日本人の平均寿命は年々伸びており、平成28年度では男性が80.98歳、女性が87.14歳となります。この平均寿命は、今から33年後の2050年には男性が84歳、女性は90歳まで寿命が伸びると言われています。
そのため、「長生きリスク」と呼ばれる言葉が誕生しており、老後資金が枯渇し生活できない高齢者が社会問題となるなど様々な暗い予測が立てられているのです。
この老後の不安に対して、保険会社が商品化を進めている1つに「トンチン保険」があります。トンチン保険は年金タイプの保険商品となり長生きリスクに備えていると言われていますが、どのような制度なのかメリット・デメリットを含めて解説を行います。
トンチン保険の意味
さて、まずはこのユニークな名前について意味をお伝えしたいと思います。多くの方は「トンチンカンな保険。。」と思ったのではないでしょうか。
もちろん、トンチンカンな保険という意味ではありません。
「トンチン」の意味は、イタリア・ナポリ生まれの銀行である「ロレンツォ・トンチ」が考案した保険商品であることから「トンチン」の名前がついたと言われています。
トンチン保険とは?仕組みを解説
さて、トンチン保険の意味を理解頂いたところで、仕組みについて解説したいと思います。
まずはこちらの図をご覧ください。

出典:第一生命
トンチン保険とは、死亡保障や解約返還金を抑えた保険商品となっており、決められた保険料を払込期間まで納付することで払込期間以降に年金として支給される制度です。
この年金の支給期間は保険会社によって異なりますので「トンチン保険」を検討する際の1つ比較軸になります。主には期間を決めて年金を支給するタイプと終身で年金を支給する2つのタイプと両方を掛け合わせた商品が一般的です。
そして、「トンチン保険」の最大のポイントは、時間の経過と共にお亡くなりになられた方が納付した保険料を生きている人の年金原資として活用される点です。
そのため、長生きすればするほど得になり早く亡くなってしまうと損をする保険商品と言えます。
トンチン保険のメリット・デメリット
改めてトンチン保険のメリット・デメリットを整理しましょう。
トンチン保険のメリット・デメリット | |
メリット |
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デメリット |
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メリット面では、年金が受け取れる期間が決まっている「年数確定年金」と生涯受け取れる「終身年金」の2種類がありますが、「終身年金」を選択することで長生きしても一定の金額が支給され続けるメリットがあります。
一方で損得の基準が90歳以上長生きする必要があることから平均寿命を考えると多くの方が損をしてしまうという側面もあります。
まさに長生きリスクに備えた保険商品と言えます。
ただ、長生きする前提であれば「年金の受給年齢を70歳まで繰下げると140%増で受け取れる」でも解説しましたが年金の受け取り期間を遅らせるだけで支給額を最大140%増やせる方法もありますので、一概にトンチン保険に頼る必要もなさそうです。
トンチン保険を取り扱う保険会社の商品を比較
では、トンチン保険にはどのような商品があるのか。トンチン保険を提供している主要保険会社である「日本生命」と「第一生命」の商品を比較したいと思います。
日本生命のトンチン保険|グランエイジの特徴
日本生命のトンチン保険「グランエイジ」は50歳から87歳までの方が契約できる仕組みとなっており、「10年確定年金」と「5年保証+終身年金」の2つの商品で構成されています。
やはり、一生涯に渡り保障される方が年金としての役割を果たすことができるため、「5年保証+終身年金」にて特徴をお伝えします。
グランエイジ 5年保証+終身年金の場合 | 男性 | 女性 |
加入可能年齢 | 50歳 | 50歳 |
払込満了年齢 | 70歳 | 70歳 |
年金支給年齢 | 70歳 | 70歳 |
保険料/月 | 5万790円 | 6万2,526円 |
保険料/総額 | 1,218万9,600円 | 1,500万6,240円 |
年金額/年 | 60万円 | 60万円 |
年金額/総額 | 1,800万円 | 1,800万円 |
返戻率(99歳時点) | 147.6% | 119.9% |
損益分岐年齢 | 90歳 | 95歳 |
第一生命のトンチン保険|ながいき物語の特徴
次に、第一生命のトンチン保険「ながいき物語」は50歳から80歳までの方が契約できる保険で、「5年、10年、15年の確定年金」か「10年保証+終身年金」の4つの商品から選択することが可能になります。
ここでは「10年保証+終身年金」にて商品の特徴をお伝えしたいと思います。
ながいき物語 10年保証+終身年金の場合 | 男性 | 女性 |
加入可能年齢 | 50歳 | 50歳 |
払込満了年齢 | 70歳 | 70歳 |
年金支給年齢 | 70歳 | 70歳 |
保険料/月 | 4万8,000円 | 6万0,000円 |
保険料/総額 | 1,152万円 | 1,440万円 |
年金額/年 | 60万円5,800円 | 60万円8,500円 |
年金額/総額 | 1,817万円4000円 | 1,825万円5000円 |
返戻率(99歳時点) | 157.76% | 126.77% |
損益分岐年齢 | 89歳 | 93歳 |
第一生命「ながいき物語」の方が利率が良いが必要性は疑問
日本生命「グランエイジ」と第一生命「ながいき物語」を比較しましたが、ながいき物語の方が利率が良いと言えるでしょう。男性の場合は、89歳時点で損益分岐を超えますので以降は年金として生活を安定させてくれるでしょうが、それでも90歳近くまで長生きすることはハードルが高いと言えます。
向く人 | 向かない人 |
公的年金だけでは将来の老後資金に不足が生じる。など長生きリスクの不安を解消したい方にはおすすめ | 貯蓄額に大きな不安がない場合は、生活費の削減などにより節約した方が効果が高い。 |
トンチン保険は今後に期待|かんぽ生命・太陽生命も続々商品化
上記の通り、現在トンチン保険は手放しで喜べる商品設計とは言えないでしょう。ガンの特効薬が出来るなどこれまでの常識を覆すようなことがあれば別問題ですが、現状のままでは90歳を超えないと損をする保険としか見れないかもしれません。
ただ、かんぽ生命や太陽生命などもトンチン保険を商品化していることから今後、取り扱う保険会社が増加し魅力が増えていくことに期待したい商品とも言えます。
保険商品は複雑なのでFPに相談することも検討
トンチン保険は長生きをするほどお得になる保険としてご紹介をしましたが、このトンチン保険を初めて聞いたという方も少なくないかもしれません。
保険の種類はこのトンチン保険以外にもたくさんありますが、自分に合った保険を1つ1つ比較するのは非常に困難でしょう。このような時はFP(ファイナンシャルプランナー)に保険の相談を行うことで最適な保険を見つけることができますので一度検討しても良いかもしれません。