【老後の相談室vol.1】老後資金を3,000万円貯めたが不安。5,000万円まで貯金したいのですが何か方法あるの?

相談者Aさん(男性)の相談内容
現在50歳です。老後資金として、現在3,000万円を確保しました。定年までの15年で5,000万円用意することができると思っています。これだけあれば充分かな、と思う一方で、介護や病気など想定外の事態に備えることができるのか不安です。私のようなケースで気を付ける点は何でしょか?

家族構成はAさんと妻の2人で自宅に暮らしています。娘さんが1人いますが、既に嫁いで夫の両親と同居中です。Aさんは夫婦2人の生活に不安を抱いて家計の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)のところへやって来ました。

現金を主とした資産形成のリスクは

FP
老後に備えておくべきことや、注意点を知りたいということですね。まず、現在3,000万円を確保されているという点、これは素晴らしいと思います。内訳をもう少し詳しく教えていただけますか?
Aさん
普通預金が800万円、定期預金が2,000万円、あとは株が200万円くらいあったはずですが、最近見ていないので少し価格の上限があるかもしれません
FP
ほぼ現金ということですね。株も保有されていますが、これは日本株ですか?
Aさん
はい、そうです。何か問題があるのでしょうか?
FP
問題、というわけではないですが、資産が『円』と『日本株』に限定されていることは若干リスクになります
Aさん
どうしてですか?
FP
まず、資産のほぼすべて預貯金であるリスクから説明します。物価が安定している日本ではあまり意識しませんが、預貯金にはインフレリスクというものがあります。インフレとは、物やサービスの値段が高くなることです。Aさん、インフレが起こると預貯金の価値が下がることをご存知ですか
Aさん
どういうことでしょう
FP
仮にここに10万円の机があったとします。その机を買わずに10万円を預金したとします。そして1年後、同じ型の机を買おうとしたら11万円に値上げされていたらどうでしょう?物価が上昇したことで、机の価値が1万円上がり、相対的にお金の価値は下がってしまいました。
Aさん
なるほど。私が貯めた預金は、今は3,000万円ですが、将来その相対的価値が下がる可能性があるのですね
FP
その通りです!現在の年間生活費が300万円だとしたら、3,000万円あれば10年間暮らせます。しかしインフレによって物やサービスが値上がりすると、同じ3,000万円でも8年や7年しか生活できなくなってしまうかもしれないのです。このインフレリスクに備えるためには、資産を預金以外の金融資産に分散させることが有効なのです
Aさん
実は、資産運用はあまりやりたくないのです・・・。それに、逆に物価が下がる可能性もありますよね
FP
もちろんその逆もありますが。ただし、物価が下がるときは景気が悪い時でもあるので、そういったときほど運用で資産を増やしていくメリットが大きいですよ。
Aさん
……
FP
円と日本株という日本関連する資産のみ保有している、という点についても改善していくことをおすすめします
Aさん
預金と株、立派な資産分散だと思いますが
FP
はい、確かに運用手法としては別々になります。しかし、同じ『日本』という属性を持つため、同じリスク要因を抱えているのです。例えば、東京で大きな災害が起こったらどうでしょう?国際的な円の価値が下がり、おそらく日本企業の株価も下落すると思いませんか。
Aさん
確かにそうですね。しかし、外国の株や債券のことなどさっぱりわかりません。とても運用なんてできそうにありません
FP
大丈夫ですよ。銘柄選びはプロに任せることができる『投資信託』という金融商品もありますから!ただ、商品の説明をする前に、もう1点だけAさんの資産の形成における注意点をお伝えしたいです
Aさん
インフレや日本に資産が偏っていること以外にもあるのですか……
FP
はい。それはAさんがおっしゃっていた、『想定外』のリスクです。Aさんは私に、病気や介護の事態に備えたい、とおっしゃいました。実は、この2つに備えるには、資産運用が有効なのです。例えば近い将来病気になってしまうと、定年までに貯める予定であった貯蓄が難しくなります。そういう時に、資産運用をして少しでもお金に働いてもらえれば心強いですよね
Aさん
私はあと15年働いて、定年までに5,000万円の資産を作る予定でしたが、それすらも確実ではないということですか……
FP
残念ながら、そういう懸念はあります。そして介護については更に厳しいです。というのも、高齢になると適切に預貯金の管理ができない可能性があるからです。ご自身、もしくは配偶者の介護において、本来ならば計画的に支出しなければならないところを、配偶者への愛情や判断能力の衰えで家計の許容量以上の支出を行ってしまう恐れがあります。

もちろんこれは老老介護の、非常に悪い例です。行政の支援や後見人などのサポートを受けてうまくやることもできるでしょう。ただ、やはり定期的に収入があり、年金と収入である程度基本生活費を賄い、不足部分のみ貯蓄を切り崩すというのが理想ではないでしょうか

Aさん
厳しいですが、私たちのように夫婦2人で生活するならば、考えねばならない問題です。そうなると、やはりある程度の資産運用は必要ですね

預貯金におけるリスクのまとめ

  • インフレに弱い
  • 円に偏るため、カントリーリスクがある
  • 預貯金だと計画的に支出しなければならず、自己管理が問われる
Aさん
現金のみ保有することのデメリットは分かりました。しかし、リスクを取らずに運用することはできるのでしょうか?やはりリスクは最小限に抑えたいです。また、保険ならば満期金や受取額が決まっているようですが、最近は利率が低くて元本割れするものも多いと聞きます
FP
ひとつ目のご質問ですが、運用に関してリスクをゼロにすることはできません。しかしリスクを抑える運用方法はあります。また、税制優遇を利用して利益を最大限受け取る、という方法もあります。

ふたつ目のご質問は保険の運用についてですね。おっしゃる通り保険の運用率は近年低下の一方です。ただし、個人年金を活用すれば定期収入を得られますし、終身保険にすれば死亡保障も得ることができます。終身保険の場合、資産運用という意味では魅力が薄いかもしれません。ですがもしAさんが定年前に死亡してしまった場合に、奥さんにまとまった資金が残せるというメリットがあります。

Aさん
預金にもリスクがあることを考えると、リスクがあるからといって資産運用を敬遠するのは意味がないかもしれません。保険に関しても、老後資金だけではない活用法があるのですね
FP
その通りです
Aさん
資産運用について『税制優遇を利用して利益を最大限受け取る』というのはどういった意味ですか?
FP
近年相次いで登場したNISAや確定拠出年年金のことです。どちらも税制優遇がありますが、ここでは会社員のAさんに向いている確定拠出年金をご紹介します。会社で確定拠出年金制度の有無を聞いたことはありますか
Aさん
名前は聞いたことがありますが、うちの会社にはないようです
FP
そうですか。確定拠出年金とはひとことでいうと自分で作る年金です。毎月決まった掛け金を支出して、運用します。運用なのでリスクはありますが、元本保証型の商品を選択することもできます。リスクを抑えるには分散投資が基本です。ご自身で行ってもいいのですが、難しい場合はバランス型の投資信託を選択しましょう
Aさん
私にできるでしょうか?
FP
最初は失敗することもあるかもしれません。しかし、確定拠出年金は掛け金が所得控除を受けられますし、運用益は非課税です。そして受取時に退職金控除や公的年金控除が使えるといった特典があります。これらの税制上のメリットがあるため、通常の資産運用に比較して損益分岐点のハードルが低いのです
Aさん
多少の損ならば、税制メリットが吸収してくれるということですね。それは心強い
FP
もちろん注意点もあります。受取は原則60歳からで、それ以前の引き出しはできません。掛け金は最初のうちは低めに設定するといいでしょう
Aさん
はい!

確定拠出年金まとめ

  • 確定拠出年金は自分で運用する年金
  • 会社に制度があれば「企業型」に加入でき、会社にない場合は「個人型」に加入できる
  • 掛け金は5,000円からで、所得控除の対象
  • 運用リスクがあるが、運用益は非課税
  • 原則60歳までは引き出し不可
  • 受取方は年金、一時金受取が選択でき、それぞれ「公的年等控除」「退職所得控除」が適用可能

資産があるなら活用

FP
最初は失敗することも織り込み、少額から運用することをお勧めします。ある程度経験を積んだら掛け金を増やしていきましょう。Aさんの場合は資金がありますので、経験を積んだら、確定拠出年金以外の運用も検討してみてはどうですか
Aさん
こうなってくると、スタートが遅かったかもしれません。今から少しずつ運用をはじめてもそう大きな金額にはならないのではないでしょうか?
FP
確かに、定年時にはそう大きな額は見込めないかもしれません。しかしコツコツ運用をする意義は必ずあります。特に運用は長期的にやるほど効果が大きくなります。15年後の定年を目指すというより、身体的な不安が高まる、30年後を目指してやってみませんか?
Aさん
なるほど。確かに言われてみると、まだまだ元気な65歳をゴールと考えるのは違和感があります。おそらく本当に介護のリスクが高まるのは80歳近くなってからでしょうね
FP
はい。長期的な運用ならば、ローリスクでも効果が出やすいです。無理のない範囲でゆっくりやっていきましょう。なお、資産運用には土地活用も含まれますが、土地活用は検討されていますか?
Aさん
不動産投資ですか?定期収入は魅力ですが、アパート経営などは考えていません
FP
いいえ、アパート経営ではなく、自宅の活用です。Aさんは自宅をお持ちですので、『リバースモーゲージ』を使える可能性があります。リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借りることですが、生存中は元本の返済が不要なのです。生存中は利息のみ支払い、亡くなった後に自宅を売却して返済するのです。もちろん、資産を遺したければ一括返済することもできます
Aさん
聞いたことがあります。
FP
金融機関により借入額や要件は異なりますが、一度に全額借入するのではなく何回かに分けて融資を受けられる場合もあります。利用するかはご家族で話し合い、慎重に検討する必要がありますが、どの程度の借入ができるのかを事前に確認しておくだけでもやる価値があると思います
Aさん
なるほど。妻や娘と話し合ってみます
FP
現金を用意しておくのはとても大切なことですが、資産を守るためには、資産分散が必要です。保険や資産運用、自宅の土地活用などとれる手段は多いです。ぜひとも積極的に行って下さい

老後の資金をためる際のポイント

老後資金は「これさえあれば安心」というものではなく、複数の資産を持つことでリスク対策になります。お金や資産を働かせて、定期的に収入を得るとなお安心です。現金がある程度貯まったら、資産の種類を増やして老後の資産を守っていきましょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

横山 晴美

AFP/住宅ローンアドバイザー。 企業に属さない独立FP。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホームの購入相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案する。安心して住宅を購入できるだけでなく、家計の課題も解決できるとの声を頂いている。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。