相続税の計算と言われると何やら難しそうな計算をする必要があるのではないか?と考えてしまいますが、ステップを踏めば決して難しい話ではありません。
今回は相続税の計算方法を分かりやすく解説するために以下で図解している8つのステップを順に解説していきます。

目次
相続税の計算手順1.相続財産を評価する
相続税の計算手順の1つ目は、被相続人の財産を評価するところから始めましょう。
要は、相続する財産がいくらなのかを金額に置き換える作業になりますが、現金などであればその価値が明確なのに対して株、骨董品、住宅などは金額に置き換えた時にいくらになるのか算出する必要があります。
以下に評価方法をまとめてありますのでご参照ください。

こちらに記載の内容はあくまで「目安」となりますので、実際に相続税を申告する際は税理士などの専門家に相談した方が良いでしょう。具体的なアドバイスをもらえますので安心と言えます。
宅地の評価方法
宅地の評価には「路線価方式」と「倍率方式」があり、家屋の評価は「固定資産税評価額」を基準にするのが一般的ですが、それぞれどのような計算方法で宅地や家屋を評価するのか解説をしたいと思います。
まずは、宅地の評価方法として「路線価方式」と「倍率方式」について図解しておりますのでご参照ください。

上記の通り、宅地は2つの計算式にて算出が可能です。
- 路線価方式による評価額の算出=1m2あたりの路線価 × 画地調整率 × 土地の広さ
- 倍率方式による評価額の算出=土地の固定資産税評価額 × 国税局長が地域毎に定める倍率
また、マンションのように敷地が共有となっている場合も図解したいと思います。

マンションの場合は一部例外を除き以下の計算方法にて評価額の算出が可能になります。
- マンションの評価額の算出=敷地全体の評価額 × 共有持分の割合
小規模宅地の特例が適用されると最大80%も評価額を減額できる
小規模宅地の特例に適用されると最大で80%も評価額を減額できることから、自身が該当しているか必ず確認したいポイントになります。

小規模宅地の特例が適用される基準としては、特定居住用宅地の場合は330m2以下であれば評価額が80%減額、特定事業用宅地の場合は400m2以下であれば評価額が80%減額、貸付事業用宅地の場合は200m2以下であれば50%減額となります。
- 生前贈与により得た宅地には「小規模宅地の特例」は適用されない
- 相続の場合は申告時に、相続した土地の中から200m2(400m2、330m2の場合もあり)を自由に選択可能
家屋の評価方法
次に「家屋」「貸宅地」「貸家・アパート」の評価方法について確認してみましょう。
家屋の評価方法

- 家屋の評価額=家屋の固定資産税 × 1.0
貸宅地の評価方法

- 貸宅地の評価額=通常の評価額(通常の評価額 × 借地権割合) – 借地権価額
貸家・アパートの評価方法

- 貸家・アパートの評価額(建物)=建物の固定資産税評価額 – 借家権価額
- 貸家・アパートの評価額(敷地)=通常の評価額 – (通常の評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
相続税の計算手順2.非課税財産と債務を差し引く(債務控除)
相続税の計算手順の2つ目は、先ほど評価した遺産総額から非課税財産と債務を差し引く必要があります。
相続する物には課税対象外のものが含まれているケースがあり、それらを「非課税財産・債務」として遺産総額から債務控除することが可能になります。
債務控除をしっかりと行うことで相続税の対象となる金額が減少することから、その分税金が安くなります。では、どのようなものが債務控除の対象になるのか確認をしてみましょう。
債務控除可能 | 債務控除不可 |
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相続財産の名義変更、申告時の税理士費用、遺産分割交渉等の弁護士費用、身分証明証の取得費用、遺言執行費用 |
債務控除の対象になるか悩んだ場合は「税務署」に相談することをおすすめします。また、債務控除の代表格である「葬式費用」、「生命保険金」、「死亡退職金」については以下で解説します。
葬式費用の債務控除
基本的に葬式費用は債務控除の対象になりますが、用途によって可否が細かく分かれております。以下に債務控除の適用可否をまとめてありますのでご参照ください。以下は一例になりますので詳しくは国税庁の公式情報をご参照ください。
債務控除可能 | 債務控除不可 |
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生命保険金の債務控除
生命保険金も非課税枠が設けられておりますが、「500万円 × 法定相続人の数」と上限が決められております。
そのため、法定相続人が2名の場合は「500万円 × 2名=1000万円」までが非課税枠となります。その金額を超えて、生命保険金が支給される場合は、相続税の課税対象に含まれることになります。
死亡退職金の債務控除
死亡退職金も生命保険金と同様に「500万円 × 法定相続人の数」まで非課税とされております。
死亡退職金とは、被相続人が亡くなったことで本来受け取れるはずだった退職金や功労金などを受け取ることを指しており、被相続人が亡くなった時から3年以内に支給が確定したものについては相続税の課税対象になるとされております。
従って、上記の非課税枠を超えた部分に関しては相続税の対象となります。
相続税の計算手順3.基礎控除額を差し引く
相続税の計算手順の3つ目は、「課税価格の合計額」から「基礎控除」を差し引く手順について解説を行います。
基礎控除とは「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」だけ課税価格の合計額から控除を受けられる制度になりますので大幅に相続税を削減することが可能になります。この際、差引後の財産が0円になる場合は相続税は発生いたしません。
法定相続人の数 | 基礎控除額 |
1名 | 3600万円 |
2名 | 4200万円 |
3名 | 4800万円 |
4名 | 5400万円 |
5名 | 6000万円 |
相続税の計算手順4.相続税の合計額を計算する
相続税の計算手順の4つ目は、「法定相続人の人数に応じて課税遺産額の分配」をおこない、「相続税率を掛け合わせ」、「各分に課税される相続税を合計」する手順についてお伝えします。冒頭の手順図の④〜⑥の解説になります。
要は、課税される財産を相続人で分け合い、それぞれに相続税率を掛けて足すという作業になります。
相続税率は以下の早見表を参考にしてください。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | なし |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
相続税の総額の計算例
では、実際に相続税の総額を計算してみたいと思います。
- 課税財産7000万円
- 相続人:妻・長女・次女
- 法定相続分で按分した場合の妻の相続税額
7000万円 × 1/2(法定相続割合)=3500万円
3500万円 × 20%(相続税率)ー200万円(控除額)=500万円
- 法定相続分で按分した場合の長女・次女の相続税額
7000万円 × 1/4(法定相続割合)=1750万円
1750万円 × 15%(相続税率)ー50万円(控除額)=212万5000円
※長女、次女それぞれに212万5000円の相続税が発生します。
- 相続人全員の相続税額
500万(妻) + 212万5000円(長女)+ 212万5000円(次女)=925万円
この計算例の場合は総額925万円の相続税額となりますが、実際に妻、長女、次女でいくらの相続税を納める必要があるのか確認してみましょう。
相続税の計算手順5.実際の受取分に応じた相続税額を算出する
相続税の計算手順の5つ目は、先ほど計算した「相続税額の合計」に対して、実際に相続する割合で相続税額を計算したいと思います。こちらも先ほどと同じケースの計算例を用いて解説をしたいと思います。
- 妻:7/10
- 長女:2/10
- 次女:1/10
- 妻が実際に取得する割合に応じた相続税額
925万円 × 7/10(実際の取得分)=647万5000円
- 長女が実際に取得する割合に応じた相続税額
925万円 × 2/10(実際の取得分)=185万円
- 次女が実際に取得する割合に応じた相続税額
925万円 × 1/10(実際の取得分)=92万5000円
相続税の計算手順6.条件に適用するか否かで増額や減額を行う
相続税の計算手順の6つ目は、「配偶者控除」や「未成年者控除」などの条件に適用する場合は「税額控除」を適用し、相続人が親、子、配偶者ではない場合は「税額加算」を行い、最終的な増減を調整することになります。
税額控除の種類と適用条件、控除額は以下の一覧表をご参照ください。
控除名 | 控除が適用される人 | 控除額 |
贈与税額控除 |
| 贈与税分を控除可能 |
配偶者控除 |
| 1億6000万円または法定相続分のどちらか大きい方 |
未成年者控除 |
| 20歳になるまでの年数×10万円 |
障害者控除 |
| 一般障害者は85歳までの年数×10万円、特別障害者は85歳までの年数×20万円 |
相次控除 |
| 複雑な計算で求めるため税理士に要相談 |
外国税額控除 |
| 外国で支払った「相続税に相当する税」または相続税×海外の財産額/相続人の相続財産額 |
また、相続人が親、子、配偶者ではない場合は「税額加算」となりますが、相続税が20%増額されますので注意しましょう。どのような場合に親族以外が相続するか?と言えば、遺言状などにそのような記載がある場合になります。
そのため、親族以外の方に相続を希望している場合は、相続人が20%の税額加算を支払うことができるのかも事前に確認をしておいた方が良いでしょう。
まとめ
相続税の計算方法について解説を行いました。
上記の通り、相続税の計算は手順に沿って行えば、大筋の金額を算出することは可能になりますが、やはり計算は面倒。という方も多いでしょうし、財産の評価や控除などは専門家の意見を聞きたいところでもあります。
そのため、相続税が発生しそうな場合は、お近くの税理士に相談することをおすすめします。とは言え、普段から税理士とやりとりしている方は稀でしょうから「税理士ドットコム
」を活用し税理士を一括検索すると簡単に見つけることが可能になります。