介護保険を活用することで介護に関する様々なサービスを自己負担1割(所得によっては2割や3割の場合もある)で受けることができることから、要介護認定者には重要な制度となっています。
その中でも、介護費用の大きな圧縮に繋がる「介護保険施設」は、入居一時金が0円であり、入居費も民間の介護施設に比べると安価であることから非常に重宝される存在となっています。
そこで、今回は「介護保険施設」の種類や特徴を比較しながら解説を行いたいと思います。
介護保険施設とは
介護保険施設とは、介護保険サービスが利用できる公的な介護施設であり、3つの種類があります。
介護が必要な方が入居する施設「特別養護老人ホーム(特養)」、リハビリを中心にしたい方が入居する施設「介護老人保健施設(老健)」、長期の入院と治療が必要な方が入居する施設「介護療養型医療施設(療養病床)」と3つの役割に分かれています。
この3つ全てにおいて「要介護認定」を受けている方が対象となり、入居一時金は0円で介護費、入居費、食費を加えても民間の施設よりも割安で入居することが可能になります。
一般的には、相部屋形式となりますので、プライバシー面で抵抗がある方もいるようですが、最近は個室が用意される施設なども開設しています。ただし、個室のある施設は、他の施設よりも費用が高くなりますので、その点は注意が必要でしょう。
介護保険施設の種類と特徴を比較
それでは、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養病床)のそれぞれの種類と特徴を確認してみましょう。
介護保険施設の種類 | 特別養護老人ホーム (特養) | 介護老人保健施設 (老健) | 介護療養型医療施設 (療養病床) | |
入居対象者 | 自立 | – | – | – |
要支援 | – | – | – | |
要介護 | 要介護3以上 | ◯ | ◯ | |
入居一時金 | 0円 | 0円 | 0円 | |
月額費用(目安) | 相部屋(4人部屋)5~16万円程度 個室(ユニット型個室)18~22万円程度 | 相部屋 6~16万円程度 | 相部屋 7~17万円程度 | |
付帯サービス | 食事 | ◯ | ◯ | ◯ |
緊急時の対応 | ◯ | ◯ | ◯ | |
介護 | ◯ | ◯ | ◯ | |
終の住処 | ◯ | – | – |
特別養護老人ホーム(特養)の詳細
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の方が入居できる施設となり、在宅での介護が難しい方が入居することとなります。高度な医療が必要なほど症状が悪化しなければ入居し続けることができますので、終の住処として暮らしていける施設となります。
特別養護老人ホーム (特養) | メリット | デメリット |
入居期間の制限がなく生涯住み続けることができる | 待機待ちが発生入居難易度が高い | |
入居一時金が不要で入居費用も安い | 相部屋が多くプライバシーが確保しづらい | |
介護、食事、アクティビティ、健康管理などサービスが充実している | 要介護3以上でなければ入居できない |
介護老人保険施設(老健)の詳細
介護老人保険施設は、症状が安定し在宅復帰を目指す方を対象にした施設であることから、リハビリの専門家に加え、医師や看護師が在籍するなどサポート面が充実しています。
ただし、入居期間が短く原則3ヶ月程度しか入居することができません。
また、入居には医師の診断書が必要になりますので、事前に準備をするようにしましょう。
介護老人保健施設 (老健) | メリット | デメリット |
医師、看護師による医療ケアが受けられる | 入居期間が原則3ヶ月と制限がある | |
リハビリの専門家がいることで効果が期待できる | 相部屋が多くプライバシーが確保しづらい | |
要介護度1以上で入居が可能 | 入居には医師の紹介状が必要 |
介護療養型医療施設(療養病床)の詳細
介護療養型医療施設(療養病床)は、重度の介護状態である寝たきりの方や認知症の方でも入居ができる施設です。介護士や看護師も在籍していますので安心感があるでしょう。
一方で状態が改善した場合は、退去する必要がありますので一生涯住み続けることは出来ない場合があります。また、レクリエーションの充実を期待する場合は、特別養護老人ホーム(特養)の方が良いでしょう。
介護療養型医療施設 (療養病床) | メリット | デメリット |
重度の介護状態でも入居が可能 | 状態が改善した場合は退去する必要がある | |
介護や看護のサービスが受けられる | 相部屋が多くプライバシーが確保しづらい | |
認知症対応施設もある | レクリエーションなどが少ない施設が多い |
介護保険施設は要介護認定者のみ
上記のように介護保険施設は入居一時金が発生せず、月額費用も民間運営の介護施設よりも安価であることから入居希望者が後を絶たない状態で入居待ちが発生しています。
ただし、誰でも入居できる訳ではなく要介護認定を受けている方が対象になりますので、お住いの市町村にて要介護申請を行うようにしましょう。
申請は本人だけでなく、家族や「地域包括支援センター」「居宅介護支援事業者」「介護保険施設」による代理申請も可能になりますので状態が悪い場合は代理申請を活用しましょう。
介護保険や要介護認定の詳しい解説は「介護保険の全て|制度を理解するために必要な全知識を徹底解説」をご参照ください。

介護保険施設のまとめ
介護保険施設の3つの種類について解説を行いました。それぞれの特徴をまとめたいと思います。
- 特別養護老人ホーム(特養)は、介護が必要な方が入居し生涯住み続けることできる
- 介護老人保健施設(老健)は、リハビリを行い在宅介護に復帰を希望する方が短期間で入居することができる
- 介護療養型医療施設(療養病床)は、長期の入院と治療が必要な方が入居し症状が改善するまで住むことができる
それぞれ、介護の状態に合わせて入居する施設が変わりますので、それぞれの特徴を比較し最適な施設を選ぶようにしましょう。