退職金は税金がかかるの?どのくらい課税されるの?と、受け取る金額が大きいだけに税金面も気になるところです。
退職金には住民税と所得税が課税されますが、正しい申告を行えば税金が10.21%なのに対して申告漏れが発生してしまうと課税される税金が20.42%まで税率が跳ね上がってしまうのです。
そこで今回は、退職金を受け取った際に税金の正しい手続きと住民税、所得税の計算方法について手順別にご紹介したいと思います。
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目次
退職金の税金(住民税・所得税)を計算するまでの手順
まずは、退職金の税金を計算するまでの理想的な手順についてお伝えします。
- 退職所得の受給に関する申告書を提出する
- 退職所得控除額を計算する
- 退職所得金額を計算する
- 退職所得金額から所得税と住民税を計算する
- 退職金の手取り額を計算する
重要なポイントになるのは「退職所得の受給に関する申告書を提出する」というパートです。早速詳細について確認していきましょう。
手順1.退職所得の受給に関する申告書を提出する
退職金を受け取る際に勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出するようにしましょう。「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると退職所得が算定され退職金の税金が優遇されます。
ちなみに、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと退職金の額面に対して20.42%も所得税が徴収されてしまいますので要注意です。
まずは、「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合の税金の計算方法について順に確認していきましょう。
手順2.退職所得控除額を計算する
さて、「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合の税金の計算方法ですが、まずは「退職所得控除額」を計算したいと思います。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円 × A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (A ー20年) |
「退職所得控除額」は上記の表の通り、勤続年数によって受けられる控除額が異なり、勤続年数が20年以下の方は40万円×勤続年数によって算出され、20年以上の方は800万円+70万円×(勤続年数ー20年)によって計算されます。
イメージがつきやすいように実例に基づいた計算方法を以下に記載させて頂きます。
- 勤続年数:28年7ヶ月(退職所得控除額の勤続年数は繰り上げになるので29年)
- 退職一時金:2000万円
上記の条件を基準とした場合の退職所得控除額の計算式は以下のようになります。
- 800万円+70万円 ×(29年ー20年)=1430万円(退職所得控除額)
手順3.退職所得金額を計算する
さて、退職所得控除額の算出が出来たところで、次に「退職所得金額」を計算したいと思います。退職所得金額も計算式が定められておりますのでまずは数式を確認してみましょう。
計算式 |
退職所得金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2 |
退職所得金額は退職金から先ほど計算した退職所得控除額を引き半分にした金額となりますので、実際に計算をしてみましょう。
- (2000万円ー1430万円)× 1/2=285万円(退職所得金額)
手順4.退職所得金額から所得税と住民税を計算する
退職所得金額まで算出しましたのでようやく、所得税と住民税の計算が可能になります。
まず、住民税は一律10.21%(市町村民税6%・都道府県民税4%)が課税され、所得税は「超過累進課税+復興特別所得税額2.1%」になりますので、超過累進課税の一覧は以下の表を参照ください。
課税される所得税 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超え 330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円超え 695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円超え 900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円超え 1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円超え | 40% | 279万6000円 |
※復興特別所得税額とは、東日本大震災の復興支援を目的に平成25年から平成49年まで所得税率に+2.1%する制度になります。従って、上記の表に+2.1%を加算して所得税の計算を行う事になります。
- 所得税:285万円(退職所得金額)×10.21%(所得税率)=29万985円(所得税)
- 住民税:285万円(退職所得金額)×10%(住民税率)=28.5万円(住民税)
- 所得税+住民税=57万5985円
手順5.退職金の手取り額を計算する
住民税、所得税の算出ができましたので、最後に退職金の手取り額を計算したいと思います。手取り額は収入金額から税金(所得税と住民税)を引いた金額となりますので以下のように計算することが可能です。
- 2000万円ー57万5985円(所得税29万985円・住民税28.5万円)=1942万4015円
上記の通り、退職金を2000万円受け取った方の退職金の手取り額は約1942万円となります。
退職所得の受給に関する申告書を提出しないとどうなる?
ここまでが、「退職所得の受給に関する申告書」を提出し税金の優遇を受けた場合の計算方法になります。では、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと一体いくらの税金が発生してしまうのか確認したいと思います。
まず、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと「手順2.退職所得控除額を計算する」で解説した退職所得控除を受けることができません。
次に「手順3.退職所得金額を計算する」で解説した「1/2課税」も適用外になります。従って、収入金額の20.42%の所得税が発生することになります。どのような計算になるのか確認してみましょう。
- 2000万円 × 20.42%=408万4000円(所得税)
「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合の所得税は29万985円でしたので、提出有無によって所得税の課税額が大きく異なることから必ず提出するようにしましょう。
まとめ
退職金の税金について、受け取り時の申請書類から退職所得、税金、手取り額の計算方法を解説しました。「退職所得の受給に関する申告書」を提出するか否かで徴収される所得税が大きく異なることから原則提出が必要になります。
万が一提出漏れがあった場合は、本人が確定申告を行うことで所得税と復興特別所得税額の還付を受けられる可能性があります。
一方で、「退職所得の受給に関する申告書」を提出した方については税金が源泉徴収されますので、確定申告は原則不要となります。