自立しない子供が親の老後破産を招く|定年前に向き合うべき関係







今回の相談者は62歳の夫婦です。40歳の息子さんがいますが、未婚で自宅に同居しています。ご夫婦は本人の人生に口を出すつもりはなく、結婚についても特に希望はありません。しかし息子に口出ししない分、自分たちの老後も自由でありたいそうです。子供に経済的に自立してもらうためにはどうしたらいいのか。というご相談に対して、ライフプランの観点から解決策を探ってみました。

プロフィール
相談者:Aさんと妻のBさんで共に62歳
現在は、再雇用制度を利用し年収300万円
Aさんは65歳で定年(退職金1500万円)年金は夫婦で200万円
都内近郊の一戸建てに40歳の息子と3人暮らし

老後への、漠然とした不安

相談者のAさん夫妻は、今現在、明確に家計に問題が生じているわけではありません。しかし、このままでは息子に老後が侵食されてしまうのではないか、という漠然とした危惧を抱いています。

まずはAさん夫妻に家計の現状をヒアリングしました。Aさんは定年まであと3年です。60歳の時に住宅ローンを完済し、更に現金で一部をリフォームしたので、預貯金の残高は約100万円となってしまいました。

現在の生活費が年300万円で年収と同額ですが、退職後はAさんのスーツ代や保険料の支払いなどが減ることと、支出を見直すことで270万円程度にまで圧縮できる見込みだそうです。生活費が不足する分は退職金で補えるため、使い過ぎに注意すれば十分生活できると見込んでいます。

意外と深い問題が潜む

問題がなさそうなAさん夫妻ですが、息子さんの存在がネックでした。息子さんは就職をしているものの、家にお金は一切入れておらず、貯蓄もないようです。今までも、急な出費の際にAさん夫妻がお金を用立てたことが複数あったそうです。日本人の未婚率は年々上昇しています。結婚しなくても不自由しない時代ですが、そのためには一人で生きていけるだけの生活力は不可欠です。しかし、その基本的な能力を息子さんは備えていないのかもしれません。そこで息子さん自身と面談をすることにしました。

将来の見通し

息子さんにお金の使い方を聞いてみました。基本的には「入ってきただけ使う」という姿勢で、大きい買い物のために積み立てをする、将来のために貯める、という意識はありませんでした。危機意識を持ってもらうために、世帯全体の簡易シミュレーション表を作成し見てもらいました。

Aさんは80歳まで、Bさんは90歳までという計算です。Aさんの葬儀費用だけ見込んでいますが、その他入院や介護に関する費用は一切計上していません。それでも、Bさんが90歳時点で資産は247万円とやや心もとなくなっています。もし医療費や介護費用など想定外の費用が発生すると家計が破産する恐れがあります。

老後破産の解決策は

現在はうまく回っているように見える家計も、老後破産の危機をはらんでいました。一家の将来を変えるには息子さんの協力が欠かせません。息子さんが少しでも家にお金をいれて、家計を助けるというのが一般的な解決方法ですが、Aさん夫妻の希望はあくまで「息子の自立」であって家計への援助ではありません。

息子さんのライフプランはまだ定まっていないため、親との同居という形で将来を縛りたいくないという考えのようです。家族で話し合った結果、息子は家を出て一人で生活する、という方向で話がまとまりました。ただし、息子さんが自立してもAさん夫婦に老後破産の可能性が残ることは変わりません。そこで解決策を次の2つの段階に分けました。

老後破産の解決策

  • 息子さんが家を出る自己資金を貯める

「入ってきたものを全て使ってしまう」というお金の使い方を改め、自己資金を貯めます。Aさんが定年を迎える3年後までに、300万円を貯めるのがミッションです。

  • Aさんの定年を機に息子さんが家を出る

Aさん夫妻の資金面の脆弱さをカバーするために、リバースモーゲージを活用することを提案しました。Aさん夫妻は生活に大きな問題はありませんが、「病気や介護といった老後のリスクに備える」、「余暇を楽しむ余裕資金を手に入れる」この2つを満たすためにあえてリバースモーゲージを活用することにしました。

リバースモーゲージとは?よく分かる15項目のQ&Aを解説

2017.06.04

こうすれば、Aさん夫婦と息子さんの家計はそれぞれ自立します。

子供の自立支援

子供の自立を考えたとき、親の過干渉や過保護がないか確認が必要です。Aさん夫妻は、過干渉はないようですが、子供が車を購入する時に援助をしたり、カードを使いすぎてしまった翌月にお金を渡したしたりしたことがありました。善意の援助が息子さんの自立を妨げた可能性は否めません。Aさん夫妻は今後、援助をしないことを決め息子さんも納得しました。

経済的自立のために

息子さんの年収は480万円です。このお金を一体何に使っているのかと尋ねても明確な答えは返って来ません。日々の支払いのほとんどはクレジットカードとチャージ形式のカードで行うため、毎月の支出額も把握していないようです。

一回自分の支出を現金化して把握することにしました。家計管理はレシートを写メするだけのアプリを利用し、負担がかからないようにするなど工夫します。するとすぐに問題点が発覚しました。支出の多くはラーメン屋、喫茶店、コンビニなどの飲食代と、趣味の映画・DVD購入費でした。どうしても使いたいから使っているわけではなく、「何となく」使ってしまっている支出のようです。

あると使ってしまうけど、なければないで使わないタイプのようです。そこで先にお金を貯蓄して残りを使用するという先取り貯蓄を実践しました。最初は月5万円の先取り貯蓄。2ヶ月毎に額を増やし、半年後には月10万円の先取り貯蓄ができるようになりました。

一人暮らしの、家賃光熱費を含めて10万程度と見積もっていたため、これで一人暮らしを始めても家賃の支払いはやっていけるようになったと自信もついたようです。同時に、無意識に使っていたカード払いを止めたため、毎月10万円を超えていたカードの回数払いの支払残高も減っていきました。更にそこを貯蓄に回せば、1人暮らしをしつつも貯蓄のできる家計になります。

親の老後資金

息子さんは自立のための階段を確実に登っています。月に10万以上の貯蓄ができるようになったため、この10万円を家賃として使用するのではなく同居を続けて家に入れることも可能です。リバースモーゲージを選択すると、息子さんは家を相続することはできないため、慎重に意思決定をする必要があります。最終的な話し合いを提案しました。しかし息子さんの考えは「自分ひとりで広い家を相続しても持て余すし、親自身のために使ってほしい」ということでした。Aさん夫妻もその考えに賛成で、家族の総意でリバースモーゲージを活用することにしました。

リバースモーゲージは一律ではない

老後資金を得るためのリバースモーゲージですが、金融機関ごとに要件や内容が異なるためしっかり理解してから利用しなければなりません。対象エリアや金利、融資期間などももちろんですが、この相談では「親世代・子世代の自立」が強い希望ですので、借入額の設定と終了後の返済方法に注意したいです。具体的には以下のような点に注意します。

リバースモーゲージ活用のポイント

  • 契約者であるAさんの死亡後に妻であるBさんが契約を引き継げる
    より長生きをする可能性のあるBさんの生活をカバーできるものでなければなりません。また、借入額を抑えるために、定年と同時にリバースモーゲージを利用するよりも、5年程度は自分たちのお金でやりくりしたのち申し込むなどしてもいいでしょう。
  • 借入金使途が自由である
    通常のリバースモーゲージは使途に制限はありませんが、ものによってはリフォームや住み替え等、住宅関連に使い道を限定したものもあるので注意しましょう。
  •  自宅の価値が借入額を割り込んだ場合の対応を考えておく
    担保価値の範囲内で利用するのが一番ですが、必ずしも理想通りにいくとは限りません。担保価値を割り込んだ場合は、差額を一括返済するのが一般的です。Aさん夫妻の相続財産が足りなければ、推定相続人である息子さんが返済することになるでしょう。

親子で情報を共有して返済額が多大にならないよう気を付けたいです。また、群馬銀行のリバースモーゲージは返済時、自宅の売却代金が借入金額を下回っても不足分は請求されません。こういった商品を選んでおくと安心です。

まとめ

家族の在り方は様々です。親子が同居して助け合う、別々の道を模索する……どちらも立派な選択です。 今回の相談事例では、「助け合い」ではなく「依存」ともいえる状態だったため、定年前に手を打てた意義は大きいです。もし家族の間に懸念材料があれば、早い段階で話し合い、よい道を探しましょう。









全国320の法律事務所を徹底比較

ABOUTこの記事をかいた人

横山 晴美

AFP/住宅ローンアドバイザー。 企業に属さない独立FP。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホームの購入相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案する。安心して住宅を購入できるだけでなく、家計の課題も解決できるとの声を頂いている。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。