年金は3階建になっているとはよく聞く話ですが、実際にどのような種類や違いがあるのかは、知っているようで知らないという方も多いでしょう。自分自身がどの種類の年金を受給でき、どのような違いがあるのかをしっかりと把握していないと老後の収入に思わぬ誤算を招くことにもなりますので、今回は、公的年金である国民年金と厚生年金の違いを解説します。
目次
国民年金は全ての方が対象で厚生年金は会社員や公務員が対象

こちらの図は年金の1階、2階、3階を表したものです。
1階部分が「国民年金」で会社員、公務員、自営業など年金保険料を納めることで誰でも受給資格が得られる年金となっています。2階部分は「厚生年金」となっており、会社員と公務員の方が対象となる公的年金になります。
そして、3階部分は「企業年金」と呼ばれている部分で、こちらは企業によって支給されるのかされないのか異なる部分であります。大企業などは企業年金制度がある会社も多いのですが、最近は401kと呼ばれる企業型の確定拠出年金を導入する企業も増えています。
今回は、公的年金である国民年金と厚生年金の違いについて解説を行います。
国民年金と厚生年金の保険料の違い
国民年金と厚生年金では納める年金保険料も異なります。まずは国民年金は、毎年変わる保険料を納付することが義務付けられており、厚生年金は標準報酬月額と呼ばれる所得に連動した保険料を納める仕組みとなっています。それぞれの納めるべき保険料の違いを確認してみましょう。
標準報酬月額とは、その方がいくらの報酬を得ているのかを示すもので、給与・残業代・通勤交通費が含まれます。基本的には4月から6月まで期間の報酬によって標準報酬月額が決まります。厚生年金の保険料だけでなく健康保険料などの算出にも活用されるとっても大切な指標となっています。
国民年金の保険料は平成29年度で16,490円/月
国民年金の保険料は平成20年の段階では、14,410円ですが、直近の平成29年度では16,490円と年々増加していることが分かります。一方で04年に厚生労働省から発表された国民年金保険料はこの金額にて上限に達しましたので一旦はこれ以上の保険料増加はないものと想定されます。
年度 | 国民年金保険料 |
平成20年4月~平成21年3月 | ¥14,410 |
平成21年4月~平成22年3月 | ¥14,660 |
平成22年4月~平成23年3月 | ¥15,100 |
平成23年4月~平成24年3月 | ¥15,020 |
平成24年4月~平成25年3月 | ¥14,980 |
平成25年4月~平成26年3月 | ¥15,040 |
平成26年4月~平成27年3月 | ¥15,250 |
平成27年4月~平成28年3月 | ¥15,590 |
平成28年4月~平成29年3月 | ¥16,260 |
平成29年4月~平成30年3月 | ¥16,490 |
厚生年金の保険料は標準報酬月額から決まる
厚生年金は標準報酬月額から算出されることは先ほどお伝えしましたが、納付すべき保険料は企業と従業員で折半という形になります。厚生年金の保険料も毎年変わりますが、今回は最新の平成29年9月分の厚生年金保険料をお伝えしたいと思います。
標準報酬月額 | 納付金額 | 折半額 |
¥200,000 | ¥36,600 | ¥18,300 |
¥300,000 | ¥54,900 | ¥27,450 |
¥410,000 | ¥75,030 | ¥37,515 |
¥500,000 | ¥91,500 | ¥45,750 |
¥620,000 | ¥113,460 | ¥56,730 |
20万円程度の報酬であれば負担する保険料は国民年金と近い
上記の表のように標準報酬月額によって厚生年金は負担すべき保険料が異なります。報酬が20万円程度であれば負担する保険料も18,300円と国民年金の保険料と大きく差はありません。
一方で、10万円ずつ報酬が上がると負担すべき保険料も1万円程度上がることが分かります。標準報酬月額の最大は62万円になりますので、それ以上の場合は一律上記の金額を納付することとなります。
国民年金と厚生年金の受給額の違い
国民年金と厚生年金の保険料をお伝えしましたが、やはり気になるのはいくらの年金を受給できるのか?という点でしょう。受給金額も国民年金と厚生年金では大きく差が開くとこととなります。「平成27年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参照すると国民年金と厚生年金それぞれの平均受給額を確認できますので参照してみましょう。
年金の種類 | 平均受給額 |
国民年金 | ¥55,244 |
厚生年金 | ¥147,872 |
おおよそ3倍近くの差が開く結果となりました。厚生年金には1階部分である国民年金も加算されているので金額増えるのは当然のことですが、自営業の方は厚生年金の受給資格がないため老後に5.5万円程度の収入しか確保できず、非常に生活が苦しくなると想定できます。
年金支給額の平均については「2017年最新|年金支給額の平均は国民年金5.5万円・厚生年金14.7万円」にて詳しく解説をしておりますのでご参照ください。
年金支給日は偶数月の15日で同じ
公的年金は国民年金と厚生年金に分かれ、加入者に万が一のことがあった時のために「障害年金」や「遺族年金」も支給されます。複数の種類がある年金ですが、支給されるのは偶数月の15日で同じです。15日が土日の場合は直近の平日となります。年金支給日については「【保存版】年金支給日の日程を2017年から2020年までまとめて公開」をご参照ください。
障害年金の受給にも国民年金と厚生年金では違いがある
障害年金とは、年金加入者が重度の障害負った場合に給付される年金です。国民年金の障害年金は「障害基礎年金」と呼び、厚生年金の障害年金は「障害厚生年金」と呼びます。名称が異なるだけでなく支給される年金受給額も異なります。
詳細については「障害年金とは?受給資格・受給金額・申請方法・更新手続きを徹底解説」にて詳しく解説をしておりますのでご参照ください。
障害等級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
障害等級1級 | 【1級】 974,125円+子の加算 | 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額(224,300円) |
障害等級2級 | 【2級】 779,300円+子の加算 | 報酬比例の年金額+ 配偶者の加給年金額(224,300円) |
障害等級3級 | ー | 報酬比例の年金額 ※最低保障額:584,500円 |
※子の加算:第1子・第2子は各224,300円、第3子以降は各74,800円
障害基礎年金と障害厚生年金の受給額の違いをシミュレーション
子供がいない前提で、国民年金と厚生年金の平均受給額から受け取れる障害年金受給額をシミュレーションしたいと思います。障害厚生年金は標準報酬月額によって変動しますので30歳会社員で標準報酬月額を40万円と仮定したいと思います。また、被保険者期間が300ヶ月未満の場合でも300ヶ月(25年間)厚生年金に加入したとみなされます。
※平成15年3月までの被保険者期間はなし、平成15年4月以降の被保険者期間は8年間会社員をしたとして96か月とする
障害等級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
障害等級1級 | ¥974,125 | ¥822,150+配偶者加給年金(224,300円) |
障害等級2級 | ¥779,300 | ¥657,720+配偶者加給年金(224,300円) |
障害等級3級 | – | ¥657,720 |
上記のように厚生年金加入者は障害年金でも国民年金よりも厚生年金加入者の方が手厚い保障が受けられることが分かります。国民年金のみの自営業の方とはその差額が非常に大きくなると言えるでしょう。続いては「遺族年金」の違いについて確認してみましょう。
遺族年金も厚生年金加入者は手厚い保障が受けられる
遺族年金は、年金加入者が亡くなってしまった場合に遺族に対して支給がされる年金です。
国民年金の場合は「遺族基礎年金」、厚生年金の場合は「遺族厚生年金」の受給が可能です。「遺族基礎年金」の性質は残された「18歳未満の子」に対して支給されるもので、配偶者には支給されません。「遺族厚生年金」は「妻と子」にも支給されます。
世帯構成 | 遺族基礎年金の支給額 | 遺族厚生年金の支給額 |
妻のみ | ¥0 | 本来受け取れる厚生年金の3/4程度 |
妻+子1人 | ¥1,003,600 | |
妻+子2人 | ¥1,227,900 | |
妻+子3人 | ¥1,302,700 |
遺族厚生年金を受給できる方は遺族基礎年金も受給できますので、支給される金額は大幅に増えるでしょう。加えて、配偶者の妻が40歳から65歳の場合は、中高齢寡婦加算584,500円/年も加算されます。詳しくは、「遺族年金の仕組み|受給金額はいつまでいくら貰えるのか?」をご確認頂ければと思いますが、こちらも国民年金よりも厚生年金の方が手厚い保障が受けられます。
会社員・公務員は手厚い保障が公的に受け取れる
上記のように厚生年金加入者である会社員の方や公務員の方は非常に手厚い保障が受け取れることが分かります。
保険に加入する方も多いと思いますが、このような手厚い保障を加味した上で保険を選べるようにすると良いでしょう。毎月給与の10%近くを年金保険料として納めていますのでこのあたりで、保険の過剰加入などにより無駄なお金を使ってしまうわないように知識を身につけることで正しい判断ができるようになります。
自営業の方は国民年金以外の収入源を確保することが重要
自営業の方で、潤沢に貯蓄を作ることができた場合はさほど心配はないかもしれませんが、老後資金が枯渇する危険がある場合は国民年金だけでは足りないと言えるでしょう。
そこでiDeCoや投資信託などの資産運用は非常に重要と言えます。
老後に向けた資産運用については「退職金の運用で失敗しないおすすめプラン5種を徹底比較」や「老後の貯蓄はいくら必要?貯金額に応じた老後資金の貯め方を解説」をご確認いただくことをオススメします。
国民年金と厚生年金の違いまとめ
国民年金と厚生年金の違いについて解説を行いました。国民年金だけでは老後の生活が非常に厳しくなりますので事前に老後資金をしっかり準備しておく必要があるでしょう。また、障害年金や遺族年金など年金加入者にはいざという時の保障もありますので制度をよく理解し活用漏れがないようにしましょう。