老後の貯蓄1000万円で生活する方法をシミュレーション







老後の必要な貯蓄は夫婦2人で5,000万円とも、7,000万円ともいわれています。ただ、現役世代は住宅ローンや教育費など多くの支出があり、なかなか貯蓄はありません。そこで考えたいのは、「最低いくらあれば生活できるのか」という視点です。現役世代にあまりお金を貯められなかったAさんの老後計画から、老後の貯蓄1,000万円で生活する方法をシミュレーションしましょう。

Aさんを紹介
今回シミュレーションするAさんの属性について紹介します。

年齢年齢58歳
居住地東京都北区に築20年3LDKの一戸建てを所有。住宅ローン1500万円は退職金で完済予定
家族構成同じ年の妻と大学3年生の息子(一人暮らし中)
貯蓄現金貯蓄900万と定期保険の解約返戻金100万円の合わせて1000万円の貯蓄を保有

Aさんの収支の状況

Aさんは58歳のため、現役世代です。毎年会社から手取り年収600万円を受け取っています。60歳の誕生日月に定年退職を迎え、その後は、高齢者の継続雇用制度を活用し同じ職場で引き続き働く予定。

現在の年収600万円
60歳から65歳までの年収高齢者再雇用制度により年収350万円で継続雇用
現在の支出600万円 
60歳から65歳までの支出教育費が無くなるのでおよそ350万円程度の支出 

Aさんの支出の内訳

現在の家計では、子どもの教育費や自身の生活費に充当するとほぼ余剰金は生まれません。また、60歳以降で教育費が発生しなくなっても収入が下がることから貯蓄に回せるお金は生まれないと想定。

食費96万円
教育費(仕送り込み)300万円
自動車税・ガソリン20万円
保険料負担5万円
その他の支出・雑費179万円

老後の収入を把握する

65歳からAさんは公的年金を受け取ることができます。公的年金は主に自営業の人が加入する国民年金と、主に会社員の人が加入する厚生年金に分かれています。厚生年金の加入者は、国民年金も同時に加入し、追加で厚生年金に加入していることになります。

公的年金を受けるためには、40年(240カ月)保険料を支払い続けていることが必要です。2016年、年金法が改正され、この40年が10年に短縮化されました。もちろん40年納付している人と10年「しか」保険料を納めていない人が同じ年金額を受け取る制度にはならず、あくまで年金を受け取る資格の有無が決まる保険料納付期間を定める部分の改正です。

(1)国民年金

Aさんが40年間保険料を納め続けていたとすると、65歳から受け取ることのできる金額は年額779,300円(平成29年4月~)。年金保険料の納付において、全額免除や半額免除といった特例措置を使っていると、満額が目減りをする計算になります。

(2)厚生年金

老齢基礎年金の受給権利があり、厚生年金保険料を1カ月でも納付した人は、65歳から厚生年金を受給する権利が生じます。なおAさんは新卒以来会社員歴のみのため、奥様は3号被保険者として計算します。

厚生年金の受取金額の計算式

平均標準報酬月額×「7.125/1000~9.5/1000(生年月日に応じる)」×平成15年3月までの被保険者月数 + 平均標準報酬月額×「5.481/1000~7.308/1000(生年月日に応じる)」×平成15年4月以降の被保険者月数

Aさんの厚生年金受取額は約23万円と見込まれる

厚生年金の受取額はまさに人それぞれです。では平均的な厚生年金の加入者は、どれくらいの厚生年金保険料を受け取っているのでしょうか。厚生労働省の統計によると、厚生年金の平均受取額は約14万5,000円。

また、奥様は第3号被保険者として年金を受け取れますが、昭和61年3月までの任意加入期間に専業主婦だった期間は年金額の計算には含まれません。Aさんの奥様は、Aさんの受給額の60%として計算しています。そのため2人分で約23万円。ここに国民年金分も含みます。90歳まで長生きしたとすると、総額は6900万円となります(23万×12(年)×25(65歳からの25年間)。

夫婦で月23万円を高いと取るか低いととるかは人によって分かれます。会社員として長いキャリアがある場合はこのほかに退職金も受け取れますし、終身保険の保険料も期待できるでしょう。

老後の支出を把握する

老後の生活はどれくらいの費用は必要になものなのか。最低限必要な老後の生活費は月あたり夫婦で28万円と算出されています。

65歳から90歳までの25年間で単純計算をすると約8400万円(28万円×12×25)の生活費が必要になる計算です。この8400万円のうち6900万円は年金収入で用意ができますので不足する1500万円を老後の貯蓄として確保する必要があります。

しかしながらAさんは、現金貯金900万円に加え、保険解約返戻金100万円の合わせて1000万円しか老後の貯蓄がありません。そのため、Aさん夫婦が老後の貯蓄として用意できた1000万円で生活するための方法をお伝えします。

Aさんの老後の貯蓄は500万円足りないだけ

一見、1000万円で生活する必要があると思うと難しいのではないか?と思ってしまいそうですが、老後に必要な貯蓄1500万円の内、1000万円は用意できており不足する金額は500万円分です。この500万円を節約ができれば良いということです。

さらにこの500万円を25年間で割ると年間20万円の節約、月単位にすれば1.6万程度。なんとかなりそうな気がしてきますね。それでは、Aさんの老後の生活費を削減し、老後の貯蓄1000万円で生活するポイントをお伝えします。

老後の貯蓄1000万円で生活する方法(Aさん編)

Aさんが老後の貯蓄1000万円で生活を送るために必要な3つの方法を紹介します。食事を摂らない、などの非現実的で不健康なものは除いて考えたいと思います。

Aさんが貯蓄1000万円で生活するポイント

  1. 自動車を手放す(自動車税・ガソリン・車検代抑制で年平均20万円の削減)
  2. 健康維持を心掛け、医療費の自己負担分5万円を削減
  3. 介護サービスの利用を最小限にする

自動車を手放す(自動車税・ガソリン・車検代抑制で年平均20万円の削減)

老後にネックになってくるのは自動車です。自動車を所有しているとガソリン代や自動車税のほか、定期的に車検代も必要となり大きな負担となります。子どもたちも独立し送迎の必要などがなくなったら、自動車がなければ生活が困る地域ではない限り思い切って「売ってしまう」ことも方法のひとつ。

老後の課題である運動不足も、車を売却して徒歩の時間が増えれば必然的に増えるため、一石二鳥でもあります。また最近は必要なときだけ車を借りるカーシェアリングも一般的になり、参入業者が増えて活発になってきました。自家用車を所有していなくても生活できる場所は今後更に増えていくことでしょう。

健康維持を心掛け、医療費の自己負担分5万円を削減

老後になると医療費が安くなる、というイメージはありますが、実際には健康保険に加入していて支払う医療費の1割(65歳から74歳:前期高齢者制度)も大きな負担になります。

利用回数を減らすには、何よりも風邪を引かないこと。風は万病のもと、とも言われます。そうはいっても風邪を引かないのは難しいため、発生頻度を減らすことが大事です。そのためには日々の健康維持や運動が大切ですが、暴飲暴食を抑えることで食費を抑える効果もあります。

また、人間ドックなどの検査費は負担感も強いのですが、軽視して入院ともなれば何倍の医療費が必要となるため気をつけましょう。厚生労働省の統計によると、65歳以上の医療費平均額は年額で約44万5000円です。Aさんは1割の約5万円が自己負担となり、健康維持によって削減できます。

介護サービスの利用を最小限にする

介護サービスの利用料も大きな出費になります。65歳以上の人は介護保険でいうところの第1号被保険者となり、介護保険は要介護認定と年収によって1割もしくは2割の自己負担となります。

この自己負担も医療費と同様、重なるととても負担感の強いもの。ただ、老化は人間にとって避けられないものです。できるのは老化を「遅らせる」こと。医療費と同様、健康維持と適度な運動で介護サービスの利用回数を減らす習慣をつけましょう。

住宅を担保にリバースモーゲージを借りることも選択肢

上記の節約を徹底すれば夫婦の年金収入もあり、なんとか貯蓄1,000万円で暮らせなくもないでしょう。とはいっても生活費を削減するだけの老後の生活は気持ちの張り合いもないもの。また、介護や医療費用子どもの結婚資金など突発的な支出も想定する必要があります。

そこで、リバースモーゲージの活用をお勧めします。リバースモーゲージは、現在住んでいる住宅を担保に老後資金を借り入れし、亡くなった時には住宅を引き渡すことによって借入金の返済とします。取り扱っている金融機関ごとに様々な商品があり、債務者が亡くなった後に遺された配偶者に対しても引き渡しを一定期間猶予する商品もあります。

Aさんの場合も、58歳の現時点で「(いま住んでいる)住宅ならどれくらいの資金を借りることができるのか」という査定を行うことができます。リバースモーゲージによる査定額が把握できてから、他の節約術を考えるのも賢い方法といえるでしょう。

まとめ

老後の貯蓄1000万円で生活するには、生活の切り詰めはもちろんですが、日々の老後生活において「お金がかからないようにする」ことが何よりも大切。そのためには健康維持など、時間をかけた準備が欠かせません。早いうちから準備をして、老後資金を抑制できるよう心がけていきましょう。









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ABOUTこの記事をかいた人

工藤 崇

株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいとお考えの個人、 FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居企業。執筆実績多数。東京都千代田区大手町。