年金の受け取りは一般的に65歳から開始されると多くの人は認識していることだと思いますが、実際は早い人で60歳から受け取ることが可能になります。
では、「自分自身は何歳で年金を受け取れるのか?」「そもそも年金を受け取るためにはどのような手続きが必要なのか?」気になることは多いと言えます。
そこで今回は、初めて年金を受け取る人に向けて手続き方法と注意点について解説を行いたいと思います。
目次
年金はいつから受け取れる?
年金は65歳から受給できると認識している人も多いと思いますが、実際に65歳から年金が受け取れる人は、男性で昭和36年4月2日以降生まれ、女性で昭和41年4月2日以降に生まれた人が対象になります。
それ以前に生まれた人は、年金の受給年齢が60歳から65歳に引き上げられた際に制度化された「特別支給の老齢厚生年金」に該当している可能性があります。
特別支給の老齢厚生年金に該当している場合は、以下の図解の通り、受給年齢が65歳よりも早く受け取りが可能になりますので、詳しくは「特別支給の老齢厚生年金とは|制度を理解し上手に活用するための知識」をご参照ください。

年金の受給年齢に達したら請求が必要
年金の受給年齢に達したからと行っても自動的に年金が振り込みされる訳ではありません。受給年齢に達した場合は、日本年金機構に「裁定請求」を行う必要があります。
「裁定請求」とは、簡単にお伝えすれば「年金を支給してください。という申し出みたいなもの」だと理解しておくと良いでしょう。
平成17年10月より、これまでの年金加入記録が記載された「裁定請求書」をご自宅に郵送されてきますので裁定請求書が届き次第、必要事項を記入し提出するようにしましょう。
あくまで、裁定請求書を返送した人でなければ年金は受け取れませんので請求漏れが無いように十分に注意したいところです。
年金を受け取る前に準備しておくこと
裁定請求書が自宅に届くタイミングは、年金受給年齢に達する日の前日以降になります。例えば、12月15日に65歳を迎える場合は、12月14日以降に裁定請求書が届くことになります。
さて、この裁定請求書が届くまでに事前に準備しておきたいのが「年金加入記録の確認」になります。
「え?裁定請求書に加入記録が記載されているのでは?」と疑問に感じた人も多いでしょうが、日本年金機構の不祥事が度々報道されている状況において、年金の加入記録が正しいとが限らないと言えます。
そのため、「自分の年金は自分で守る」ことが非常に重要になりますので、年金の加入記録の確認作業を行うようにしましょう。
また、送付された裁定請求書に加入記録が記載されていない人は、自分で書き込み作業が発生することから尚更準備をしておいた方が良いと言えます。
注意する人 | 準備ポイント |
転職回数が多い人 | 過去勤めていた会社の年金記録が漏れないように洗い出しを行いましょう。 |
年金手帳が複数枚ある人 | 複数の手帳も全て合算されますので1つにまとめておきましょう。 |
氏名が変わった人 | 過去の氏名と現在の氏名で別人として登録されている可能性もあるので旧姓の加入記録は変更をしておきましょう。 |
上記に該当しない場合も、記載漏れが発生している可能性はありますので必ずチェックするようにしましょう。
年金の受け取り請求には期限がある?
さて、裁定請求書が届き、記載内容も問題無い。とした場合、いつまでに裁定請求書を返送する必要があるのか?期限はあるのか?気になるポイントになります。
結論、早く年金を受け取りしたいならば早く返送した方が良い。と言うことになります。
年金の受け取りが開始されるのは裁定請求書を返送してからおおよそ3ヶ月後になりますので、返送が遅れるとその分だけ受け取り開始時期が遅れてしまいます。
また、年金の受け取りには5年の時効があります。そのため、5年以内であれば過去分をまとめて請求することが可能になりますが、5年を過ぎると受け取りが出来なくなる点に注意が必要です。
年金の受け取り請求をしても支給されない場合
裁定請求書を日本年金機構に提出すると3ヶ月後程度に「年金証書」が送付され、そこから1ヶ月から2ヶ月後に、銀行口座に年金の振り込みが開始されます。
ただし、中には年金の受け取りが出来ない人もいる点に注意が必要です。
失業保険の受給手続きを申請している場合
失業保険の受給手続きをしている人は、年金を受け取ることが出来ません。
この理由に、失業保険はこれから就労する人の生活を支援する目的で支給されるのですが、年金は老後の生活を支援するために支給されるお金であるため、双方の支給目的が真逆の関係にあると言えます。
そのため、失業保険の受給申請をしている人は年金の受け取りが出来ない点に注意しましょう。詳しくは「失業保険と年金は同時に受給できる?65歳まで退職し併給する方法を解説」をご参照ください。
一定の収入を超えている場合
年金の受け取りは、現在の収入によって減額もしくは支給停止となる場合があります。これを、「在職老齢年金」と呼び、一定以上の収入を受け取っている場合は、年金支給額の調整がされてしまうのです。
- 65歳未満の人は老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円以上
- 65歳以上の人は老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が46万円以上
65歳未満の老齢厚生年金の基本月額とは:加給年金を除いた特別支給の老齢厚生年金の月額
65歳以上の老齢厚生年金の基本月額とは:加給年金を除いた老齢厚生年金の月額
総報酬月額相当額とは:その月の標準報酬月額と直近1年間の標準賞与額を12で割った金額
年金の減額基準については「年金減額|給与が64歳までは28万円・65歳以上は46万円が基準」にて詳しく解説をしておりますが、以下に減額の計算式を記載しておりますのでご確認ください。
65歳未満の人で年金が減額される基準
基本月額 + 総報酬月額相当額 | 総報酬月額 相当額 | 基本 月額 | 減額計算式(在職老齢年金的用語の年金支給額) |
28万円以下 | – | – | 全額支給 |
28万円以上 | 46万円以下 | 28万円以下 | 基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2 |
46万円以下 | 28万円以上 | 基本月額-総報酬月額相当額÷2 | |
46万円以上 | 28万円以下 | 基本月額-{(46万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-46万円)} | |
46万円以上 | 28万円以上 | 基本月額-{46万円÷2+(総報酬月額相当額-46万円)} |
65歳以上の人で年金が減額される基準
基本月額 + 総報酬月額相当額 | 減額計算式(在職老齢年金的用語の年金支給額) |
46万円以下 | 全額支給 |
46万円以上 | 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-46万円)÷2 |
まとめ
年金受給年齢を迎え、初めて年金を受け取る時に知っておくべき情報を解説させて頂きました。
年金を受け取るためには、裁定請求書を日本年金機構に返送する必要がありますが、返送期限は「早く年金を受け取りたいならば速やかに返送すべし」と覚えておきましょう。
万が一、裁定請求書の返送を失念したいた場合も、5年以内であれば未請求分の年金も受給することが可能になりますので必ず請求するようにしましょう。