遺族年金18億円の過払い|受給資格を失った1000人に支給

遺族年金は一家の大黒柱を亡くした遺族の生活を支える非常に重要な年金制度で、536万人を超える受給者がおります。

遺族年金の目的は、残された配偶者や子供を支える制度であることから、再婚した場合や子供が18歳(障害者等級1級または2級の場合は20歳)を超えた場合は受給資格を失うこととなっております。

しかしながら、この遺族年金の受給資格を失った方おおよそ1000人に18億円も今春までに過払いしていることが会計検査院の報告で明らかになりました。

なぜ、このような問題が起きたのか?遺族年金の過払い問題について解説を行いたいと思います。

1万人を対象にサンプル調査を実施

まず、今回の遺族年金の過払い問題は、遺族年金受給者全員に実施された訳ではなく、遺族年金受給者の多い地域200の年金事務所を選定し1万人のサンプル調査を行なった結果となります。

したがって、実際の過払い金は今回の報告である18億円よりも多いのではないか。と言われていますが、今回のような大規模な過払い関する指摘は初めてとなっています。

年金の支給に関する問題は、先月9月13日に振替加算の支給漏れ600億円が報告されたばかりであることから問題が続いている状態です。振替加算の支給漏れについては「振替加算とは?600億の年金未払いが発覚した制度を徹底解説」をご参照ください。

8億円は時効が過ぎており返還請求ができない

遺族年金には5年の時効が設定されており、今回の調査結果では18億円の内、8億円はすでに時効が過ぎており返還請求ができない状態にあります。

今後、この過払い金に関してどのような対応を日本年金機構が取るのかは注視する必要がありますが、本来は遺族年金の受給資格を失った場合は受給者側が届けをする必要があるのです。

遺族年金の受給資格を失った場合は「失権届」が必要

遺族年金は冒頭でもお伝えしましたが、再婚をした場合や子供の年齢が18歳(障害者等級1級または2級の子供の場合は20歳)を超えた場合、遺族年金の受給資格を失います。

その際、喪失日の翌日から10日または14日以内に「失権届」を提出する必要があるのです。

今回の調査では、過払いをした1000人の内、900人がこの「失権届」の提出が期日を過ぎていたとのことです、中には50年も遅れて提出した方もいるとのこと。

さらに20人に関しては、受給資格を失ったにも関わらず「失権届」を提出しておらず、その過払い額は1億6,000万円にものぼります。

遺族年金の過払いに至った原因

では、なぜこのような問題が起きるのでしょう。再婚や子供年齢であれば失権届の提出状況を、住民基本台帳ネットワークや戸籍情報と照合すれば防げそうな問題です。

会計調査院の報告では、遺族年金の点検作業は書類不備の確認など外形的な確認しか行なっておらず上記の照合作業を行なっていなかったとのことです。

なんとも、ずさんな管理体制に不信感ばかりが募る状況と言えます。

会計調査院は厚生労働省と日本年金機構に改善指示

今回の問題を受け、会計調査院は過払い防止策を取るように厚生労働省に指示をしたことに加え、回収可能な過払い分の返還手続きを日本年金機構にそれぞれ対応するように指導を行いました。

先般の振替加算の支給漏れがあったばかりの状況で上記のような改善策だけでは到底改善できるように見えないと言えるでしょう。

何のための住民基本台帳ネットワークや戸籍情報なのか?マイナンバーの導入なのか?と疑問ばかりが残る結果に改めて行政に改善を要望したいところです。

年金制度は複雑怪奇

また、今回の件は、厚生労働省や日本年金機構の問題だけでなく、受給者側の問題もあるのではないか?と考えることが出来るでしょう。

そもそも、遺族年金の受給資格を失った場合は受給者側から「失権届」を提出する必要にがあるにも関わらず提出していない。というの決まりに反しているということです。不正受給とも言えるかもしれません。

ただし、問題は「意図して失権届」の提出をしなかったのか?という点になるでしょう。

確かに知らなかったでは済まされない問題かもしれませんが、一方で年金制度は非常に複雑怪奇で正しく周知されていないというケースもあるかもしれません。

行政の改善に加えて、受給者側の知識も同時に上げていく対策が必要に感じます。

年金制度を理解させる工夫が必要

年金制度は日本年金機構のサイトを確認することで、制度の詳しい情報が記載されていますが、馴染みの薄い言葉で記載されており初めて見る方は理解が難しい。という側面があります。

そのため、もっと分かりやすく伝える工夫をオンライン、オフラインとも対策を講じることで1人でも多くの方に年金制度を知ってもらう必要があると言えます。

企業に置き換えればそこに資金だけでなく柔軟なアイディアで1人でも自社のブランドを知ってもらう努力をしている訳ですので見習うべきところは多いでしょう。

遺族年金過払いのまとめ

遺族年金の過払い問題について解説を行いました。度重なる年金の問題に不信感が募る方も多いと思います。我々はその点も含めて「自分の年金は自分で守る」という意識を持つことが必要と言えます。

「年金は期待にできない。だから納付もしない」と考えるのは未納による強制徴収のリスクもあることから避けるべきでしょう。

そのため、滞納するのではなくしっかり守る。という意識で年金制度を理解することが重要です。

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