障害年金という言葉は聞いたことはあるでしょうか。通常の年金であれば65歳から受け取るのが一般的ですが、障害年金は65歳を前にして受け取ることができる年金の1つです。
ただ、どのような状態になったら障害年金を受給することができるのか。そもそもどのような制度なのか分からない。という方に向けて、今回は障害年金の受給資格・受給金額・申請方法・更新手続きについて徹底解説を行います。
目次
障害年金とは
障害年金とは、一定水準の障害認定を受けた方の生活を支える公的年金の1つです。
障害年金の種類は、国民年金加入者が受け取れる「障害基礎年金」と厚生年金加入者の「障害厚生年金」の2つの種類があります。それぞれどのような方が受給できるのか受給資格と受給金額をまずは解説したいと思います。
障害年金の種類①:障害基礎年金の受給資格と受給金額
まずは、国民年金加入者が受給することができる「障害基礎年金」の受給資格と受給金額を確認してみましょう。
障害基礎年金の場合は、障害等級は1級または2級の認定を受けている方が対象となります。障害等級1級の場合は、97万円+子供1人につき22万も加算されますので相当な金額受け取れることになるでしょう。
項目 | 障害基礎年金の受給資格 |
要件 |
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受給額 | 【1級】 974,125円+子の加算 子の加算とは?
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障害年金の種類②:障害厚生年金の受給資格と受給金額
続いては、厚生年金加入者が受給できる「障害厚生年金」の受給資格と受給金額を確認してみましょう。
項目 | 障害厚生年金の受給資格 |
要件 |
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受給額 | 【1級】:(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕 【2級】:(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕 【3級】:(報酬比例の年金額) ※最低保障額 584,500円 |
障害基礎年金と大きく変わる点の1つに障害厚生年金は「障害等級3級」の方も受給資格を得られる点にあります。最低保障額が58万円となりますので「報酬比例の年金額」が58万を下回る場合も58万円は給付されます。
さて、上記の計算式を見ると「報酬比例の年金額」と聞きなれない言葉が出てきますが、以下の計算式で求めることができます。
なんとも複雑な計算式ですが、気になるのは「平均標準報酬月額」と「平均標準月額」と似た言葉が使われています。
これは、平成15年に「総報酬制」が導入されたことによります。年金の計算において、総報酬制の導入前は月給のみが反映されていたものから、導入後は月給と賞与が含まれるようになりました。これに伴い、「平均標準報酬月額」と「平均標準月額」という分け方をし、報酬比例部分の乗率も変更されたという背景があります。
従って、平成15年3月以前から厚生年金に加入している方は平成15年3月以前と4月以降を別々に計算し合算させる必要があります。また、被保険者期間が300ヶ月以下の方でも障害年金の受給の際は300ヶ月加入したとみなし支給がなされます。
初診日と障害認定日の違い
障害認定を受ける際は、「初診日」と「認定日」についても理解をしておく必要があります。「初診日」は、記載の通り症状が発症もしくは疑いがあり病院で初めて診断した日になります。一方で「障害認定日」は障害年金の受給資格を得られる日となりますので、双方の違いを理解しておきましょう。
- 初診日から1年6ヶ月経過した日
- 初診日から1年6ヶ月前に症状が固定した日
①は原則として1年6ヶ月以降でないと障害年金の請求を行うことはできません。従って、うつ病などの場合はこれに該当してきます。
一方で、②の場合は、1年6ヶ月を経過せずとも障害年金の請求が可能になります。この場合、「症状が固定した日」となりますが、「症状の固定が」どのような状態になるのか一例を上げたいと思います。
年金保険料が未納でも障害年金が受け取れるケース
障害年金には、原則国民年金保険料または厚生年金保険料を納めている方が受給対象となります。しかしながら、この保険料が未納でも受給できるケースがあります。
それが「20歳前傷病による障害基礎年金」と呼ばれる制度です。
国民年金は20歳から支払いを開始するのが決まりですが、これでは20歳になったばかりの方は障害年金を受給することできません。これに対応する制度が「20歳前傷病による障害基礎年金」となりますので解説します。
20歳前傷病による障害基礎年金とは
「20歳前傷病による障害基礎年金」とは、初診日が20歳以下の時に障害者認定を受けており、20歳を過ぎた場合に年金保険料が未納でも障害年金を受け取ることができる制度です。特別支援学校に通う方などは20歳になると障害年金が受け取れるというのはこの制度を活用しているのです。
障害認定日は初診日から1年6ヶ月経過後となりますので20歳を過ぎていたとしても1年6ヶ月に満たない場合は、その日が到達次第、請求が可能となります。「20歳前傷病による障害基礎年金」には所得条件もありますので以下でお伝えさせて頂きます。
20歳前傷病による障害基礎年金の所得制限

こちらの図解でもあるように年間の所得が398.4万円未満なら障害者等級に応じて全額支給となり、398.4万円以上500.1万円未満までは1/2の支給となります。500.1万円を越えると全額支給停止となりますが、基本的には多くの方が受給できる制度と言えるでしょう。
障害等級の基準
それでは1級から3級までどのような状態になると障害認定を受けられるのか国民年金・厚生年金保険 障害認定基準を参照しお伝えしたいと思います。
等級 | 等級の基準 |
障害等級1級の基準 | 身体的な障害または長期に渡る安静が必要な状態であり、日常生活を送ることが不能な状態。具体的には、他人の介助なしでは用を足すこともできず、活動範囲がベッド周辺に限定されてしまう状態。いわゆる寝たきり状態となっているような方を指している。 |
障害等級2級の基準 | 身体的な障害又は長期に渡る安静が必要な点は、障害者等級1級と同じだが、軽い軽食作りや下着程度の洗濯はできる状態。概ね活動範囲は自宅内もしくは病院内に限定されており、外出などを行うことはできないが、その他の日常生活は介助なしでも限定的に活動することはできる |
障害等級3級の基準 | 労働に制限が発生するもしくは発生させざるおえない状態。傷病が治らないものであっても同様 |
障害等級が決まる基準は日常生活をどの程度まで送ることができるのかを判断した上で決定されます。そのため、病気(癌やうつ病)になることがそのまま障害者認定を受けられる基準ではないという点に注意しましょう。
一方で、上記のように日常生活を送ることが困難になった方は障害者認定を受けることが可能です。最近は「うつ病」での認定も増えているようです。主な、症状と病例をお伝えします。
障害者等級 | 主な症状 | 主な病例 |
障害者等級1級 |
| 外部障害
精神障害
内部障害
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障害者等級2級 |
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障害者等級3級 |
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障害年金の申請方法
障害年金の申請は、まずは病院に行き「医師の診断書」を受け取る必要がありますが、診断書は所定の様式が決められているので注意しましょう。また、申請時には「年金請求書(国民年金障害基礎年金)様式第107号」の提出が必要になります。
提出先は現住所の市区町村役場の窓口になります。なお、初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、お近くの年金事務所になります。
障害年金の申請時に必要な書類
必要書類の様式が指定されていますので以下よりダウンロードすることをおすすめします。
準備物 | 詳細 |
年金手帳 |
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戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のどれか |
※単身者で年金請求書にマイナンバーの記載がる場合は提出不要 |
医師の診断書(名前に医師と記載があること) | 所定の様式があることに注意が必要
※呼吸器疾患の場合はレンドトゲンフィルムの提出も必要 |
受診状況等証明書 |
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病歴・就労状況等申立書 |
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受取先金融機関の通帳等(本人名義) |
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印鑑 |
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また、20歳以下のお子様の申請を行う場合や第三者によって障害者になった場合は追加で申請書類が必要になりますので、詳しくは、日本年金機構の公式サイトをご確認ください。
障害年金の結果はいつ届くのか?
日本年金機構には、年金請求書を受け付けてから年金証書が届くまでの所要日数を「サービススタンンダード」と呼び少しでも早く年金が受け取れるように努力しています。そして、このサービススタンダードの日数は日本年金機構の「アニュアルレポート」にて確認することが可能です。
2015年の結果までしか公表されておりませんが、障害年金が受け取れるまでの平均期間は、「障害基礎年金」で52.5日、「障害厚生年金」で82日となっております。
障害年金の支給日はいつ
手続きが完了しましたら、障害年金の受給が可能となりますが、「【保存版】年金支給日の日程を2017年から2020年までまとめて公開」でも解説させて頂いた通り、年金は偶数月の15日に支給されることが決められています。15日が土日の場合は、直近の平日となります。そのため、申請受理が奇数月の場合は偶数月まで待つことが必要になります。
障害年金の更新手続き
障害年金は一生涯受け取れる年金ではなく、期間が決まっている「有期年金」になります。
おおよそ1年から5年が障害年金の受給期間となりますが、障害年金の請求を行う際に症状に応じて期間が決められています。
そのため、上記の期間内に更新手続きを行う必要がありますが、申請書類として日本年金機構より「障害状態確認届」がご自宅に郵送されてきます。これを更新年度の誕生日月の月末までに市区町村役場に提出する必要があります。
その際、医師の診断書を合わせて提出する必要がありますので「障害状態確認届」が届き次第、なるべく早く準備をした方が良いでしょう。
「障害状態確認届」を提出しないと最悪な場合、障害年金の支給停止となる可能性もありますので注意が必要です。
障害年金のまとめ
障害年金について、種類、受給期間、受給金額、申請手続き、更新について解説を行いました。
制度が複雑で混乱する部分もありますが、当事者にとっては非常に重要な年金制度と言えるでしょう。そのため、ご家族が怪我や病気によって障害者認定を受ける場合は必ず障害年金の申請を行うようにしましょう。