自己破産は借金が免除されることから非常に重宝される手続きではありますが、あくまで自己破産後にしっかりと仕事ができてこそ再建が出来ると言えるでしょう。
実際、自己破産手続きの開始に伴い、一部職業では資格制限によって就労することができない場合があります。
主には、お金や資産などを扱うような職業が資格制限によって仕事ができなくなりますが、実際にどのような職業の方が資格制限されてしまうのか?また、その期間はいつまでなのか?解説をしたいと思います。
※記事最後に自己破産によって資格制限を受ける職業の一覧を記載しております
目次
自己破産をした場合に資格制限を受ける職業
自己破産をした場合に資格制限を受ける代表的な職業は「士業」の方々です。士業とは、資格の最後に「士」と付く国家資格の俗称ではありますが専門性の高い職業と言えます。
資格制限の職業 | 定められた法令 |
弁護士 | 弁護士法第7条5、第17条 |
弁理士 | 弁理士法第8条10、第24条3 |
司法書士 | 司法書士法第5条3 |
土地家屋調査士 | 土地家屋調査士法第5条3 |
不動産鑑定士 | 不動産の鑑定評価に関する法律第16条3 |
公認会計士 | 認会計士法第4条4 |
税理士 | 税理士法第4条3 |
行政書士 | 行政書士法第2条の2の3項 |
通関士 | 通関業法第6条2 |
宅地建物取引士 | 宅地建物取引業法第18条3 |
上記の通り、士業の多くは自己破産によって資格制限が発生してしまいます。また、宅地建物取引士など職業によっては自己破産した事実を自ら申告する必要があることから、該当する職業の方は上記の法令をチェックするようにしましょう。
次に、士業以外の職業で自己破産によって資格制限を受ける場合をお伝えしたいと思います。
資格制限の職業 | 定められた法令 |
割賦購入あっせん業者の役員 | 割賦販売法第33条の2の6項 |
貸金業者の登録者 | 貸金業の規制等に関する法律第6条2 |
質屋を営む者 | 質屋営業法第3条 |
旅行業務取扱の登録者や管理者 | 旅行業法第6条の5、第11条 |
生命保険募集人 | 保険業法第279条、第307条 |
警備業者の責任者や警備員 | 警備業法第3条、第14条、第22条 |
建築業を営む者 | 建築業法第8条 |
下水道処理施設維持管理業者 | 下水道処理施設維持管理業者登録規程第6条 |
風俗業管理者 | 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第24条 |
廃棄物処理業者(一般・産業・特別管理産業) | 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 |
調教師や騎手 | 競馬法執行規則第22条第25条 |
旅行業、生命保険業、警備業など比較的雇用者数の多い職業も資格制限によって仕事が出来なくなってしまうことから自己破産による仕事の影響は大きいと言えるでしょう。
民法上における資格制限
また、自己破産で制限を受けるのは職業だけではありません。
民法上でも制限があり、取締役の場合は委任の終了事由に該当することから解任される可能性があります。その他には代理人や後見人になれないなどの制限もあるので該当する方は注意するようにしましょう。
民法上の制限 | 制限法令 |
取締役 (取締役の欠格事由ではない) | 民法第653条2(委任の終了事由) |
代理人 | 民法第111条(代理権の消滅事由) |
後見人 | 民法第847条 |
後見監督人 | 民法第852条 |
保佐人 | 民法第876条 |
補助人 | 民法第876条 |
遺言執行者 | 民法第1009条 |
自己破産後に資格制限を受ける期間
それでは、資格制限はいつまでなのか?その期間について解説を行います。
まず、自己破産によって資格制限を受けるのは「破産手続きの開始」からとなります。そして、資格制限が解除されるのは以下の4つのいずれかに該当する場合になります。
- 免責許可の確定が決まった時
- 破産手続きを廃止した時
- 破産手続きから10年間が経過した時
- 全ての借金が無くなった時
自己破産を行う9割の人は同時廃止によって資産がない状態で破産することが大半です。従って、上記の①に9割の人が該当することから、大半のケースは自己破産の手続き開始から免責許可の確定までと言えるでしょう。
免責許可の確定までの期間はおおよそ4ヶ月〜6ヶ月程度になりますので、資格制限の期間も同様に4ヶ月〜6ヶ月となることが一般的です。
資格制限のある職業に就く人が自己破産をした場合
上記の通り、自己破産をすると資格制限の職業には一生涯就労することが出来ない。という訳ではないとことをご理解頂けたと思います。とは言え、資格制限期間中は仕事をすることが出来ないので、その間自分自身がどのような扱いになるのか。不安に感じることが多いと思います。
安心材料としては、自己破産が解雇事由にはならないのでクビになるようなことはありません。自己破産によって資格制限を受けた場合の対処は「一旦退職し再雇用される場合」と「別部署への異動」が一般的になります。
一旦退職する。というのは、資格制限期間中のみ本人自らが自己都合によって退職し資格制限が解除された段階で再雇用されることになります。もしくは、管理部門など資格を必要としない業務への異動によって制限の解除を待つかたちになります。
まとめ
自己破産によって資格制限を受ける職業について解説を行いました。
同時廃止によって自己破産する場合は、おおよそ4ヶ月〜6ヶ月で資格制限が解除されますが、その期間中は仕事をすることが出来ないことから「退職し再雇用される」か「別部署へ異動する」かの2択が中心となっています。
また、自己破産以外の債務整理(任意整理や個人再生)であれば資格制限を受けませんので、借金の免除ではなく減額で完済できるならば別の選択肢も考えた方が良いでしょう。
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付録:自己破産をした場合に資格制限を受ける職業一覧
最後に自己破産をした場合に資格制限を受ける職業一覧をお伝えします。
本記事は借金完済の一歩編集部様の協力を得て作成を行なっております。借金完済の一歩様の記事は以下よりご確認いただけます。