高額医療費制度とは!?申請方法・手続き・法改正まで徹底解説!







1カ月に所定額以上の医療費がかかった場合、「自己負担限度額」が設定され、自己負担限度額以上の医療費は支払わなくてもいいという制度が高額療養費です。病気やケガの時、とても役に立つこの制度ですが、細かい内容はあまり知られてはいません。制度の詳細をお伝えするとともに、申請方法や手続きの流れを確認しましょう。また、2017年から2018年にかけて、高額医療費負担制度の自己負担額の引き上げが検討されていますのでその点も解説を行います。

高額療養費制度とは?

高額医療費制度制度は健康保険制度のひとつです。短期間で多大な医療費がかかった時の負担軽減を目的としています。保険に加入している被保険者の世帯(被保険者個人ではなく世帯であることに注意!)の所得金額に応じて、月内で一定額以上の医療費がかかった場合に、一部医療費が払い戻される制度です。急な病気などで突然医療費がかかってしまった場合と、あらかじめ(予定されていた手術などで)医療費が必要になることがわかっている場合によって手続きの方法が異なります。(具体的な利用方法については後述します)

対象になる方と自己負担限度額

高額療養費の自己負担額は、被保険者が「70歳未満」か「70歳以上75歳未満」かによって異なります。もともと適用されていた限度額区分が平成27年1月より変更され、細分化されました。75歳以上の方については後期高齢者医療制度との兼ね合いがポイントです。

被保険者が70歳未満の場合

所得区分1か月の自己負担額多数該当

ア 標準報酬月額83万以上

(報酬月額81万円以上)

25万2600円+(総医療費-84万2千円)×1%14万100円

イ 標準報酬月額53万~79万

(報酬月額51万5千円以上81万円未満)

16万7400円+(総医療費-55万8千円)×1%9万3000円

ウ 標準報酬月額28万~50万

(報酬月額27万円以上51万5千円未満)

8万100円+(総医療費-26万7千円)×1%

4万4400円

エ 標準報酬月額26万以下

(報酬月額27万円未満)

5万7600円

4万4400円

オ 低所得者:

被保険者が市区町民税の非課税者等

3万5400円2万4600円

被保険者が70歳以上75歳未満の場合

被保険者の所得区分自己負担限度額
外来(個人)外来・入院(世帯)

ア>現役並み所得者

(標準報酬月額28万円以上かつ高齢者受給者証の負担割合3割)

4万4400円8万100円+(総医療費-26万7千円)×1%
「多数該当4万4400円」
イ>一般所得者(ア・ウ以外)1万2000円4万4400円
ウ>低所得者①(※1)8,000円2万4600円
ウ>低取得者②(※2)1万5000円

※1 被保険者が市区町村民税の非課税者等

※2 被保険者とその扶養家族すべての方の収入から必要経費・控除額を除いたあとの所得がない方

表中にある多数該当とは、既に3回高額療養制度を利用しており、4回の利用時に適用される限度額のことです。通常より更に引き下げられます。

「標準報酬月額」と「報酬月額」の違い

類似した2つの言葉の違いを説明します。報酬月額とは「社会保険料の算定」に用いる額で、毎年4月から6月に受け取る給料で決まります。上記の表からわかるように、〇〇円以上〇〇円未満という区分けをされています。この社会保障を適用する区分けのことを「標準報酬月額」と呼びます。なお、この標準報酬額は都道府県によって異なります。

<ケーススタディ>東京都在勤のAさんの場合

ケーススタディを見てみましょう。4月の月給が額面で25万円、残業した5月と6月が28万円のAさんがいます。この場合、4月―6月の平均額は27万円。東京都の一覧表に当てはめると、健康保険が21号、公的年金が18号となり。報酬月額は27万~29万円。標準報酬は28万円となります。

後期高齢者医療制度と高額療養費制度との関係

次に75歳以上の方の場合。まだまだ現役で働いている方も多いかもしれません。75歳以上は、「後期高齢者医療制度」が適用されます。高額療養費制度との関係を確認しましょう。

後期高齢者医療制度では、被保険者の所得によって医療費の3割(現役並み所得者)、もしくは1割を被保険者が負担します。この自己負担額が前項の「70歳から75歳未満の限度額」を超えた場合は、超過分に対し高額療養費制度が適用され、後日払い戻される仕組みです。以前は老人保健制度という制度で、被保険者の自費負担はありませんでしたが、現役世代との保障均等化のため、平成20(2008年)から自己負担分が規定されました。

被保険者の所得区分

後期高齢者医療制度における

自己負担率

自己負担限度額
外来(個人)外来・入院(世帯)

ア>現役並み所得者

(標準報酬月額28万円以上かつ高齢者受給者証の負担割合3割)

3割(※1)4万4400円8万100円+(総医療費-26万7千円)×1%「多数該当4万4400円」
イ>一般所得者(ア・ウ以外)1割1万2000円4万4400円
ウ>低所得者①8,000円2万4600円
ウ>低取得者② 1万5000円

(※1) 被保険者本人と70歳以上の家族(65歳以上で後期高齢者医療の障害認定を受けている方も含む)の方の収入合計額が以下の基準に満たない場合の自己負担額は2割の自己負担となります。

単独世帯…年収383万円
夫婦2人世帯の場合…年収520万円

かつ、昭和19年4月1日以前に生まれた方は自己負担率1割となります。

申請方法と手続きの流れ

高額療養費の申請方法は2種類です。

医療費を先に支払い、後から払い戻す方法

  • 医療費を自己負担で先に支払う(健康保険制度を利用すると3割)
  • 医療機関の利用後、高額療養費支給申請書を提出
  • 高額医療費分の払戻しを受ける

先に医療費を自己負担で払っておき、あとから「払い戻してもらう」方法です。健康保険高額療養費支給申請書という書類を提出します。そのため、まずは自己負担での医療費支払が必要になります

先に高額療養費の利用を申請し、自己負担分を抑える

  • 健康保険組合(協会)に医療費が高額になる旨を申請
  • 限度額認定証を受け取る
  • 受診する利用期間に限度額認定証を提出
  • 自己負担限度額分を支払う

一方で高額療養費を適用できることがあらかじめ分かっている場合は、先に申請のうえ「限度額認定証」を取得し、こちらを医療機関に提出する方法をお勧めします。この方法では、当初からの自己負担分の医療費だけで医療機関を受診できます。

突然の病気やケガの場合は前者の手続きを踏むしかありませんが、あらかじめ手術や入院日程がわかっている場合は、限度額認定証の発行を申請し、初診時に医療機関に提出することで自己負担のみならず、一時的な「出金」を抑えることができます。そうはいっても手術直前は精神的に不安定で気が回らなくなってしまうため、平時のうちから手続き方法などを確認しておくようにしましょう。

高額療養費の受取には3カ月もの時間がかかる

高額療養費の申請がなされたあとの審査は、レセプト(診療報酬明細書)にもとづいて行われるため、平均3カ月以上の時間がかかります。体調を直さなければいけない時に、金銭的な不安はできるだけ負いたくはないもの。

そのため、時間の余裕があるならば、なるべく限度額認定証を発行し、医療費の出金に備えるようにしましょう。健康保険制度ではこの間、医療機関に支払う一時金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸し付けする「高額医療費貸付制度」もありますので、必要に応じて利用するようにしましょう。

限度額認定書の詳しい説明は、限度額適用認定証の申請方法・書き方・更新手続きを解説をご参照ください。

高額医療費の負担が増える!?2017年法改正の流れ

2017年の8月から2018年にかけて、主に「70歳以上の高額療養費」の自己負担率が拡大します。つまり被保険者にとって医療費の負担が重くなるということです。2016年末の段階で、高額療養費制度の利用段階で「住民税を支払っている人」の負担が一律で重くなることが決まっています。

改正後の高額療養費 自己負担上限額※医療費総額100万円の場合

被保険者の所得区分自己負担限度額
外来(個人)外来・入院(世帯)

ア>現役並み所得者①

年収1160万円以上

25万4180円←4万4400円

25万4180円←8万7430円

※計算式8万100円+(総医療費-26万7千円)×1%

「多数該当4万4400円」

ア>現役並み所得者②

年収770万円~1160万円

17万1820円←4万4400円

17万1820円←8万7430円

※計算式8万100円+(総医療費-26万7千円)×1%

「多数該当4万4400円」

ア>現役並み所得者③

年収370万円~770万円

8万7430円←4万4400円8万7430円
イ>一般所得者(ア・ウ以外)

2万4600円←1万2000円

(5万7600円になる案もあり)

5万7600円←4万4400円
ウ>低所得者①(※1)1万5000円←8,000円2万4600円据置
ウ>低取得者②(※2)1万円←8,000円1万5000円据置

法改正の背景

高額療養費は医療機関受診時の自己負担に上限を設ける、いわば「庶民の味方」です。なぜ上限額を大幅に上げる議論が出てきているのでしょうか。それは、世代によって高額療養費制度から享受する保障に不公平感があるためといわれています。

現在の70歳以上に対して手厚い保障を提供するのは大切です。ただ、その保障を継続したがために、現在も健康保険に加入している現役世代の保障が継続できなくなるのは避けなければなりません。そのための「世代の均等化」を目的として今回の改正が行われたと考えられています。

 気をつけなければならないのは、この改正案はまだ「議論中」であることです。細かい負担額や年齢による区分などは、決定事項ではないことに留意すべき。ただ、日本の長寿化と社会保障費の圧迫にともない、70歳以上の医療費負担環境が今後「厳しくなって」いくことは間違いないでしょう。

法改正における生活への影響

前項の医療費負担を見ると、概ね3倍近くになってしまいます。現在の負担額との差はそのまま、老後生活を「圧迫」するものと考えられます。このまま法改正が国会に提出されたとしても、与野党で激しい議論になることは明らかでしょう。ただ、将来の世代に対する保障も大切です。どのように方向性を定めていくか、賛成・反対ではない仕組みづくりが求められています。

高額療養費制度があれば医療保険は不要?

高額療養費の説明をするとよく聞かれるのが、「万が一のときに高額療養費を利用できるのであれば、民間の医療保険は必要ないのか」という質問です。これは、半分正解で半分誤解というところでしょうか。

確かに高額療養費の知識が十分にあれば、いざというときの医療費は大幅に抑えることできます。ただ、前項にてお伝えした通り、高額療養費の支給には3カ月以上の時間がかかる点や、突然の病気には限度額適用認定証が間に合わない可能性があるなど、高額療養費頼みは少し危険。

その時に、民間の医療保険は申請して数週間で保険金を受け取ることができるなど、その迅速性には目を見張るものがあります。賢く利用するようにしましょう。

高額療養費は月頭から月末まで

また、高額療養費のデメリットに、「月頭から月末までの医療費をカウント」という特徴があります。

たとえば20日に急患で運ばれ、翌月の5日まで入院したAさん。

  • 入院月の月末までの11日間(20日から31日まで)が、まず高額療養費の対象となり自己負担限度額が算出されます。
  • 翌月5日までは「新しい高額療養費の対象月」として日程がカウントされます。
  • 1日から16日までの15日間同様に入院したときと比べて倍の、自己負担上限額が2カ月分必要になります。

すべて自己負担(通常の健康診断制度を使って3割負担)よりは医療費を抑えられるものの、これは大きな負担です。この時に医療保険を上手に活用して、高額療養費制度を「補完」するようにしましょう。

高額療養費はとても便利ですが、知識が不足していると制度メリットを十分に享受できない制度でもあります。事前に特徴をしっかりと確認し、準備を徹底するようにしましょう。









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ABOUTこの記事をかいた人

工藤 崇

株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいとお考えの個人、 FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居企業。執筆実績多数。東京都千代田区大手町。