土地・建物の相続|不動産評価額の算出・相続税軽減の特例を解説







相続税と向き合う上で、土地や建物などの不動産についての知識が不可欠です。預貯金などの現金を相続する場合と比較して、不動産は「評価を下げて」相続することができます。評価が下がるということは、その分資産としての額が減り、相続税が低くなるということ。相続税における土地や建物の評価額から、その特徴を活かした「節税対策」を確認していきましょう。

土地・建物の評価額を算出する方法

まずは土地を相続する基本的な形をお伝えします。最初に覚えて欲しい言葉は「路線価」です。日本中の道路には、路線価と呼ばれる価格がついており、その道路に接した土地は路線価に土地面積をかけて算出します。大きな道路だけではなく、県道や市道、私道まで路線価は設定されています。この方式を「路線価方式」といいます。

路線価(単位:千円/㎡あたり)×面積(㎡)=評価額

路線価は行政機関の担当部署(道路維持課や道路管理課など)で確認できるほか、最近はインターネットを活用しての検索方法も整備されてきました。以下のURLで調べることができます。多くの場合、「路線価図」という形で地図に数字が埋め込まれています。

ただ、土地によっては路線価がない土地もあります。この場合は、路線価と同じく国や地方自治体によって算出されている「固定資産税評価額」を使用します。固定資産評価額に別途定められた倍率をかけるため、この方式を「倍率方式」といいます。

固定資産評価額(3年に1度改訂)×国税庁が定める倍率=評価額

土地の評価方法は、路線価がある場合は路線価方式です。時々「路線価方式と倍率方式のどちらかを選べる」と誤解されている人もいるため、気をつけるようにしましょう。次に建物の評価方法です。建物は、固定資産評価額がそのまま相続時の評価額となります。

固定資産評価額(3年に1度改訂)×1.0=評価額

なお、建築中の場合は完成済の評価額に0.7を掛けて計算します。

奥行きのある土地や不成形地についての考え方

ただ、すべての土地が路線価にしっかりと面した「成形地」であるとは限りません。奥行きのある土地や、ひとつの土地のなかに「高低差」がある場合があります。また、路線価の定められている道路に「複数接している」土地もあります。この場合、前項にてお伝えした路線価方式に「補正率」を掛けることによって、その土地の評価額を算出します。

路線価(単位:千円/㎡あたり)×面積(㎡)×補正率=評価額

一例として東京都には、以下の補正率一覧が公表されています。路線価方式で評価額を算出し、補正率を掛けることによって「その土地の評価額」を算出します。 

相続税軽減の特例を活用しよう

こうして算出した評価額を「相続時の不動産価額」として使用します。ただ、特例として相続税が軽減されるケースもあります。相続時に所有している土地や建物への税金が軽減されるケースは3つ。「小規模宅地の特例」「配偶者への相続特例」「居住用住宅の生前贈与」です。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例は、居住用住宅という遺族が生活するために不可欠な資産が課税対象となって、生活基盤を失うことのないように設けられています。適用面積に限度があり、合わせて満たさなければならない要件がいくつかあります。

居住用住宅では敷地面積330㎡までが対象で、この場合は80%もの評価額減額となります。 小規模宅地の特例を利用するためには、以下のいくつかの条件があります。ただ相続においてはとても使い勝手の良い制度のため、条件を満たしている住宅の相続は活用するようにしましょう。

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具体的に小規模宅地の特例を使う場面としては、土地の評価額を最大80%軽減できるため、特に同居の家族に居住用物件を譲渡するときに活用できます。配偶者はこの制度と次に述べる配偶者特例のどちらか、配偶者以外は小規模宅地の特例を活用すると効果的な節税対策になると理解しましょう。 

配偶者の税額軽減

配偶者の生活保障をするという視点から、遺産総額に配偶者の相続分を乗じた金額が1億6,000万円を下回る場合は1億6,000万円まで。超える場合も配偶者の法定相続分までは、相続税額が無税となります。被相続人が亡くなったあとも配偶者が「同じ家に住む」というケースはとても多いです。その時に活用できる税額軽減制度です。 

夫婦間の居住用財産の贈与特例

婚姻期間20年以上の夫婦において、居住用財産を取得する金銭の贈与が夫婦間で行われた場合、贈与税の基礎控除110万円(暦年贈与)のほかに最高2,000万円までの贈与が非課税となる制度です。

「取得する金銭の贈与」となっていますが、これは法律用語であり、実務上は契約者の所有名義を配偶者に移すにあたっては、「配偶者が取得する」という意味合いになり、実態は夫婦間の名義移動を意味しています。

この制度は相続を前にして、居住用住宅を夫の所有から妻の所有に移す、というもの。相続になると、(既に亡くなっている)夫は妻に贈与意思を伝えることができないため(遺言を残すくらい)、生前に妻の生活環境を整備できるメリットがあります。 このような特例は知っている場合と知らない場合で、相続税を納める金額は大きく変わります。最新の情報を把握するようにしましょう。

相続税対策にマンションは有効か

よく「相続対策にワンルームマンションがお勧め」という話を聞きます。ワンルームマンション(の所有権)は購入者が亡くなっても返還したり、消滅したりするものではないため、現在の世代だけではなく、次の子世代にも大きな影響を有しています。

現在の所有者が亡くなったとき、物件の所有権は「資産」として子どもなどに「相続」します。その時は相続税の対象となりますが、不動産の相続税評価額(相続における不動産の実勢価格)に応じて相続税が課税されます。現金で同じ額を所有している場合と比較して、7割や8割の資産額となり、効果的な「節税方法」になります。

相続時に不動産の「共有」は避けた方がいい?

この時に、不動産の共有は避けた方がいいと言われています。不動産の共有とは、たとえば長男と長女と「所有権を半分ずつ」持つということ。これは口約束ではなく、不動産登記という形で公的に証明します。

相続直後はこれからの不動産をどうするか、「話し合って決めていこう」となりますが、回収や売却、解体の時期も、両者で意見が異なったときに問題が生じます。その結果不動産の売却のタイミングを逃して、売却時には価値も下がってしまったという場合も。不動産の共有は「争族のきっかけ」にもなります。可能な限り、単独名義で所有するようにしましょう。

不動産を相続させたほうが良い場合と悪い場合

不動産を相続させたほうがいいのは、その不動産で引き続き「収益を生み出す」ことができる場合です。土地を貸す場合は、土地の所有者自身が土地を使って事業(賃貸マンションの経営など)がイメージできる場合などは、不動産を相続した方がいいでしょう。流行っている「民泊」もここに含まれます。

そうではない場合は、親が所有しているうちに不動産を売却するなどの「手離れ策」を検討した方がいいでしょう。 その理由は、相続した不動産が「負債」となると、相続した親族も困惑します。そのため、不動産を誰が持つかは相続時の遺産分割の大きなテーマとなります。

その不動産がプラスの資産を生むことができるのか、それとも負債予備軍なのかを判断して、相続資産としての位置づけを決めることが大切です。 いずれにしても不動産の処理は長い時間と、意見の異なる家族との「話し合い」が必要になるケースも多いため、可能な限り早めに取掛ることがポイントです。

まとめ

相続税における土地や建物の評価額算出方法を解説しました。土地によっていくつも算出方法があるため混乱してしまいますが、相続時はこの評価額算出が必須です。現在土地を所有している場合は早めに算出し、相続に備えるようにしましょう。









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工藤 崇

株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいとお考えの個人、 FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居企業。執筆実績多数。東京都千代田区大手町。