 遺言者を保険契約者及び被保険者とする◯◯生命保険相互会社の生命保険契約については、その生命保険金の受取人が遺言者になっているので、それを全て妻◯◯(◯年◯月◯日生)を受取人に変更する。
全財産を寄付する場合の例文
第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を換価し、その中から遺言者の債務、遺言執行費用、不動産売却手数料、所有権移転登記費用、その他の租税等この遺言執行に関する一切の費用等を控除した残金を◯◯に遺贈する。(寄付の使い道に指定がある場合はこの後に指定)
第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として以下の者を指定する
記
東京都渋谷区渋谷◯ – ◯ – ◯
弁護士 ◯◯◯◯ ◯◯年◯◯月◯◯日生
2 遺言執行者は、相続財産に含まれる預貯金債権の解約、払戻し、動産の処分等のほか、この遺言を執行する上での一切の権限を有する
3 遺言執行者は、遺言者の有する不動産全部を任意に売却し、現金化すべきものとする。 その際、買主名義への所有権移転登記とその前提としての相続登記において相続人の代理人として申請手続きができるものとする。
4 遺言執行者に対する報酬は、相続開始時の遺言者の有する相続財産の合計金額(不動産については固定資産評価額)の3%とし、遺言名義の預貯金より優先的に支出できるものとする。
未成年後見人を指定する場合の例文
第1条 遺言者は、未成年者である長男◯◯(◯年◯月◯日生)の未成年後見人として次のものを指定する。
本籍 ◯◯県◯◯市◯◯町◯◯番地
住所 ◯◯県◯◯市◯◯町◯◯番地 ◯◯◯◯
◯年◯月◯日生
祭祀主宰者を指定する場合の例文
第◯条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として長男◯◯を指定する。
永久供養を依頼する場合の例文
第◯条 遺言者の有する預金の中から金◯◯◯万円を、◯◯寺(主たる事務所、◯◯県◯◯市◯◯町◯◯番地)住職◯◯(◯年◯月◯日生)に遺贈する。
第◯条 前条の遺贈は、永久供養のためのものである。◯◯寺住職には、◯◯家の永久供養を願うものとする。
まとめ
遺言書の書き方についてケーススタディを交えてご紹介をしました。改めて遺言書の書き方で注意したいポイントを5つ振り返りましょう。
- 遺産がどのくらいあるのか整理し把握する
- 相続財産は漏れなく明確に遺言書に記載する
- 相続人を明確にする
- 自筆証書遺言は必ず手書きでなければならない
- 遺言書の作成日付を忘れずに記載し署名捺印する
上記の点に注意しながら遺言書を準備するようにしましょう。