老後資金は3000万円必要、いやいや2000万円でも大丈夫。1億なければ厳しい。など複数の情報が飛び交っていますが、老後資金の算出は個人の生活スタイルによって大きく変わることから一概には言えないのが現状です。そこで老後の生活においての変動リスクを把握し自分に合った老後の計画を立てましょう。
目次
なぜ老後資金が3000万円必要と言われるのか?
これは総務省の「家計調査」のデータに基づいているケースが多く、高齢夫婦無職世帯の家計収支(2016年)によると、60歳-69歳の支出額平均は277,283円。70歳以上の支出額平均は238,650円という調査結果が出ております。
このデータを元に支出のシミュレーションをすることで老後の生活費を算出したいと思います。
支出のシミュレーション
それでは老後の生活費をシミュレーションしてみましょう。
老後資金の使用開始年齢 | 69歳までの生活費 | 70歳-85歳までの生活費 | 老後の生活費合計 |
60歳 | 33,273,960円 | 42,957,000円 | 76,230,960円 |
61歳 | 29,946,564円 | 72,903,564円 | |
62歳 | 26,619,168円 | 69,576,168円 | |
63歳 | 23,291,772円 | 66,248,772円 | |
64歳 | 19,964,376円 | 62,921,376円 | |
65歳 | 16,636,980円 | 59,593,980円 | |
66歳 | 13,309,584円 | 56,266,584円 | |
67歳 | 9,982,188円 | 52,939,188円 | |
68歳 | 6,654,792円 | 49,611,792円 | |
69歳 | 3,327,396円 | 46,284,396円 | |
70歳 | 0円 | 42,957,000円 |
60歳から老後資金を活用した場合、実に85歳まで7600万円の生活費が発生することがわかります。当然これ以上の収入と貯蓄が必要になるため、次に収入のシミュレーションを算出してみましょう。
収入のシミュレーション
次に収入面のシミュレーションになりますが、人それぞれ収入は異なることから厚生労働省の「平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を元に厚生年金14.5万円、国民年金5.4万の19.9万円を月々の収入と仮定します。その場合、65歳-85歳までの20年間で47,760,000円の年金収入があることが分かります。
必要な貯蓄額を算出する(収入-支出=過不足金額)
収入と支出の金額を差し引くことにより、老後資金がいくら不足するのかが分かります。この不足金額分は最低でも貯蓄しなければ老後破産。という状況になりかねないためしっかりと確認しましょう。
老後資金の使用開始年齢 | 老後の収入(年金) | 老後の生活費合計 | 老後の生活に必要な貯蓄額 |
60歳 | 47,760,000 | 76,230,960円 | -28,470,960円 |
61歳 | 72,903,564円 | -25,143,564円 | |
62歳 | 69,576,168円 | -21,816,168円 | |
63歳 | 66,248,772円 | -18,488,772円 | |
64歳 | 62,921,376円 | -15,161,376円 | |
65歳 | 59,593,980円 | -11,833,980円 | |
66歳 | 56,266,584円 | -8,506,584円 | |
67歳 | 52,939,188円 | -5,179,188円 | |
68歳 | 49,611,792円 | -1,851,792円 | |
69歳 | 46,284,396円 | 1,475,604円 | |
70歳 | 42,957,000円 | 4,803,000円 |
こちらを見ると、なぜ「老後資金が3000万円必要」と言われるのかが分かります。60歳から老後資金を使い始めた場合、不足金額は2800万円となり、これに住宅のリフォーム費用や介護費用、老人ホームへの入居金、病気などの備えを考えると+300万円-500万円程度貯金は欲しいところです。そうなれば3000万円は超えてしまう計算になります。
60歳-64歳の無収入期間は1700万円の貯金が必要
年金の支給年齢は65歳からですので60歳でリタイアした場合は60歳-64歳までの間は無収入で生活する必要が出てきます。 この金額を計算してみましょう。
月間支出金額277,283円×5年間(60ヶ月)=16,636,980円となります。 60歳でリタイアする場合は少なからず引退時の貯蓄が1700万円程度必要となりますが、これが退職金や現役時代の預貯金で足りるのか?が大きな問題になります。
そのため、年金支給の対象となる65歳までは何かしらの方法で収入源を確保することが望ましいでしょう。
老後資金3000万円が用意できても老後の生活は安定しない
老後資金のシミュレーションを見ると3000万円-3500万円程度の貯蓄が用意できれば老後の生活は大丈夫か。と考えてしまいそうですが、これは大きな間違いなのです。それでは、なぜ老後資金が3000万円だと足りなくなるのかを見てみましょう。
医療の発展による長寿化
先ほどのシミュレーションは85歳で亡くなった場合の計算です。ただ、医療が発展し毎年寿命が延びている昨今、85歳よりも長生きする可能性が多いにあります。仮に90歳まで生きることができた場合は+1430万円程度の支出が増えます。これで4500万-5000万円程度の老後資金が必要になる計算です。
先が読めない法改正
老後の生活は20年〜30年と非常に長いスパンを考える必要があります。この期間で法改正がしない方が不思議と考えるべきであり、実際にいくつかの法改正がすでに動いている現状です。
- 年金カット法案(年金制度改革関連法)
- 高額医療費の自己負担額の増加
- 消費税10%への引き上げ
- 介護保険制度の改正
- 年金支給年齢の引き上げ
直近の法改正だけでも5つ程度の計画が動いています。 どれも高齢者の生活に影響を与える改正ばかりですので、ここにも備えて老後資金の確保は必須でしょう。
例えば、消費税増税が施行された場合、老人ホームの月額費用が15万円(税抜き・金額仮定)が消費税8%時は16.2万円だったものから消費税10%では165,000円となり月額+3000円の出費が増えることとなります。
その場合、仮に70歳-85歳まで老人ホームに入居した場合、3000円×180ヶ月=54万円も負担が増えることになります。 この他にも、年金カット法案や支給年齢の引き上げは直接的な収入減少につながる可能性が高い法改正となるため老後資金の影響は重たくなるでしょう。
老後資金は結局いくら用意すべきなのか
老後資金が3000万円ではかなり切り詰めた老後の生活を余儀なくされるでしょう。その上で、やはり5000万円程度は用意した方が懸命であると考えられます。もちろん退職金込みの金額でも問題ありません。
ただ最近は、退職金の支給額も減っていますし、そもそも退職金が出ない会社も多くあると思います。その場合は5000万円の貯蓄を作ること自体非常にハードルが高いことだと思います。
今の若い世代には「NISA」や「iDeco」という個人型確定拠出年金という投資商品も生まれ、未来に備えた対策が講じられていますが、すでに老後の生活間近。という方におすすめな方法がリバースモーゲージです。
リバースモーゲージが老後資金に役立つ理由
リバースモーゲージは住宅を担保に融資を受け、返済は死亡後に担保である住宅を金融機関に明け渡すことで返済を完了させる金融商品です。 リバースモーゲージの詳細はリバースモーゲージの全てが分かる!老後資金のプロが制度を徹底解説!を参照ください。
なぜリバースモーゲージがおすすめなのか?と言いますと、60歳以上の方の資産は実は6000万円近くあると言われています。ただ、現金はそのうちの2000万円程度であり、残りは不動産資産が4000万円になる計算です。
不動産(持ち家)にただ住み続けるだけでなく、担保として融資を受けることで現金を手に入れることができるリバースモーゲージは、老後資金の充実として高いメリットがあると言えるでしょう。 もちろん融資額は物件の状態により変動しますが、ある程度の現金を入手する方法として検討する価値は高いと考えられます。
まとめ
老後資金について不安だと思う方は非常に多くいらっしゃいますが、不安だと思いながらも危機に直面した訳ではないので具体的な行動に移していない方も多くいるようです。老後の生活を甘く見ることなく事前の準備をしっかり立てる必要があるでしょう。