傷病手当金は病気や怪我によって就労不能な状態になってしまった人の生活を支援する給付金になります。そのため、毎月いくら支給されるかをしっかりと把握することは生きていく上で非常に重要と言えます。
その際、「傷病手当金は一体いくら受給できるのだろうか?」「賞与は計算に入れるのか?」「税金は引かれるのか?」など疑問に感じる人も多いことだと思います。
そこで今回は、傷病手当金の計算方法について解説したいと思います。また、最後に傷病手当金の簡易計算シートをエクセル形式でダウンロード可能になりますのでご活用ください。
目次
傷病手当金の計算式
早速、傷病手当金の計算式からお伝えしたいと思います。
- 傷病手当金支給前の過去12ヶ月分の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3=支給日額
さて、ここで1つ問題となるのが、「標準報酬月額」とは何か?という点になると思います。
標準報酬月額とは、基本給、残業手当、住宅手当、通勤手当、家族手当など「年3回以下の賞与を除いた」報酬になります。この標準報酬月額は4月、5月、6月の合計報酬を3で割った金額と決められております。
このルールに沿って決められた標準報酬月額は「定時決定」と呼ばれ、該当する年の9月から翌年の8月まで使用することになります。
標準報酬月額の計算方法
標準報酬月額がどのように計算されるのか?なんとなくでもイメージが掴めたと思いますが、ここからより具体的な標準報酬月額の計算方法をお伝えしたいと思います。
- 4月、5月、6月の給料の合計を算出し3で割る
- 標準報酬月額の等級表に当てはめる
標準報酬月額は31等級に分かれており、①で算出した金額がどの等級に当てはまるのかを確認することで正確な標準報酬月額を算出することが可能です。
それでは、実際に計算例を活用して理解を深めていきたいと思います。
前提条件として、4月28万円、5月30万円、6月32万円の給料を受け取っているとします。
- (28万+30万+32万) ÷ 3=30万円
- 等級表に当てはめると19等級「29万円〜31万円」に該当する
- 従って、標準報酬月額は30万円になる
等級表は以下をご活用ください。
等級 | 標準報酬月額 | 報酬月額の範囲 | ||
1等級 | ¥88,000 | 〜 | ¥93,000 | |
2等級 | ¥98,000 | ¥93,000 | 〜 | ¥101,000 |
3等級 | ¥104,000 | ¥101,000 | 〜 | ¥107,000 |
4等級 | ¥110,000 | ¥107,000 | 〜 | ¥114,000 |
5等級 | ¥118,000 | ¥114,000 | 〜 | ¥122,000 |
6等級 | ¥126,000 | ¥122,000 | 〜 | ¥130,000 |
7等級 | ¥134,000 | ¥130,000 | 〜 | ¥138,000 |
8等級 | ¥1,420,000 | ¥138,000 | 〜 | ¥146,000 |
9等級 | ¥150,000 | ¥146,000 | 〜 | ¥155,000 |
10等級 | ¥160,000 | ¥155,000 | 〜 | ¥165,000 |
11等級 | ¥170,000 | ¥165,000 | 〜 | ¥175,000 |
12等級 | ¥180,000 | ¥175,000 | 〜 | ¥185,000 |
13等級 | ¥190,000 | ¥185,000 | 〜 | ¥195,000 |
14等級 | ¥200,000 | ¥195,000 | 〜 | ¥210,000 |
15等級 | ¥220,000 | ¥210,000 | 〜 | ¥230,000 |
16等級 | ¥240,000 | ¥230,000 | 〜 | ¥250,000 |
17等級 | ¥260,000 | ¥250,000 | 〜 | ¥270,000 |
18等級 | ¥280,000 | ¥270,000 | 〜 | ¥290,000 |
19等級 | ¥300,000 | ¥290,000 | 〜 | ¥310,000 |
20等級 | ¥320,000 | ¥310,000 | 〜 | ¥330,000 |
21等級 | ¥340,000 | ¥330,000 | 〜 | ¥350,000 |
22等級 | ¥360,000 | ¥350,000 | 〜 | ¥370,000 |
23等級 | ¥380,000 | ¥370,000 | 〜 | ¥395,000 |
24等級 | ¥410,000 | ¥395,000 | 〜 | ¥425,000 |
25等級 | ¥440,000 | ¥425,000 | 〜 | ¥455,000 |
26等級 | ¥470,000 | ¥455,000 | 〜 | ¥485,000 |
27等級 | ¥500,000 | ¥485,000 | 〜 | ¥515,000 |
28等級 | ¥530,000 | ¥515,000 | 〜 | ¥545,000 |
29等級 | ¥560,000 | ¥545,000 | 〜 | ¥575,000 |
30等級 | ¥590,000 | ¥575,000 | 〜 | ¥605,000 |
31等級 | ¥620,000 | ¥605,000 | 〜 |
傷病手当金の計算例
標準報酬月額の計算方法について理解できたところで、傷病手当金が実際にいくら受給できるのか?具体的な計算例で解説をしたいと思います。
- 平成30年2月1日より傷病手当金の支給を開始する場合
まずは、「傷病手当金支給前の過去12ヶ月分の標準報酬月額の平均額 」がいくらになるか確認をしてみましょう。傷病手当金の支給開始は平成30年2月1日になりますので、過去12ヶ月間は「平成29年3月〜平成30年2月」となります。
この期間中は4月、5月、6月に決定される「定時決定」が含まれる期間になりますので「平成29年3月〜平成29年8月」と「平成29年9月〜平成30年2月」で分けて標準報酬月額を算出する必要があります。

平成29年3月から平成29年8月までの標準報酬月額
「平成29年3月〜平成29年8月」の標準報酬月額は「平成28年の4月、5月、6月の報酬」が基準になります。計算を進めるために、ここでは4月28万円、5月30万円、6月32万と仮定したいと思います。
- (28万+30万+32万 )÷ 3=30万
- 19等級「29万円〜31万円」に該当する
- 標準報酬月額は30万円になる
平成29年9月から平成30年2月までの標準報酬月額
「平成29年9月〜平成30年2月」の標準報酬月額は「平成29年の4月、5月、6月の報酬」が基準になります。計算を進めるために、ここでは4月26万円、5月29万円、6月29万と仮定したいと思います。
- (26万+29万+29万 )÷ 3=28万
- 18等級「27万円〜29万円」に該当する
- 標準報酬月額は28万円になる
支給前の過去12ヶ月分の標準報酬月額の平均を計算する
- 平成29年3月〜平成29年8月の標準報酬月額:30万円
- 平成29年9月〜平成30年2月の標準報酬月額:28万円
となることが分かりましたが、次に「傷病手当金支給前の過去12ヶ月分の標準報酬月額の平均額」を計算したいと思います。
- (30万 × 6ヶ月 + 28万 × 6ヶ月) ÷ 12ヶ月 ÷ 30日 × 2/3=6,446円
標準報酬月額を正しく算出することができれば、後は簡単に傷病手当金の日額を算出することが可能になります。協会けんぽでは傷病手当金の早見表も掲載していますのでぜひご活用ください。

引用:協会けんぽ
年4回以上賞与(ボーナス)が支給された場合の計算方法
標準報酬月額は年3回以下の賞与(ボーナス)は計算に組み入れません。しかしながら、4回以上賞与(ボーナス)をもらった場合は、賞与の合計金額を12で割りその金額を4月、5月、6月の報酬に加算する必要があります。
仮に、4回の合計賞与額が84万円だった場合、「84万円 ÷ 12=7万円」となります。
この金額を4月、5月、6月の報酬に加算することになりますので、先ほどの「4月28万円、5月30万円、6月32万」に加算すると「4月35万円、5月37万円、6月39万円」になります。
従って、標準報酬月額は23等級38万円となります。
12ヶ月に満たない場合の計算方法
傷病手当金の計算において「傷病手当金支給前の過去12ヶ月分の標準報酬月額の平均額」が鍵になることはご理解頂けたと思います。
さて、ここで気になる疑問が「12ヶ月も勤務していない場合にどのように標準報酬月額を計算したら良いか」という点です。
この場合以下2つの算出方法においてどちらか低い方が適用されます。
- 傷病手当金支給前に継続した各月の標準報酬月額の平均
- 当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(28万円)
①が仮に10ヶ月間勤務したとして「50万円 × 6ヶ月 + 75万円 × 4ヶ月」だった場合、600万円を10ヵ月で割るので60万円となります。
②は平成28年度の段階で28万円になりますので①と②の低い方である、28万円が標準報酬月額になります。
傷病手当金の手取り額を計算する
傷病手当金を受給中でも残念ながら「健康保険料、厚生年金、住民税」の支払い義務があります。従って、実際に傷病手当金が支給されても全額を使用することは出来ません。
そこで傷病手当金の手取りがいくらになるのかも計算してみましょう。
- 標準報酬月額28万円
- 傷病手当金の支給日額:6,220円(30日休業したとすると186,600円)
- 年齢:32歳
- 住所:東京都
健康保険料と厚生年金保険料の合計は39,480円になります。
健康保険料 | 13,860円 |
厚生年金保険料 | 25,620円 |
次に住民税ですがこちらについては前年所得によって納付額が決まりますので、ここでは、1.2万円と仮定したいと思います。
- 188,660円 – (39,480円+12,000円)=137,180円
まとめ|傷病手当金の計算用エクセル
傷病手当金の計算方法について解説を行いました。
傷病手当金を計算するには「標準報酬月額」が重要な鍵となりますが、今回ご紹介した計算をいちいち行うのは非常に面倒。という方に向けて、以下より傷病手当金の計算用エクセルをダウンロード頂けます。