厚生労働省は平成29年における国民年金保険料の納付率が66.3%であった。と発表を行いました。前年に比べると1.3%改善されているとは言え、依然として年金保険料の納付に苦慮している人は非常に多いと言えます。
実際、国民年金保険料は月額1万6340円(平成30年度時点)であることから、年間20万円近くの年金保険料を納める必要があります。この金額は、若者を中心に相当負担が重たいことは言うまでもありません。
では、国民年金保険料が払えない時はどのような対処をするべきなのか?今回は、年金の猶予や免除申請について分かりやすく解説を行いたいと思います。
目次
年金が払えない若者が3割を超える状況
厚生労働省の発表資料に年齢別の年金未納率が掲載されております。これによると、20代の未納率が高い状況にあり、年齢を重ねるごとに未納率が改善されていることが分かります。

前年度に比べれば未納率は改善はされているとは言え、まだまだ所得の低い若者世代にとっては年金保険料は非常に重たい負担であり、払えない人が多い実態が見えてきます。
その際、滞納するのではなく「猶予」または「免除」の申請を必ず行なって頂きたいと言えますので、これから詳しく解説を進めていきたいと思います。
年金が払えない時の猶予や免除申請の種類
年金の猶予または免除申請には大きく4つの種類があります。
- 保険料免除制度
- 納付猶予制度
- 学生納付特例制度
- 配偶者からの暴力による特例免除制度
それぞれ詳しい解説を行いたいと思います。
保険料免除制度 |無職・フリーターなど所得が低い場合
所得が低く、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や失業している場合は、本人が保険料免除制度の申請書を提出し承認されると免除が受けられます。
免除できる割合は収入応じて、「全額」、「3/4」、「半額」、「1/4」のいずれかの免除が受けられます。
ただし、国民年金は同居する家族も連帯納付義務者に該当しますので、本人の所得だけでなく世帯主や配偶者も所得審査の対象になりますので注意してください。
保険料の免除申請の詳しい解説は「国民年金が免除になる年収の基準とは?世帯別に目安所得を解説」をご参照ください。
納付猶予制度 |無職・フリーターなど所得が低い場合
本人と配偶者の所得が一定以下の場合で20歳〜50歳未満の人は、本人が納付猶予制度の申請書を提出し承認されることで年金保険料の猶予が適用されます。
免除申請との違いは、本人と配偶者のみの所得審査になりますので、世帯主が含まれない点になります。
また、猶予した保険料は最大で10年分まで遡って追納することが可能になりますので、詳しい解説は「国民年金の追納(後払い)とは?社会保険料控除を活用し賢く節税する方法」をご参照ください。
学生納付特例制度 |学生の場合
学生の場合は、学生納付特例制度を活用することで在学中は年金保険料の納付を猶予することが可能になります。所得審査は本人のみとなり学生の60%以上が活用している制度になります。
学生納付特例制度の詳しい解説は「国民年金は20歳から強制加入|学生の親が知っておくべき年金の知識」をご参照ください。
配偶者からの暴力による特例免除制度|主婦の場合
配偶者のDV被害などにより別居しているような場合は、配偶者の収入に関わらず特例免除制度を活用することが可能になります。
所得審査は、本人加えて本人の両親も含まれることもありますので、事前に年金事務所に相談するようにしましょう。また、申請には以下の書類を準備する必要があります。
- 配偶者と住居が異なること等の申出書および住居地が確認できる書類
- 配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターで取得)
免除の対象期間は毎年7月から翌年6月までの1年間になりますので更新する場合は再度申請する必要があります。その際、「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」は不要になります。
年金が払えない時に猶予や免除の申請が大切な理由
さて、「年金が払えないなら申請をしても、しなくても状況は変わらないではないか」と考え猶予や免除の申請を行わない人も一定数います。しかしながら、これは非常に勿体無いことと言えます。
国民年金を免除しても、年金は国庫が1/2を負担していることになりますので、免除の申請を行なっても半額は年金を受給することが可能になります。
免除・一部免除 | 支給される年金額 |
全額免除 | 支給される年金額1/2 |
4/1納付 | 支給される年金額5/8 |
2/1納付 | 支給される年金額6/8 |
4/3納付 | 支給される年金額7/8 |
*平成21年3月以前の方は、国庫の負担が1/3でしたので半額負担ではないことに注意しましょう。
上記より、年金が払えないからと猶予や免除申請しないことは「損しかない」と言えますので、必ず申請するようにしましょう。
猶予や免除の申請が却下される場合
免除や猶予の申請をしたが却下された。という人も中にはいることでしょう。この場合、考えられる原因は、「本人ではなく世帯全体の所得が高い場合」か「本人の前年所得が高い場合」が挙げられます。
実家暮らしで親の所得が高い場合
年金保険料の支払いは連帯納付義務がありますので、本人が年金を支払い出来ない場合も世帯主や配偶者の所得が高い場合は代わって納付する義務を負います。
そのため、免除申請では「世帯主・配偶者・本人」、猶予申請では「配偶者・本人」の所得審査が発生するのです。従って、本人以外の人で所得が高い人がいる場合は免除や猶予の審査が却下されることになります。
前年の所得が高い場合
年金の免除や猶予申請で勘違いしてしまう点として、現在の所得で計算をしてしまう場合です。年金の免除や猶予申請の所得審査は前年度の所得になりますので、前年に一定の収入がある場合は却下されてしまいます。
例えば、平成28年7月から平成29年6月までの国民年金保険料の免除審査の場合は、平成27年度の所得を基準に実施されることになりますので、この時の所得が高いと審査が却下されてしまうのです。
年金を払わないと厳しい罰則の対象になる
ここまで、年金が払えない時の免除や猶予申請について解説を行いましたが、申請が承認されることで、保険料免除や納付猶予になった期間を年金の受給資格期間に算入することができることは非常にメリットと言えます。
逆に、申請を行わない場合は、将来の年金受給額が減額されるだけでなく、後納時に延滞金が発生してしまいます。さらに、滞納を続ける場合は、強制執行の対象となり財産が差し押さえされるなど厳しい罰則の対象になります。
年金を滞納してしまった際の罰則については「2018年最新情報|年金(国民年金)未納は危険|延滞金・強制徴収などデメリットを解説」にて詳しくまとめてありますのでご参照ください。
年金が払えない時の相談先
年金が払えない時は免除や猶予の申請をすること。
対策は、その一点に限られますが個別事情も含めて支払いなどについて相談したいことも多々あるでしょう。その際、年金について相談できる施設をまとめましたので必要に応じてご活用ください。
相談先 | 営業時間 | 電話番号 |
ねんきんダイヤル |
| 0570-05-1165 |
年金事務所 |
| 事務所により変動 |
年金相談センター |
| 事務所により変動 |
まとめ
年金が払えない時の猶予・免除申請について解説を行いました。
「滞納するメリットは1つもない」と言えますが、逆に、猶予や免除申請するメリットは非常に高いと言えますので年金が払えない場合は必ず申請をするようにしましょう。
また、保険料の納付が難しい場合は一人で悩まずに年金事務所などに相談することも大切と言えるでしょう。