退職金の相場や税金の支払額はいくら?退職前に知っておくべき全知識







退職金がいくらもらえるのか?税金は何をどのように支払うのか?など退職金は金額が大きいだけに疑問に思うことも多いでしょう。今回は、退職金の気になる情報をまとめ一挙に解説を行いたいと思います。このページをご確認いただくことで退職金のイロハが理解できます。

そもそも退職金とは?一時金と年金の2種類がある

退職金と聞くと定年退職時や企業の退職時に勤続年数に応じて一括でまとまったお金がもらえると理解している方も多いと思いますが、法的に退職金の支給が義務付けされているわけではありません。また、退職金も一括払いの「退職一時金」と分割で支給される「退職年金」の2種類に分かれますので、順に解説を行いたいと思います。

なぜ企業は退職金を支給するの?

支給の義務がなく支払額も非常に負担が重い退職金を企業はなぜ支払うのでしょう?これには大きく4つの理由があります。

  • 『優秀な従業員に魅力的な企業であることをPRし採用力を高めるため』
  • 『勤続を奨励することで離職率を下げるため』
  • 『退職後に従業員の生活を支えるため』
  • 『退職金の支給は所得税法上優遇されるので節税効果があるため』

退職金を支給している企業は75%

上記の理由から退職金を支給することは様々なメリットを享受することが出来ます。しかしながら、やはりまとまった金額を用意することは企業にとっても負担が重いものです。厚生労働省の「平成25年就労条件総合調査結果の概況」を確認すると退職金を支給している企業の割合は75.5%となっており、4社に1社は退職金が支給されないという事実もあります。

退職金の支給条件は勤続3年以上からが50%

退職金の支給条件は、東京都産業労働局の調査を参照すると、勤続3年以上としている企業が全体の50%となり、次いで勤続1年以上が16%、2年以上が14%となっていることから3年の勤続を目安としている企業が多い傾向です。

一時金と年金の種類を解説

一般的に退職金呼ばれるのは「退職一時金」として一括で支払いがされるものでしょう。加えて「退職年金」と呼ばれる「企業年金」として支給する企業もあります。「企業年金」は年金の3つの階段である一番上の3階に位置するものです。(1階は国民年金、2階は厚生年金)それぞれの種類を解説してみましょう。

退職金の種類確定項目制度の種類
退職一時金確定給付型 基本給連動型
 ポイント制
 定額制
確定拠出型 中小企業退職共済制度
 特定退職金制度
退職年金
(企業年金)
確定給付型 確定給付型企業年金制度
 厚生年金基金制度
 キャッシュバランスプラン
確定拠出型 確定拠出年金制度(企業型)

退職金の種類は「退職一時金」と「退職年金」の2つの種類に分かれそれぞれ組み合わせている企業やどちらか一方のみなど企業によって大きくことなります。そして、退職金の種類は大きく2種類ですが、支給方法は複数の種類に分岐しているのもポイントです。それぞれ詳細を確認してみましょう。

  • 退職一時金・基本給連動型(確定給付型)

基本給連動型とは、「基本給×勤続年数×給付率」から算出するもっとも一般的な退職金の給付率の計算方法ですが、勤続年数が長ければ単純に支給額が増えることから社員の貢献度が加味されない点がデメリットとなり見直す企業が増えている状況です。

  • 退職一時金・ポイント制(確定給付型)

ポイント制とは、職能、社内評価、役職、社内資格など会社での貢献度をポイント化し項目に応じて合算する仕組みです。上記の基本給連動型と比べると貢献度が優先されるので努力が報われる制度として大企業が取り入れる傾向にあります。

  • 退職一時金・定額制(確定給付型)

退職一時金定額制とは、勤続年数と役職に加え退職理由を加味して定額で支給される仕組みです。基本給を考慮しない分メンテナンスが容易であり中小企業を中心に導入する企業が多いと言えます。

  • 退職一時金・中小企業退職共済制度と特定退職金制度(確定拠出型)

単一企業では、退職金制度を導入することが難しい企業向けに「中小企業退職共済制度」は国、「特定退職金制度」は商工会議所や商工会が代わって運営する年金制度です。運営元は異なりますが仕組み自体は同じで、掛け金を企業が拠出し社外で積み立ててもらう制度となっています。

  • 退職年金・確定給付型企業年金制度(確定給付型)

確定給付型企業年金制度とは、「確定給付企業年金法」に基づく企業年金制度で企業が一括で運用及び保証をする仕組みとなっており従業員には責任やリスクは伴いません。そのため、一般的には掛け金を企業が拠出するのですが、場合によっては加入者である従業員が拠出することも可能です。

  • 退職年金・厚生年金基金制度(確定給付型)

厚生年金基金制度とは、「厚生年金保険法」に基づき、企業と従業員が5:5で掛け金を拠出します。ただ、こちらも従業員には責任やリスクはなく企業側が責任を担保する仕組みとなっています。

  • 退職年金・キャッシュバランスプラン(確定給付型)

キャッシュバランスプランとは、掛け金を企業側が負担をしますが、リスクの許容は一定額までとする仕組みです。そのため一定額までは企業の責任のもと運用がされますが、一定額を超えた部分については景気によって変動することから従業員も一部リスクを追うこととなります。

  • 退職年金・企業型確定拠出年金制度(確定拠出型)

企業型確定拠出年金制度とは、従業員がリスクを全て追う仕組みの退職金制度です。別名401kと呼ばれるのが企業型確定拠出年金制度です。掛け金は全額企業が負担しますが、どこを運用先にするのかは従業員が決めます。そのため、しっかりと運用しなければ退職金が想定よりも少ないというトラブルが発生するので注意が必要でしょう。

退職年金制度へ移行する企業が増加

企業にとって退職一時金はやはりまとまった金額を支出することになるため負担が重たいと言えます。そのため、退職年金制度へ移行する企業が増えているようです。その際、会社が倒産するリスクを鑑みて外部機関を活用した退職金運用を行う方法が注目されています。

退職金の有無や制度の詳細は就業規則を確認

退職金にはさまざな種類があることをご理解頂けたと思いますが、実際、現在お勤めの会社がどのような退職金制度を導入しているのか知りたい方は就業規則の退職金規定を確認すると基本的には記載されていると思います。就業規則に詳細が記載されていない場合は、退職金を管理しているであろう部署(一般的には人事もしくは総務)に問い合わせをすることで詳細を教えてくれますので一度確認することをおすすめします。特に、定年退職間近で老後資金の計画を立てている方はなるべく正確な情報を入手するように心がけましょう。

退職金の相場は?いくらもらえる?

退職金の相場は企業規模、学歴、勤続年数によって異なる傾向があります。中央労働委員会が2年1度退職金の状況を調査しておりますので「平成27年賃金事情等総合調査(確報)」から退職金の相場を参照したいと思います。まずは学歴別の退職金相場ですが、大卒者は勤続35年で1978万円、定年時で2304万円となっており、高卒者は勤続35年で1541万円、定年時で2015万円となっております。

勤続年数大学卒業者高校卒業者
勤続35年1978万円1541万円
定年時2304万円2015万円

中小企業・上場企業の退職金相場

退職金の相場を企業規模に確認すると、やはり経営基盤の安定性が高い上場企業の方が支給額が多く2357万円が退職金支給額の平均になっております。一方、中小企業は1383万円とやはり上場企業に比べると1000万円近く支給額が少ないのがネックと言えます。

企業規模定年時のモデル退職金
中小企業の退職金相場1383.9万円
上場企業の退職金相場2357.7万円

退職理由別の退職金相場

次に退職理由によっても退職金の支給額が異なることから「定年退職」・「会社都合」・「自己都合」の全世代平均の退職金相場を確認すると定年退職まで務めた場合は1966万円、会社都合の場合は1778万円となっています。自己都合は若年層も平均に含まれることから大きく支給額が落ち448万円となっています。

退職理由定年退職会社都合自己都合
支給額の平均1966万円1778万円448万円

学歴別・勤続年数別の退職金相場

退職金の支給額は学歴及び勤続年数によって大きく差が生まれますので、それぞれ「学歴×勤続年数」で退職金の支給額の相場を調べてみたいと思います。

勤続年数大卒者高卒者
モデル年齢退職金支給額モデル年齢退職金支給額
勤続3年25歳70万円21歳50万円
勤続5年27歳112万円23歳92万円
勤続10年32歳316万円28歳227万円
勤続15年37歳605万円33歳421万円
勤続20年42歳978万円38歳746万円
勤続25年47歳1471万円43歳1132万円
勤続30年52歳2112万円48歳1528万円
勤続35年57歳2480万円53歳1986万円
60歳時点60歳2674万円60歳2315万円
定年時65歳2489万円65歳2268万円
  • 勤続3年の退職金相場は大卒者70万円・高卒者50万円が平均

勤続年数3年の場合は、少額ではありますが、大卒者で70万円、高卒者で50万円程度が退職金として支給されるのが相場のようです。転職活動を行うための当面の資金としては役に立つ金額と言えるでしょう。

  • 勤続5年の退職金相場は大卒者112万円・高卒者92万円が平均

勤続5年の退職金相場は大卒者が112万円、高卒者が92万円となっています。まだまだ会社の中では若手の分類になることから退職金もそこまで大きな額ではありません。

  • 勤続10年の退職金相場は大卒者316万円・高卒者227万円が平均

勤続10年の退職金相場は、大卒者で316万円、高卒者では227万円とまだまだ十分と言える額には程遠いものの、年収の半分程度の金額がまとまって手に入る目安とも言えるでしょう。

  • 勤続15年の退職金相場は大卒者605万円・高卒者421万円が平均

勤続15年の退職金相場は、大卒者が605万円、高卒者が412万円と年収並みの退職金が入る段階になります。仮に退職してもしばらくの間は退職金をベースに生活できるので非常に頼もしい金額と言えます。

  • 勤続20年の退職金相場は大卒者978万円・高卒者746万円が平均

勤続20年の退職金の相場は、大卒者で978万円、高卒者で746万円となります。40歳を越えるとセミリタイアを検討する方が増えるのも大卒者であれば1000万円近い退職金が手に入り、若い時からコツコツ貯蓄した方であれば緩やかに稼ぎながら生活することも出来る水準と言えます。

  • 勤続25年の退職金相場は大卒者1471万円・高卒者1132万円が平均

勤続25年の退職金の相場は、大卒者で1471万円、高卒者で1132万円と共に1000万円の大台を突破するようです。主要な役職を任せれている方も増えるでしょうからこの辺りから個人の差も生まれてくると考えられます。

  • 勤続30年の退職金相場は大卒者2112万円・高卒者1528万円が平均

勤続30年の退職金相場は大卒者で2112万円、高卒者で1528万円となります。大卒のモデル年齢である52歳は企業によっては早期定年退職制度などの勧告を受けやすい年齢でもあります。子供がすでに独り立ちしている方であればこの辺りで定年生活を始める方も出てくるでしょう。

  • 勤続35年の退職金相場は大卒者2480万円・高卒者1986万円が平均

勤続35年の退職金相場は大卒者で2480万円、高卒者で1986万円となります。ここまでお勤めになられたのであれば、定年退職まであと一歩とも言えます。高齢者再雇用制度なども定年まで働くことで活用することができますので、もう少し頑張っても良いでしょう。

  • 60歳時点の退職金相場は大卒者2674万円・高卒者2315万円が平均

60歳時点での退職金相場は大卒者で2674万円、高卒者で2315万円となります。多くの企業は60歳を定年退職の年齢に設定していることから、上記の金額で老後資金が足りる場合はこのまま老後の生活をスタートすることとなります。まだ老後資金が不足する方は高齢者再雇用制度を活用し雇用期間の延長を行うこともできます。

  • 定年時の退職金相場は大卒者2489万円・高卒者2268万円が平均

定年時の退職金の相場は大卒者で2489万円、高卒者で2268万円となります。60歳時点よりも退職金の支給額が減少するのは60歳時点で一度退職金を受け取る方がいることが想定されます。

国家公務員の退職金支給額の相場

公務員は退職金制度が手厚いと言われますが、実際どの程度退職金が支給されているのか確認してみましょう。国家公務員は内閣官房が調査している「退職手当の支給状況」を参照したいと思います。定年まで勤めたい場合の国家公務員の退職金支給額の平均は2181万円となっており民間企業とそこまで差がないようですが勤続年数別の退職支給額の平均を確認してみましょう。

勤続年数別の国家公務員の退職金支給額

勤続年数退職金支給額(自己都合退職の場合)
5年未満23万円
5年から9年87万円
10年から14年274万円
15年から19年528万円
20年から24年942万円
25年から29年1384万円
30年から34年1734万円
35年から39年1993万円
40年以上2193万円

退職金を受け取った時の税金の支払い

退職金を受け取るとその年の年収は大幅に増加することになりますが、この影響を大きく受ける税金が「所得税」と「住民税」でしょう。共に年収によって納める税金の額が変わりますのでそれぞれ詳細を確認してみましょう。

退職金を受け取った際の所得税の扱いと税率

まずは退職金を受け取った際の「所得税」の扱いについてですが、通常の通りの収入として退職金から所得税を徴収すると非常に負担が大きくなってしまいます。そこで、通常所得とは別に「退職所得」として別物扱いをするようになっています。以下の計算式から退職所得を算出をし、所得税率を掛けることによって退職所得にかかる税金を算出することができます。

(収入金額 - 退職所得控除額 )× 0.5 = 退職所得の金額

  • 収入金額の求め方

実際に口座に入金される金額はすでに源泉徴収された金額が振込されることが一般的です。そのため「収入金額」を求める場合は、「手取金額+源泉徴収額」を足すと求めることができます。

  • 退職所得控除額の求め方

退職所得控除額は以下の計算式によって算出が可能になります。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
(80万円に満たない場合は80万円)
20年越800万円+70万円×(勤続年数-20年)
  • 所得税率の算出方法

収入金額から退職所得控除額を引いた額を半分にした金額が退職所得となり、以下の表の税率を掛け合わせて所得税額を算出します。

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超え330万円以下10%9.75万円
330万円超え695万円以下20%42.75万円
695万円超え900万円以下23%63.6万円
900万円超え1800万円以下33%153.6万円
1800万円超え4000万円以下40%279.6万円
4000万円超え45%479.6万円
所得税額の計算例

退職所得1800万円(源泉徴収前)、勤続年数24年6ヶ月の場合

  • 収入金額:1800万円
  • 退職所得控除額:800万円+70万円×(25年-20年)=1150万円
  • 退職所得:(1800万円-1150万円)÷2=325万円
  • 所得税額:325万円×10%-9.75万円=22.75万円

退職金を受け取った際の住民税の扱いと税率

続いては、退職金を受け取った際の「住民税」について解説を行います。住民税は退職所得の金額に市町村民税6%と都道府県民税4%をそれぞれ掛け合わせた金額となります。

退職所得×10%=退職金の住民税

住民税の計算例

退職所得は退職金の支給額から退職所得控除額を引き半分にしたものになりますので、先ほどの所得税の計算例でお伝えした退職収入が1800万円の場合を例に計算を行なうと、退職所得は325万円となります。この金額に市町村民税6%と都道府県民税4%をそれぞれ掛け合わせることで住民税が計算できます。

  • 325万円(退職所得)×6%(市町村民税)=19.5万円…①
  • 325万円(退職所得)×4%(都道府県民税)=13万円…②
  • 住民税額①+②=32.5万円

退職所得は確定申告すべきなのか?

一般的には退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、所得税と住民税が計算され源泉徴収されますので確定申告が不要になります。ただ、退職金を受け取った後、再就職しないと「年間の所得が通年よりも少ない」というケースが出てきます。この場合、源泉徴収された金額多くなっている場合があるのです。そのため、確定申告を行うことで払い過ぎた税金の還付が期待できることから所得が低下する場合は確定申告を行いましょう。

まとめ

退職金の種類、相場、税金について解説を行いました。複雑な制度にも見えますが、支給される金額も非常に大きくなるのでしっかりと知識を身につけておきたいポイントでもあります。また、退職年金を導入している企業で確定拠出年金制度の場合は、しっかりと運用しなければ退職時に思いの外退職金が少ない。という事態となってしまいますので放置せずにしっかりと運用を行うようにしましょう。









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