【老後の相談室Vol.3】夫婦二人暮らしのゆとりある生活にはいくらの老後資金が必要?







相談者プロフィール
世帯主Aさん(55歳)、配偶者のBさん(53歳)の夫婦。子供はおらず、Bさんも数年前までは働いていた。預貯金は多く、複数の介護や医療に関する保険にも加入。個人年金も用意しています。自分では老後の備えは十分と思っています。老後も豊かな生活を続けられるかどうか、念のため診断してほしい。

将来も含めた収入を把握

FP
「今日は具体的な老後生活をお知りになりたい、ということでよろしいでしょうか?」
Aさん
「はい。定年まであと5年となりました。定年後も5年間は働き続けることができますが、収入は半減してしまいます。資産には余裕があると自負していますが、夫婦の意向として、節約や我慢はしたくないため、本当のところを知りたいと思っています」
FP
「わかりました。収支の内訳をうかがったのちに将来の家計シミュレーションをお出しします。最初に資産状況を確認させていただきます。現在の年収が700万円、預貯金3,000万円、日本株500万円で、配当が毎年10万程度。投資信託はローリスクのタイプで500万円。個人年金が60歳から10年間、年間120万円受け取れるのですね」
Aさん
「はい。ほかに私の終身保険が1,000万円、妻が500万円です。今お話しされた以外に、妻名義の預貯金も1,000万円あります。退職金は500万円程度ですが、住宅ローンの残金を退職金で清算予定なので、資産としては残りません。また、年金についてはどうでしょうか?」
FP
「年金はAさん、Bさんともに受給要件を満たしています。年金の受取額は、ボーナスを含めた平均給与と、勤続年数でおおよその目安がわかります。Aさんは勤続年数40年、平均給与40万円、Bさんは勤続年数30年、平均給与20万円ということでよろしいでしょうか」
Aさん
「大体そのくらいだと思います」
FP
「それでしたら、Aさんが年間約188万円。Bさんが年間約126万円の年金が受給できます。これには、国民基礎年金の年額77万9,000円も加算した額です」
Aさん
「夫婦で年間314万円の年金収入が見込めるのですね。しかし、本当にこの額を貰えるのでしょうか?」
FP
「懸念はごもっともです。現在は65歳からの年金受給額が70歳に引き上げられる可能性もありますので、ここでは、受給年齢70歳として将来を試算しようと思います」

※年間200万円資産が増えると推定(推定増加分に加算)

老後の支出を把握

FP
「続いて支出の把握をしたいと思います。現在の生活費は住宅ローンの返済を含めて月40万円程度、年間では400万円ほどで、住宅ローン返済は約100万円ですね。年間収支はプラスの300万円です。少し控えめの200万円プラスと考えても、定年までの5年間に1,000万円資産が増えると推定できます。なお、退職後に『コレをやりたい』という希望などはありますか?」
Aさん
「希望は2つです。70歳前にクルーズ旅行をしたいのです。現在は低価格のものも出ているそうですので、諸々合わせ1,000万くらいで行けたらと思っています。あと、高齢期でも安心して住めるよう、家の建て替えも検討しています。夫婦だけの小ぶりな家ですので、だいたい1,500万円くらいで可能でしょうか?」
FP
「それらの費用も含めて試算してみます。なお、退職後は不要の付き合いやスーツ代などが減るため、自然に生活費が切り詰められます。生活費は1割減として見積もります。」
Aさん夫妻の希望まとめ
1. 節約や我慢はしたくない
2. 60歳で住宅ローンを完済し、1,500万程度で自宅の建て替えをしたい
3. 70歳までにクルーズ旅行をしたい。予算は諸々含めて1,000万円

老後の収支をシミュレーション

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FP
「Aさん夫婦の老後を考えたとき、配当も含めた収入合計は約7,984万円、固定資産税や護保険料などの税金も含めた支出合計は約13,140万円です。ただし60歳時点の蓄えが6,000万円と推定されるため、85歳時点で家計はプラスになります」
Aさん
「それは何よりです。建て替えやクルーズ旅行も問題ないということですね」
FP
「はい。ただし、これはあくまで85歳までに、他の大きな支出がなかった場合です。また、85歳時点の推定残高は844万円となっており、仮に夫婦お二人が90歳まで長生きされたときは、資金が枯渇する可能性もあります。特にお子さんがいないため、介護状態になったときは施設の入居などが必要になる可能性が高いです。介護保険である程度の額は賄えても、入居金や月額利用料の一部は自分で用意しなければなりません」
【60歳~85歳までの資産状況】

A) 60歳時点手持ち資産(6,000万円)+60~85歳収入合計(7,984万円)=13,984万円
B) 60~85歳支出合計=13,140万円
A-B=844万円

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Aさん
「でも、家は傷んできているので治さないと。そうすると、クルーズ旅行は行けないのでしょうか」
FP
「いいえ。例えば、家を建て替えではなくリフォームにして、予算を1,000万円に抑えます。また、定年時に1割減の基本生活費を70歳以降、更に1割削減を目指します。それだけで85歳時点の試算は1,920万円近くにまで増えます。過度の節約生活はしたくない、ということでしたが、1割減ならば生活への影響は少ないと思うのですが、いかがでしょうか」
Aさん
「そうですね。クルーズ旅行は夫婦の夢なので譲れません。しかし、それ以外のところは妥協を検討する価値がありそうです。やみくもに節約はしたくありませんが、目的がある節約ならば遣り甲斐もあります」
FP
「逆に85歳時点で1,920万円残るとしたら、3~5割程度を別資産にしておいてもいいかもしれません。運用率は低いですが新たに終身保険に加入してもいいですし、運用に回してもいいでしょう。運用に回すのであれば、70歳までは分配金を再投資していきたいです。運用がうまくいけば、70歳以降の生活費削減割合を緩和できます」
Aさん
「なるほど。85歳まで残るお金だとしたら、単純に普通預金に入れていくのでもったいないですね」
シミュレーションまとめ

  •  希望をすべて叶えることは出来るが、85歳以降にそのしわ寄せがきてしまう
  • ただし早い段階で、資産の配分を考え、抑えるべきところを知れば85歳以降も問題はない
  •  希望である「節約はあまりしたくない」「家の建て替え」「クルーズ旅行」のうち、夫婦の夢であるクルーズ旅行を最優先に考えた

老後生活で大切にしたいこと

FP
「Aさんご夫妻の場合、いちばん大切なのは夫婦のクルーズ旅行ですね」
Aさん
「そうです、そこは譲れません」
FP
「今日は主に、その夢を叶えるためにどこを削ればいいのか、とういう話をさせていただきました。できれば今後、他の面でもその考え方を活かしていただきたいです」
Aさん
「どういうことでしょうか?」
FP
「生活費は限られています。そのなかで、すべての欲望を満たしていたら、潤沢な資産もあっという間になくなってしまいます。優先順位の高いものと低いものを明確にして、使えるお金の中で生活していくことが求められるようになってきます」
Aさん
「そうですね。使おうと思えばいくらでも使えてしまいます。クルーズも、予算1,000万円で収まるよう気を引き締めていきたいです」
FP
「優先順位の考え方は他にも応用できます。例えば夫婦二人の大事な住まいである自宅ですが、自宅の優先順位はなんでしょう。住み続けることでしょうか?

それとも、夫婦二人の住まいがあることでしょうか?突き詰めて考えることで、自宅をリフォームするのではなくよりコンパクトな住まいへの住み替えを行う、もしくは自宅を担保に入れ、リバースモーゲージとして活用するといった選択肢が見えてくるかもしれません。

先ほども触れましたが、お子さんがいないので老人ホームへの入居も可能性が高いです。将来的には自宅をリバースモーゲージで活用して入居一時金を手に入れるのもいいかもしれません」

Aさん
「そうですね。積極的に検討してみたいと思います。お金について考えることは、残りの人生を夫婦でどう過ごすか考えることでもあるのですね」
FP
「その通りです。夫婦でも、老後について話し合う機会はそうそうありません。今日のチャンスにBさんとも活発な意見交換をおすすめします」
Aさん
「有意義にお金を使うためにも、色々と話し合ってみます」

まとめ

ゆとりがあるAさん世帯ですが、定年後は世帯収入が減るのは避けられません。現役時と同じ感覚で支出を続けたら、やはり資産は乏しくなってしまいます。限りある収入や資産を有意義に使うためには以下の2つが重要です。

2つの重要なポイント
1. 現状把握とシミュレーションで将来の家計を知る
2. 優先順位をつけて、メリハリのある支出を行う

上記の2点に留意して、必要なこと、大切なことにお金を使っていきましょう。









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ABOUTこの記事をかいた人

横山 晴美

AFP/住宅ローンアドバイザー。 企業に属さない独立FP。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホームの購入相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案する。安心して住宅を購入できるだけでなく、家計の課題も解決できるとの声を頂いている。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。