【老後の相談室Vol.7】相続税はいくらかかる?55歳男性の疑問







2015年に相続税法が改正されました。同様に高齢化が進む日本では、1年間で亡くなる約130万人のうち、約10万件が相続税対象の財産を有しています。今回はある家庭の老後の相談を受ける形で、相続税問題について考えます。

東京の世田谷区に住んでいる55歳の佐藤さん(仮名)は、相続税が自分に関係あるとはまったく考えていなかったのですが、ある年に親が亡くなり住宅を相続した際、税理士から「佐藤さんが亡くなった時も奥様に相続税がかかりますよ」と言われ焦ってしまいました。

「相続」と一言で言っても、とても複雑で様々な知識や手続きが必要なようです。佐藤さんは老後に向けてどのような「相続税対策」をするといいのか考えてみましょう。

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佐藤さんの背景・資産状況を確認する

まず佐藤さんの背景と資産状況を確認しましょう。どのような背景か、どのような資産状況かは、相続を考えるにあたって欠かすことのできないとても大切なポイントです。

佐藤さんの背景
年齢:55歳
居住地:東京都世田谷区在住
家族構成:妻(52歳)、長男(26歳社会人)、長女(23歳社会人)
職業:会社員(60歳定年予定)
年収:800万円
現金資産:2000万円(普通預金・定期預金)
不動産①居住用住宅:評価額1500万円
不動産②旧住宅:評価額800万円
終身保険料見込額:想定額1500万円
退職金予定額:2000万円
資産合計額:7800万円

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佐藤さんの相続税はいくら?試算に必要なこと

現在の資産状況をもとに、佐藤さんの相続税額がいくらなのか試算してみましょう。そのためには、まず佐藤さんの相続控除額について抑える必要があります。相続税控除は「基礎控除」と「法定相続人の控除」があります。

現在、基礎控除は1回の相続において3000万円です。法定相続人は「相続資産を承継する権利のある者」のことで、配偶者や子どもなどが該当します。法定相続人1人につき600万円の控除があります。2015年以前は基礎控除が5,000万円、法定相続人1人あたり1000万円の控除額があったのですが、法改正により大きく減少しました。

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佐藤さんの例に当てはめると、奥様とお子さんは2人いますので法定相続分は計3人の1800万円(600万円×3)です。ここに基礎控除が3000万円加わるため、合わせて4800万円の資産までに相続税がかからないという計算となります。

佐藤さんの資産額は7800万円ですが、居住用住宅に関して配偶者に相続する場合は、1億6000万円まで非課税となります。また生命保険が500万円まで非課税となりますので、居住用住宅分と生命保険の500万円を引くと資産額は5800万円、それでも差額の1,000万円が相続税の対象になってしまいます。

佐藤さんはいくらの相続税を納めなくてはならないのか

この5800万円の資産に対して、課税される相続税の額も試算しましょう。今回の場合、配偶者が1/2、子どもたちが1/4ずつの相続資産を受け取ることとなり、相続税も案分割合に応じて課税されます。

相続人受け取る相続資産額相続税額 
妻(配偶者)2900万円385万円
長男1450万円167.5万円
長女1450万円167.5万円

あくまで現段階の資産状況による相続税の金額を算出した場合です。佐藤さんはまだ55歳なので、これから老後資金として現金などを活用するでしょうから、亡くなった時の資産は現状よりも少なくなっているでしょう。

相続税の計算式

相続資産額税率控除額
1000万円以下10%なし
3000万円以下15%50万円
5000万円以下20%200万円

相続税対策①:住宅の処理方法を事前に決めておく

住宅を相続する時のポイントは、事前にその住宅の扱いについて計画を立てることです。建物をそのまま売却するのか、解体して土地のみで売却するのか、賃貸物件にするのかなどの活用方法を実際に相続が発生する前に、家族で方向性を定めたうえで相続人の一人が引き継ぐことが望ましいです。

事前に決めることでトラブル防止に

例えば、長男が引き継ぎ売却の決断をしたものの、ほかの家族、親族から「思い出の実家を売却するのか」と指弾されてしまうこともあります。これでは相続した長男が報われません。そのため、住宅の相続は家族親族が一丸となって相続対策に取り組み、相続資産をどのように活用していくかの「回答」を準備することが求められます。

両親からの住宅資産は相続税対策できない

佐藤さんの場合、居住用住宅は非課税枠の対象となる一方で、両親から相続した住宅資産は節税方法がありません。築年数の経った建物はメンテナンスコストもかかるうえ、最近は治安悪化を懸念する自治体から解体依頼を受けるケースも増えてきました。

とは言っても上物(建物)を解体すると土地にかかる固定資産税・都市計画税の軽減措置が対象外となるため、なかなか上物を解体できない土地オーナーも多くいます。ただ、この軽減措置に関しても現在空き家対策特措法という法律で対象外となる事例が生まれてきており、今後が注目されています。

相続税対策②:妻から子どもへの二次相続も対策すべし

もうひとつ気をつけたいのは「二次相続」についてです。今回の佐藤さんの例では、奥様が1/2の2900万円を承継し、相続税385万円を支払います。ところが3歳下の奥様も子どもたちへの相続時期は10年も20年も先の話ではありません。

奥様は亡くなった時には同様に子供たちに対して相続税が課税されます。このように直近の相続のみに気が向き、結果相続税を多く支払ってしまうケースを「二次相続」といいます。 二次相続を防ぐためには、佐藤さんが亡くなる時に子どもたちへ多めに相続する(遺贈、といいます)など、意識的に次世代へ財産を承継させることがポイントです。

どのような相続スキームにすると相続税額が少なくなるのか、税理士などの専門家に相談することも大切です。

相続税対策③:遺言は早めに書くことが大切

二次相続も含めて相続税問題の共通した課題は、実際に相続が発生する前に資産共有をしておくことです。資産共有は特定の相続人だけではなく、相続の権利がある人全員で行うことが理想ですが、遠方に居住しているなどで現実的には難しいケースもあります。

その場合は相続対策を中心になって進める人が親(被相続人)の協力を得たうえで進めていくことが大切です。そうすれば相続以後に「自分は納得していない」などの「争族」を回避することができます。

老後にとって相続はとても大きな課題です。大きな問題となる前に「まだまだウチには早い」と考える前に、小さな準備から進めるようにしていきたいですね。









ABOUTこの記事をかいた人

工藤 崇

株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいとお考えの個人、 FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居企業。執筆実績多数。東京都千代田区大手町。