厚生年金保険とは?会社員や公務員が加入する老後に向けた備えを完全解説







会社員や公務員の人であれば給与明細を見てもらうことで毎月「厚生年金保険料」が天引きされていることだと思います。

そして多くの人は「65歳になったら年金が貰える」と漠然と理解はしているものの、この厚生年金保険料がどのような計算方法によって算出され、いくら受給できるかまでしっかり理解できている人は少数ではないでしょうか?

老後の生活においては主たる収入源である年金について正しい知識を持っていないというのも非常にリスクがあると言えますので、今回は厚生年金保険の完全ガイドをご紹介したいと思います。

厚生年金保険とは?

早速ですが、厚生年金保険とはそもそも何か?という点についてお伝えしたいと思います。年金は基本的に2階建てになっている。という話は聞いたことも多いかもしれません。

年金の構造

出典:厚生労働省

1階部分になる「国民年金」は20歳以上の人は必ず加入しなければならない年金となっており、2階部分に該当する「厚生年金保険」については会社員や公務員が必ず加入する年金となっています。

従って、会社員や公務員の人は「国民年金と厚生年金保険の2つの年金に加入している」ということになります。

厚生年金保険には老齢・障害・遺族の3種類がある

「会社員や公務員が加入する年金=厚生年金保険」というのは理解できると思いますが、65歳から受給できる一般的な年金は「老齢厚生年金」と呼ばれます。

実は、この「老齢厚生年金」以外にも、65歳未満でも受給することが出来る厚生年金に「障害厚生年金」と「遺族厚生年金」があるのです。

まずは、「障害厚生年金」と「遺族厚生年金」がどのような制度なのか簡単にお伝えすると共に、本記事における主たる内容である「厚生年金(老齢基礎年金)」については後述したいと思います。

障害厚生年金とは

障害厚生年金とは、厚生年金保険加入者が障害等級1級〜3級に該当した場合に受給できる年金となります。障害厚生年金を受給するための要件と受給額については以下をご参照ください。

項目障害厚生年金の受給資格
要件
  • 初診日に厚生年金保険料を納めていること
  • 障害等級1級、2級、3級の認定を受けていること
受給額【1級】:(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕
【2級】:(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕
【3級】:(報酬比例の年金額) ※最低保障額 584,500円

また、障害厚生年金の詳しい解説は「障害年金とは?受給資格・受給金額・申請方法・更新手続きを徹底解説」をご参照ください。

遺族厚生年金とは

遺族厚生年金とは、厚生年金保険加入者が亡くなった場合に配偶者など残された遺族が受給できる年金となります。遺族厚生年金を受給するための要件と受給額については以下をご参照ください。

遺族厚生年金の条件詳細
給付条件
  • 被保険者が死亡または傷病の初診から5年以内に亡くなった方で保険料納付期間が2/3以上ある場合
  • 老齢厚生年金の受給資格が25年以上ある方が亡くなった場合
  • 障害厚生年金(1級・2級)を受けられる方が死亡した場合
給付対象
  • 18歳未満の子、孫(障害等級1級、2級の方は20歳未満まで)
  • 55歳以上の夫、父母、祖父母(支給は60歳から)
給付額夫が本来受け取る予定だった厚生年金の3/4
支給期間
妻の場合:一生涯支給される
  • 夫の死亡時に妻の年齢が30歳未満で子供がいない場合は5年間の支給となる
  • 妻の年齢が40歳から65歳になるまでの期間は584,500円/年加算される(中高齢寡婦加算※1)
子供・孫の場合:18歳の年度末まで(障害等級1級または2級の場合は20歳まで)
 
夫・父母・祖父母の場合:60歳以降から一生涯

また、遺族厚生年金の詳しい解説は「遺族年金の仕組み|受給金額はいくら?いつまでもらえるの?」をご参照ください。

厚生年金保険の加入条件

それでは、老齢厚生年金を受給するための第1ステップとして、そもそも厚生年金保険に加入するための条件はどのようなものか?という疑問から解説したいと思います。

厚生年金保険の加入条件

  • 週20時間以上、30時間以内の勤務
  • 従業員が501名以上の企業に勤めている
  • 雇用期間が1年以上であることが見込まれている
  • 毎月の賃金が8.8万円以上であること
  • 学生ではない

厚生年金保険は15歳〜70歳未満が加入対象となりますが、もし加入期間が足りないような場合は70歳以上でも「厚生年金保険70歳以上被用者該当・不該当届」を提出することで継続加入が可能になります。

また、会社員であれば厚生年金保険に加入している場合が大半。と言えますが、厳密には「強制適用事業所」と「任意適用事業所」に分かれます。

強制適用事業所であれば必ず厚生年金保険に加入していると言えますが、任意適用事業所に該当する場合は、従業員の半数が厚生年金保険への加入を希望しなければ加入義務はありません。

任意適用事業所の要件は「農林水産業、サービス業(理美容、娯楽施設など)、法務、宗教」などが該当することになりますので、ご自身が厚生年金保険に加入しているか必ず確認をした方が良いでしょう。

厚生年金保険の加入条件について詳しい解説は「厚生年金保険の加入条件とは?雇用形態別の対象者を解説」をご参照ください。

老齢厚生年金の平均受給額と推移

厚生年金保険は国民年金と比較しても手厚い保障が受けられる点で非常にメリットの高い制度と言えます。その中でも受給金額の高さは非常に魅力と言えます。

ここでは、厚生年金保険加入者が老後に平均いくらの老齢厚生年金を受給しているのか?その推移と金額についてお伝えしたいと思います。

老齢厚生年金の平均受給額推移

上記のグラフを見て頂いても分かるように、老齢厚生年金の平均受給額は「月額14万7,927円」と国民年金の満額受給である6.4万円よりも2倍以上も年金受給額が高くなります。

毎年、平均受給額は変動しますので若い世代が将来同額の年金を受給できる確率は低くなるとは言えますが、もう少しで年金を受給出来る世代にとっては非常に頼もしい制度と言えるでしょう。

平均的な年金受給額については「2018年最新|年金支給額の平均は国民年金5.5万円・厚生年金14.7万円」をご参照ください。

厚生年金保険の受給額計算方法

それでは、厚生年金保険の受給額はどのようにして決まっているのか?こちらについては、計算方法をお伝えしたいと思います。

厚生年金保険の受給額計算方法

報酬比例年金額+ 経過的加算+ 加給年金額=厚生年金受給額(老齢厚生年金)

さて、「報酬比例年金額」「経過的加算」「加給年金額」と少々難しい言葉が並びますが、それぞれどのようにして求めるのか計算式をお伝えしたいと思います。

報酬比例年金額とは

報酬比例年金額とは、厚生年金受給額の大部分を決めるものになり報酬に連動しているものになります。この報酬とは給与やボーナスに紐づくのですが、その際「平均標準報酬月額」と「平均標準月額」について理解する必要があります。

 

  • 平成15年3月まで:賞与を含めない月の平均給与にて算出(平均標準報酬月額)
  • 平成15年4月以降:給与と賞与を含めた月の平均給与にて算出(平均標準月額)

上記の通り、いつから加入しているかで計算式が分かれますが、平成15年3月以前から厚生年金保険に加入している方は、3月以前と4月以降を分けて計算し合算させる必要があります。

報酬比例年金額の計算式

経過的加算とは

経過的加算とは20歳未満から仕事をしている人や60歳以上でも仕事を続けている人が対象になり、超過分を厚生年金の受給額に加算しましょう。というものです。

ただし、経過的加算は480ヶ月が条件になっていますので、それ以上加入した場合でも厚生年金の受給額が増える訳ではない。という点に注意が必要です。

実際、20歳から60歳まで会社員で働き続けた場合は、480ヶ月に達してしまいますので、経過的加算で老齢厚生年金が加算されることはない。ということになります。

経過的加算の計算式

加給年金額とは

加給年金額は年金の家族手当と呼ばれるもので、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある被保険者が65歳を迎えた時に配偶者が65歳未満の場合や18歳以下の子供がいる場合に追加で年金が支給されます。

加給年金の支給額

厚生年金の受給額早見表

少々難しい計算が続きますので「計算が面倒」という方は、概算にはなりますが厚生年金の受給額早見表を作成しましたので合わせてご参照ください。

平成15年3月までの厚生年金受給額の早見表(あくまで目安となります)

平成15年4月以降の厚生年金受給額の早見表(あくまで目安となります)

正確な金額を知りたい人は50歳未満の場合「ねんきん定期便」を参照し50歳以上の場合は「ねんきんネット」を活用することでより正確な金額を確認することが可能になります。

厚生年金保険の保険料

厚生年金受給額の計算が毎月の給与や賞与に連動することはお分り頂けたと思いますが、厚生年金保険の保険料においても報酬に応じて31段階に分かれています。

そこで、厚生年金保険料の計算式についてお伝えしたいと思います。厚生年金保険の保険料は被保険者と企業が折半することになっていますので、実際の納付額は1/2となります。

保険料の種類保険料額の計算方法
毎月の保険料額標準報酬月額×厚生年金保険料率
賞与の保険料額標準賞与額×厚生年金保険料率

さて、ここでまたしても気にある言葉として「標準報酬月額」「標準賞与額」「厚生年金保険料率」が出てきました。

標準報酬月額とは?

標準報酬月額とは、社会保険の様々な計算に活用されるものですが、算出方法は税引き前給与の4月から6月の間で平均した金額となります。給与に含まれるものは基本給だけでなく、残業手当、通勤手当、現物支給も含めて計算がされます。

そして、この標準報酬月額は収入額によって31段階に分かれておりますので、ご自身の収入がどの等級に該当しているのか確認をしてみましょう。

等級標準報酬月額報酬月額の範囲
1等級¥88,000 ¥93,000
2等級¥98,000¥93,000¥101,000
3等級¥104,000¥101,000¥107,000
4等級¥110,000¥107,000¥114,000
5等級¥118,000¥114,000¥122,000
6等級¥126,000¥122,000¥130,000
7等級¥134,000¥130,000¥138,000
8等級¥1,420,000¥138,000¥146,000
9等級¥150,000¥146,000¥155,000
10等級¥160,000¥155,000¥165,000
11等級¥170,000¥165,000¥175,000
12等級¥180,000¥175,000¥185,000
13等級¥190,000¥185,000¥195,000
14等級¥200,000¥195,000¥210,000
15等級¥220,000¥210,000¥230,000
16等級¥240,000¥230,000¥250,000
17等級¥260,000¥250,000¥270,000
18等級¥280,000¥270,000¥290,000
19等級¥300,000¥290,000¥310,000
20等級¥320,000¥310,000¥330,000
21等級¥340,000¥330,000¥350,000
22等級¥360,000¥350,000¥370,000
23等級¥380,000¥370,000¥395,000
24等級¥410,000¥395,000¥425,000
25等級¥440,000¥425,000¥455,000
26等級¥470,000¥455,000¥485,000
27等級¥500,000¥485,000¥515,000
28等級¥530,000¥515,000¥545,000
29等級¥560,000¥545,000¥575,000
30等級¥590,000¥575,000¥605,000
31等級¥620,000¥605,000 

標準賞与額とは?

標準賞与額とは、1,000円未満の端数を切り捨てした税引き前賞与のことで1度の支給上限額は150万円までとなります。賞与の定義は年3回以下の支給であり現物支給なども賞与としてカウントされることになります。

厚生年金保険料率とは?

「標準報酬月額」「標準賞与額」が分かれば後は「厚生年金保険料率」を掛けるだけで厚生年金保険料の金額を算出することが可能になります。

現在の厚生年金保険率は18.3%になります。

2004年から厚生年金保険料率は引き上げされ続けましたが、現在の18.3%は国が定める厚生年金保険料の上限となります。従って、当面はこれ以上に引き上げされることはないでしょう。

厚生年金保険の保険料早見表

では、自分自身がいくらの厚生年金保険の保険料を支払っているのか?標準報酬月額に応じて保険料の早見表を作成しましたので合わせてご参照ください。

等級標準報酬月額報酬月額の範囲厚生年金保険料自己負担額
1等級¥88,000 ¥93,000¥16,104¥8,052
2等級¥98,000¥93,000¥101,000¥17,934¥8,967
3等級¥104,000¥101,000¥107,000¥19,032¥9,516
4等級¥110,000¥107,000¥114,000¥20,130¥10,065
5等級¥118,000¥114,000¥122,000¥21,594¥10,797
6等級¥126,000¥122,000¥130,000¥23,058¥11,529
7等級¥134,000¥130,000¥138,000¥24,522¥12,261
8等級¥1,420,000¥138,000¥146,000¥259,860¥129,930
9等級¥150,000¥146,000¥155,000¥27,450¥13,725
10等級¥160,000¥155,000¥165,000¥29,280¥14,640
11等級¥170,000¥165,000¥175,000¥31,110¥15,555
12等級¥180,000¥175,000¥185,000¥32,940¥16,470
13等級¥190,000¥185,000¥195,000¥34,770¥17,385
14等級¥200,000¥195,000¥210,000¥36,600¥18,300
15等級¥220,000¥210,000¥230,000¥40,260¥20,130
16等級¥240,000¥230,000¥250,000¥43,920¥21,960
17等級¥260,000¥250,000¥270,000¥47,580¥23,790
18等級¥280,000¥270,000¥290,000¥51,240¥25,620
19等級¥300,000¥290,000¥310,000¥54,900¥27,450
20等級¥320,000¥310,000¥330,000¥58,560¥29,280
21等級¥340,000¥330,000¥350,000¥62,220¥31,110
22等級¥360,000¥350,000¥370,000¥65,880¥32,940
23等級¥380,000¥370,000¥395,000¥69,540¥34,770
24等級¥410,000¥395,000¥425,000¥75,030¥37,515
25等級¥440,000¥425,000¥455,000¥80,520¥40,260
26等級¥470,000¥455,000¥485,000¥86,010¥43,005
27等級¥500,000¥485,000¥515,000¥91,500¥45,750
28等級¥530,000¥515,000¥545,000¥96,990¥48,495
29等級¥560,000¥545,000¥575,000¥102,480¥51,240
30等級¥590,000¥575,000¥605,000¥107,970¥53,985
31等級¥620,000¥605,000 ¥113,460¥56,730

厚生年金保険料の詳しい解説は「厚生年金保険料の仕組みとは?31等級別の保険料と計算式を解説」をご参照ください。

厚生年金保険の扶養とは?

ここまで厚生年金保険の被保険者について解説を行いましたが、厚生年金保険に加入している人の被扶養者は年金に加入する必要はないのか?という点も気になるポイントと言えます。

厚生年金保険に加入している人の配偶者で扶養である場合は「国民年金に加入している」ことになります。さらに国民年金保険料の支払いは免除されているのです。

従って、被扶養者が65歳を迎えた場合、国民年金保険料を納めていないにも関わらず、老齢基礎年金を受給することが可能になります。

注意点としては、厚生年金保険に加入している訳ではなく国民年金となりますので受給額が少なくなります。

国民年金保険料が免除されながらも老齢基礎年金を受給出来るのが得」だと考えるか、「老齢厚生年金が受給できないのは損」だと考えるかは家庭の事情によっても異なるでしょう。

とは言え、厚生年金保険の扶養に加入するための条件については知っておいて損はありませんので「厚生年金の扶養とは?条件・金額・手続き方法について解説」をご参照頂き、正しい判断が出来るように知識を身につけておきましょう。

まとめ

厚生年金保険について、加入条件、受給額、計算方法、保険料から扶養の扱いまで完全ガイドをご紹介させて頂きました。

厚生年金保険は国民年金よりも手厚い保障が受けられますので自営業など国民年金にしか加入が出来ない人に比べると、会社員や公務員は非常に優遇されていると言えるでしょう。

ただし、制度をしっかりと理解していないと障害厚生年金や遺族厚生年金など上手に制度を使いこなすことが出来ないと言えますのでしっかりと理解するようにしましょう。









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