遺族年金は内縁の妻でも受給できる?本妻は受給できないのか?解説







遺族年金は年金加入者が亡くなった場合に残された遺族の生活を支える年金と言えますが、もし年金加入者に内縁の妻がいた場合、遺族年金を受給することができるのか?気になるポイントです。

内縁の妻からすれば婚姻関係がないだけで長年連れ添った事実があることから遺族年金を受給したいと考えるでしょうし、本妻からすれば法的に婚姻関係が証明されているため譲れないと言えるでしょう。

このように遺族年金は内縁の妻が受け取るのか?それとも本妻なのか?実際の裁判事例を元に解説を行いたいと思います。

遺族年金の受給が本妻より内縁の妻が優遇された裁判事例

2012年に建設会社の社長が亡くなった件において、内縁関係にあった岐阜県の女性が遺族厚生年金の申請を行いましたが棄却されました。

これをきっかけに、申請者である女性は国の不支給処分の取り消しを求め訴えを起こしましたが、結果としては、処分取り消しを命じた1審の判決を名古屋高裁が支持し国側は敗訴することになりました。

この結果から、内縁の妻は遺族厚生年金を受給することが出来たのですが、判決結果に到るまでの背景には以下のような事実が加味されています。

内縁の妻が勝訴した要因

  • 男性が亡くなるまでの12年間同居していた
  • 男性の通院や介護を行なっていた
  • 遺族厚生年金の申請をしたが婚姻関係が形骸化したとは言えず不支給となった
  • 2000年から本妻とは完全に別居状態であり離婚しているのと同じ状況であった

上記の事実を裁判所が公平な立場で判断した結果、本妻ではなく内縁の妻が遺族厚生年金を受給するのが妥当。という判断を下したことになります。

遺族年金は内縁の妻も受給可能

裁判の判決からも分かるように、内縁の妻でも遺族年金を受給することは可能になります。

今回のケースのように、配偶者が遺族年金を受給する場合は、被保険者が死亡した際にその被保険者によって生計が維持されていた配偶者である必要があります。

そして、この配偶者には「法律上の夫婦である本妻」だけでなく事実上、「婚姻関係にある内縁の妻」も含まれるのです。

そして、「生計が維持されていた」という点では、本妻は2000年から12年間も別居状態であったため生計が維持されているとは言い難いでしょう。一方、内縁の妻は長年に渡って同居している実態からも生計が維持されている状態と言えます。

内縁の妻が遺族年金を受給する場合は本妻は受給できない

とは言え、「法律的に婚姻関係にある妻が遺族年金を受給できない」というのも、本妻からすれば納得が出来ないことでしょう。

遺族年金の一部でも受給できないのか?」と疑問に感じる人も多いでしょうが、結論をお伝えすれば、本妻は遺族年金を受給することは出来ません。

本来、法律婚と事実婚が重複する「重婚的内縁関係」に当たる場合、優先されるのは本妻です。そのため、今回のケースでも、「本妻が被保険者と同居し生計が維持されていた場合は本妻が遺族年金を受給した可能性が高い」と言えます。

一方で、「事実上離婚状態である場合は、内縁の妻が優先されるケースがある」ということが今回の判決結果となります。

本妻が遺族年金が受給できないのは事実上の離婚状態である場合

上記を振り返るとポイントになるのは、「法律婚か?」「事実婚か?」という話よりも「事実上の婚姻状態であり生計が維持されていた妻はどちらなのか?」という点になります。

この判断軸は非常に曖昧な部分でもありますが、以下のようなポイントを総合的に加味して判断されることになります。

事実上の婚姻状態を判断する基準

  1. 別居することになった背景
  2. 別居している期間(長い方が不利でしょう)
  3. 婚姻関係を維持する意思があるか否か
  4. 婚姻関係を修復するための努力があったか否か
  5. 夫への経済的依存があるか
  6. 別居後の面会や連絡頻度

上記の基準から総合的に判断することになりますので、単純に別居歴20年だから内縁の妻が遺族年金を受給できる」という単純な話にはならないでしょう。

本妻の立場としては、内縁の妻が遺族年金を受給することに納得が出来ないと思いますが、遺族年金を受給するためには、生計が維持されておりマメに連絡を取り合うなどの対策も必要である。ということです。

今回の判例のように、夫が別の場所で新しい女性と同居している事実を知らずに長年別居していると、遺族年金が受給できず後々後悔してしまうリスクがあるでしょう。

まとめ

遺族年金は内縁の妻でも受給することができるのか?について解説を行いました。

結論、複数の基準を照らし合わせて本妻よりも内縁の妻が「事実上の婚姻関係にある」と判断された場合は、内縁の妻が遺族年金を受給することになります。

死後にトラブルが起きないように被保険者の方は事前に誰に何を相続するのか等、しっかりと計画しておくべきと言えます。









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