介護保険の基礎知識から法改正まで徹底解説!







高齢社会の突入、財政悪化などの影響で、公的介護保険は改正を重ねています。介護の不安を解消するためにも、「介護保険について知っておきたい」という人も多いと思います。しかし、改正が多く内容をつかみきれないという人も多いようです。そこで公的介護保険の基礎知識と、そして改正の流れを解説します。

介護保険とは

介護保険の目的は高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みです。そのため、40歳以降は介護保険料の支払い義務が生じます。医療保険と同じで一生涯保険料を払い続けることになるため、保険料負担は大きいかもしれません。しかし、万が一、介護状態に陥ってしまった時はさまざまな恩恵を受けられます。訪問・通所などの公的介護サービスの利用料が原則1割負担(所得によっては2割負担)です。

介護保険の歴史

もしもの時はぜひとも活用したい介護保険ですが、制度の歴史は比較的浅いです。従来は「介護は家族で行うもの」という意識が根強くありました。その常識を変える介護保険法が施行されたのは平成12年です。その後、試行錯誤を繰り返すように、幾度も大きな改正がありました。2017年現在の介護保険制度はどのような内容になっているのでしょう。

介護保険の被保険者

介護保険の被保険者となるのは40歳以降ですが、その中でも第1号被保険者と第2号被保険者に分かれます。認定条件がそれぞれ以下のように異なります。

【第1号被保険者】

  • 65歳以上の人
  • 受給要件 要介護状態、および要支援状態

【第2号被保険者】

  • 40歳から64歳までの人
  • 受給要件 要介護・要支援状態。ただし、末期がん、関節リウマチ等の加齢に起因する病気の場合

第2号被保険者は、第1号被保険者に比べて適用要件が厳しいのです。では、この要件を満たしているのかどうか判断するのは誰なのでしょう?

介護保険利用の流れ

介護保険を利用するには「要介護認定」を受けなければなりません。医師の意見、コンピューター、介護認定審査会らによって介護の程度を判断します。介護の程度は症状の軽い順に「要支援1、2」、「要介護1~5」になります。どこに認定されるかで受けられるサービスが変わってきます。序列でいうと軽い「要支援」の場合でも、自宅への訪問、短時間通うデイサービス、数日など短期間滞在する入居サービスなどが受けられるので安心です。

要支援に満たない場合

なお、要支援の認定が受けられない場合でも、自治体独自のサービスを受けることが可能です。買い物や草取りなど、日常生活のサポートや配色サービスのほか、健康を維持促進するためのサークル活動など介護予防に有益な支援も多いです。健康なうちからこれらのプログラムを利用すると予防、そして万が一介護の症状が現れた時の早期発見にも繋がりそうです。

介護保険で受けられるサービスの種類

訪問・通所・短期入所、もしくは入居(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養型医療施設)などその他、地域密着型としてグループホームや定期巡回なども。

介護サービスの体系は

サービスは大きく分けて、5種に分かれます。

 
1. 訪問型 自宅で受けられるサービス。入浴介護や生活支援など
2. 通所型 自宅から通い受けられるサービス。リハビリテーションなど
3. 短期滞在型 家族の旅行中など、短期間の入居サービス
4. 居住型 見守りや生活援助を受けつつ、介護度の軽い者同士が自立した共同生活を営む。特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護など
5. 入居型 介護老人福祉施設、介護老人保健施設など
介護状態になっても自宅に住み続けたい、という人は多いでしょう。自宅か、入居かという二択ではなく。自宅に住みつつ施設へ通う手法や、一時的に入居するという選択もあります。将来の選択肢が多いのはうれしいですね。

在宅が難しくなる分岐点は?

自宅に住み続けたいと願っても、ある程度症状が進んだら施設への入居を決断せざるを得ないでしょう。しかし、状況によってこの境界は大きく異なります。介護に協力的な同居家族がいる場合と単身者では状況が全く異なるからです。

一般に、単身者では要介護2~3程度という、症状がそう重くない時点で自宅での生活が難しいといわれます。家族のサポートが受けにくい場合は、入居系施設の情報収集を早い段階で行っておきたいです。

介護費用の負担額:在宅編

平成27年8月以降、介護保険の自己負担割合が所得に応じて1割負担から2割負担に引き上げられました。このボーダーラインの考え方は所得だけでなく家族の有無や所得の種類によって変わってくるため、多少複雑かもしれません。「65歳以上」という前提条件で、明確に1割負担になるのは以下のようになります

 
1. 本人が市区町村民税を課税されていない場合又は生活保護を受給されている場合
2. 本人の合計所得金額が 160 万円未満
2.を見ると「合計所得金額160万円以上になると、2割負になる?」と思うかもしれません。しかし、160万円という数字は一定の控除がされた後の数字です。合計所得金額160万円以上でも、以下のような場合は1割負担になります。

    【本人の合計所得金額が160万円以上でも、自己負担1割になるケース】

    • 2人以上の世帯で「年金収入+その他の合計所得金額」が346 万円未満
    • 単身者で合計所得金額が年金収入のみの場合で、年収 280 万円未満

    自己負担のボーダーラインを知っておくことは非常に重要ですね。仮に、1人暮らしで、年間の年金受給額270万円の人の場合、資産運用で十数万円の利益を出すと、自己負担が2割に増える可能性があります。年収が大幅に増えるならばともかく、ボーダーライン周辺の所得ならば、収入を増やすのは慎重に行いたいです。

    在宅サービスには月々の限度額が設定

    在宅サービスは1割(2割)負担ですが、その負担額には月の限度額が設定されています。限度額を超えると超過分の払い戻しを受けることができるのです。

    ただし、この上限額も所得に応じており、月額15,000円~44,400円の幅があります。以前は一番高い限度額が37,200円だったのですが、平成27年8月からは現役並みの所得がある世帯は上限額が44,400円に引き上げられました。

    【現役並みの所得の定義】

    世帯内に 65 歳以上の人が1人の場合 その者の収入が 383 万円未満

    この所得要件にあてまると、月の上限額が最高の44,400円になります。ただし該当する場合も、「65 歳以上の人が2人以上いる世帯で、世帯収入の合計額が 520 万円未満」ならば、自治体に事前に申請することで限度額は 37,200 円まで下がります。世帯所得が同じでも家族構成によって限度額の区分が変わるので注意したいです。

    「自己負担1割」の範囲

    意外と知られていませんが、介護保険の罠として、原則である1割(2割)負担の対象が限られる、という点があります。訪問、通所などの、いわゆる在宅サービスのみが1割(2割)負担の対象です。

    ニュースやテレビなどでよく聞く「介護施設に入るとお金がかかる」というセリフは、この辺りに原因がありそうです。介護保険は全部1割(2割)負担じゃないの?そんなの聞いてないよ、と思われるかもしれませんが、施設に入所してしまうと金額が一気に跳ね上がるため、そこを定率負担にしてしまうと制度として成り立たないのですね。制度の公平性を保つためには仕方のない措置といえそうです。

    介護費用の負担額:入居編

    入所サービスの基本は、全額自己負担というものですが、一部の費用には負担軽減の補助があります。まず施設入居者の費用のうち、施設入居者の日常生活費(理容・娯楽費用等)は原則通り全額自己負担となりますが。しかし、入居に欠かせない居住費や滞在費、そして食費に関しては所得に応じで一定の支援があります。

    例えば、食費ならば1日300円~650円、部屋代については1日320円~1,310円程度が負担限度額となるのです。限度額の設定は、費用が抑えられることはもちろん、家計管理の面からもメリットが大きいです。基本的な費用について、1日の限度額が設定されることで、月の介護費用の目算が立てやすいからです。

    入居者への負担軽減も、要件が厳格化

    施設入居者への限度額設定は、全ての入居者に行われるわけではありません。所得・貯蓄要件の2つを満たす必要があります。

    1. 所得要件 生活保護世帯、もしくは市区町村税非課税世帯(市区町村税非課税世帯の中でも、所得に応じて負担限度額が3段階に変わる)

    2. 貯蓄要件 預貯金等が単身で1000万円 (夫婦で2000万円) 以下

    ここのポイントは2つあります。まず1つめは、市区町村税非課税世帯における、所得のカウント方法についてです。所得額に応じて負担限度額が変わるのですが、この条件が厳格化されたのです。

    以前は遺族年金と障害年金は所得を算定する際に合算されませんでした。しかし平成28年8月より、そういった非課税年金収入も所得判定の際加算されるようになったのです。
    もう1つのポイントが、貯蓄要件もあるという点です。現在の所得だけでなく、過去の貯蓄歴まで影響してくるということです。収入が遺族年金や障害年金だけだからこそコツコツと貯めてきた……という人は注意が必要かもしれません。

    介護保険の法改正の概要

    最近の傾向として。窓口の一元化による利便性の向上、介護者を増やさないための予防医療の充実、一律ではなく所得に応じた負担割合への移行などが挙げられます。これらのうち、家計に直結する改正のメインにご紹介してきましたので、まとめておきます。

      平成27年8月 在宅サービスの自己負担が所得により1割から2割に増える

      平成27年8月 在宅サービスにおける月々の限度額、上限額が値上がり

      平成28年8月 施設入居者への支援も所得・貯蓄要件が厳格化

       このほか、平成29年には介護職員の処遇改善を目的とした介護報酬改定も決定しました。利用者側に直接の恩恵はないかもしれませんが、現場の報酬が上がれば介護サービスの向上が期待できます。

      所得と貯蓄に応じた負担増

      近年の改正は、介護における負担額と家計に逆説的な関係が生じている、といえるかもしれません。「貯める・所得を増やす」という備えを厚くすることで、負担割合が増してしまうというジレンマが起こり得ます。残念ながら、この傾向は今後ますます厳しくなると見込まれます。

      また、介護の自己負担割合や自己負担限額の基準は額面通りの収入ではなく、控除や家族構成を考慮し、調整を加えた「所得」で判断されます。個人的事情に対する配慮があるのは適切ですね。しかしこの配慮も、今後はより厳しくなる懸念があります。介護保険法の改正動向は定期的に行われるため、動向を注視しておきたいです。

      まとめ

      介護保険法の創設当時と比較し、サービス利用者は約3倍に増加しました。今後も被介護者は増加が見込まれる中、介護の経済的負担はより多くを求められるでしょう。所得が大きいと負担も大きくなるかもしれませんが、そのために所得を抑えるのでは健全ではありません。

      負担が大きくなっても耐えられるだけの所得や資産を持っておくのが理想です。そして、介護保険の内容を把握しておくことも大切です。法改正があるとしてもその土台になるのは現状の制度です。まずは今の制度を理解しておきましょう。









      ABOUTこの記事をかいた人

      横山 晴美

      AFP/住宅ローンアドバイザー。 企業に属さない独立FP。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホームの購入相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案する。安心して住宅を購入できるだけでなく、家計の課題も解決できるとの声を頂いている。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。